95夏・北海道 初のキャンプツーリング その9


美馬牛からの風景

8/5

 朝6時頃鳥のさえずり、そしておそらくはキツツキか何かの木をたたく音で目が覚める。外は曇り、霧が出ている。歯を磨き、さっそく丘を見に行く。霧の丘というのもすばらしい。しかし前回は「〜の木」などという看板などなかったのに今回は出ている。やはり時の流れなのだろう。

 本来、この丘は今もそうなのだが畑で、いつの間にやら観光客が増え、観光地となってしまった。それに伴う弊害も農家の人から見たら増えているだろう。畑を踏み荒らされたり、作物を取られたりするなど。いっそ、丘への立ち入りを全面禁止にすれば良いじゃないか、とも思った。しかしそうすれば美瑛町に人が来なくなり、町はさびれてしまうだろう。このジレンマを私も感じてしまう。小笠原や石垣島の空港の問題も少し違うが同じような意味が込められている。小笠原については、私のような旅人から言わせてもらうと、絶対に空港などできて欲しくない。できてしまったら本当の観光地となるだけである。船で28時間も揺られながら行くべき所、東京から世界で一番遠い所を実感する所、足跡以外に何も残すべきではない所、観光客など来るべきではない所、と思う。しかし現実問題地元の人に言わせたら当然飛行場は必要だろう。空港ができても、それが観光客だけの為で、島を壊してゆく者の為だけにはあって欲しくない。しかし行く末は目に見えている。悔しいけれどどうすることもできない。黙って見て行くしかないだろう。私にできることは、私がいつまでも旅人であり続け、決して観光客になど成り下がらない事だろう。旅行などから人生について学べる事などない。旅行は、金を出したので楽しみだけを享受し、苦しみなど決して享受すべきではない、という考えが前提にあるのであり、それに対し、旅は楽しいことよりも苦しい事を受ける方が多いのが前提にある。それが旅行と旅の違いだ。だから私は自転車による旅が好きだ。それからいろいろと教えられるものがある。ただ単に観光だけだとゲームセンターで金を払ってゲームするのと何ら代わりがない。自転車で四端制覇、日本縦断を完成させて色々な事がわかった。目標が大きければ大きいほどそれに対する苦しみを乗り越えて行って達成したときの喜びは大きい。だから私は自転車での日本一周、全有人島制覇に人生をかけるのである。自分は純粋に自分の為に生きてゆきたい。それが私の希望だ。以上のようなことを朝もやの美瑛で思った。

 町のセブンイレブンで食料を買い、テントに戻る。朝9時前から観光バスが入ってきている。今日は連泊をやめてやっぱり走ろう。風景を見るよりも走る方がどうやら私は好きなようだ。テントを乾かし、10:55出発。丘を走っている自転車はレンタルMTBが多い。あまりダートもないのにタイヤをぶいぶい言わせながらしんどいだろう。しかし彼らの立場に立って考えてみると、この美瑛の風景にMTBが似合うのだろう。

 丘の写真を取っていると、徒歩の人がやってきた。しばらく彼の歩きを見ている。本当にペースは遅い、しかし一歩一歩確実に大地を踏みしめて歩く姿は美しささえ感じられる。私のやっている事に自信喪失してしまいそうになる。彼に話しかけると、ワンゲルの人で、北海道の次は南アルプスを登るそうだ。やはり、自転車は人力の旅の中で一番楽だ。確かに上りは苦しいが下りは全く体力を使わないし、平地でも惰性で漕いでおけばそのうちに目的地に着くものだ。なにかしら徒歩の人に対して済まない気持ちになる。

 町へ出ようとしたら、神戸ナンバーのバイクの人がいたので話しかける。尼崎の人で、お互い地震の話になる。

 ホクレンで地図を買い、旗をもらう。オレンジ色の旗だ。次に役場へ行き、札を返す。コンビニで昼食を買い、美瑛駅の外で食べる。3年前と同じく今回も拓真館へ行くことにする。結構なアップダウンをくり返す。拓真館までの道沿いは美瑛のような丘陵地域だが、人がいない分だけ美瑛よりもいいかもしれない。

 アップダウンに苦しみながら何とか拓真館に到着。自転車を立てかけ、ふと見るとかしわ園で一緒だったMTBが休んでいたのでそばにいく。もう一人自転車がいた。そのうちランドナーの人も来て4人になった。2人が途中で抜いていったレンタサイクルの人も来て写真撮影、住所交換する。やはり我々自転車4人とレンタサイクルの人たちは何かしら違うものを感じる。みんなは美瑛の方に行く。

 皆を見送り、一人残された私はとりあえず拓真館の人混みの中、友人に送る絵はがきを購入。人が本当に多すぎるので写真は見ずに外で出る。実家へ電話したら「富良野の絵はがきを送ってくれ」と頼まれたので拓真館の絵はがきを送ってあげよう。その後、美馬牛方面へ向かう。美馬牛小学校が見えてきた。ちょっとわき道へ入り、ファームペンション「WithYou」に立ち寄る。ここから美馬牛の丘が一望できる。ここからの丘の風景は本当にすばらしい物がある。やはり高いところから見た方が風景はよくなると思う。

 再び走り、美馬牛駅に15:15着。トイレ休憩する。国道237号線へ向かい、上りを必死に上る。国道237号線へ入り、そこから深山峠まで52×15で上ってしまった。ルート、ギア比とも3年前と同じだ。しかし、一度旅したところを再び走ってみると、余裕が持てる。峠に15:27着。前回に来たときはただ単に国道脇の看板の写真を撮っただけだったが、今回は展望台とかに行ってみる。前回と同じ看板で写真を撮ってもらい、道脇でラベンダーソフトを買って手に持って走っていると、ソフトが落ちそうになり、ソフトを手で受けたがコーンを落としてしまう。仕方がないのでソフトを食べ、コーンを拾いごみ箱に捨ててトイレで手を洗う。展望台からの風景も美瑛の丘のようですばらしい。結構にぎわっている。峠を15:39出発。ここからの下りとは言えない下りを下り、ライダーハウス深山でシックホックを探すがない。しかし風景は良い。ここからノンストップで富良野駅まで走る。道はずっとストレートだ。

 富良野駅に着き、地図にスタンプを押す。ツーリングトレインの所はすっかり様変わりしていた。3年前は殺風景だったが、今回噴水なんかできている。駅で物書きをしようと思い、自転車を立てかけたら女の人に話しかけられしばらく話の相手をする。そのうちどこかへ行ってしまったので駅前のセブンイレブンに行き買い物をする。店内で自転車の人がいたので話しかけると、彼も今日鳥沼キャンプ場でキャンプをするとのことで一緒に鳥沼へ行く。キャンプ場までは結構距離はある。やはりレーサーとMTBではペースが違うが彼のペースにあわせて走る。最後は少し上りで、それを越えたらキャンプ場だ。

 テントを張り、MTBはキャンピングガスの調子が悪いのでカートリッジを換えに行った。私のストーブも調子が悪く、どうやら燃料が少なくなったようだ。町まで戻り、ホクレンでレギュラー満タン0.6L。ついでに道南の地図も買う。そして戻って料理の続きをする。MTBが一人で食べていた自転車の女の人を連れてくる。3人で色々話しながら食べる。そのうち、自転車が2人やってきて色々話す。私の他はみんな学生さんだ。ああ、学生さんがうらやましい。私ももっとロングツーリングをしたい。そのうち、近くのテントのランドナーからトマトの差し入れをもらい、色々話す。ランドナーは社会人で、20日くらい北海道を走るそうだ。ああ、うらやましい。そういえば今日は美深のライダー宴会だ。10:20頃寝る。

 本日の走行距離 73.4km



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