■この物語は、すべてフィクションです。

PART 1 アメリカ・CIA

「ナリタからどこへ行ったかだって?それを調べるのが君らの仕事じゃないのかね?それじゃぁ、もう切らせてもらうよ」
 極東担当主任が荒々しく受話器を置くと、彼の部下が尋ねた。
「やはり『G』が入国していたことを、あちらは知らなかったようですね」
「あぁ。それどころか『どうしてペルーの時も、今回の様に教えてくれなかったのですか?』ときやがった。それにしても…」
「それにしても?」
「今回の『G』の仕事で、こちらがとばっちりを受けなければいいのだが…」


意味なし特別編4


PART 2 伝説の樹の下で

 日本のとある地方都市の私立高校。
 ある秋の日の放課後、中庭を一人の生徒が歩いていた。
 他の生徒が着ている制服とは明らかに異なる制服、腰まで伸びた長髪、そしてこの学校の理事長の孫であるその生徒を知らない者は、この学校にはいなかった。
 やがてその生徒は、校庭の外れにある1本の古木の下にたどり着いた。
 卒業式の日であれば、この樹にまつわる伝説を信じた女子生徒が、あこがれの男子生徒に告白するという光景も見られるのであろうが、この日のその生徒の表情は、呼び出しの手紙を見て期待に胸を膨らませてこの樹の下にやってくる男子生徒のものとは違い、緊張感がにじんでいた。
 一度深いため息をついてから、その生徒は腕時計を見た。
「約束の時間だ。本当に彼は来るのだろうか?」
 つぶやき終わるのとほぼ同時に、樹を挟んだ反対側から、一人の男が現われた。
「もうここに来ている」
 男は、身長は180cm、かなり引き締まった体格をしていたが、何よりも印象的なのは、カミソリの様に鋭いその目であった。
「よく来てくださいました。ミスターゴル…、いえ、ミスター東郷」
 そう言いながらその生徒は自分の右手を差し出そうとし、一瞬迷ってからすぐに引っ込めた。
「失礼しました。あなたは握手を好まないのでしたね…」
 東郷と呼ばれた男が、口を開いた。
「用件を聞こうか」
 その生徒は制服のポケットから1枚の写真を取り出し、男に見せながら言った。
「彼を狙撃してほしいのです。ただし、急所を外して。報酬は50万ドル用意させてもらいました」
「理由は?」
「彼が、僕の秘密を知ってしまったからです。そこで、私設医師団の元へ連れていき、彼の記憶を消したい。そうしなければ、彼はその秘密をある友人に話すでしょう」
 その生徒は、少し暗い表情になって言葉を続けた。
「でも、この秘密は卒業式の日に、僕の口から直接その友人に打ち明けたいんです…」
「命を奪う必要はないのだな」
 『命を奪う』という言葉に驚いたのか、その生徒は、興奮気味にしゃべり出した。
「彼は僕のクラスメイトです。殺すわけにはいきません。それに、厳重にガードされているはずの僕の秘密を探り出した彼の能力も高く買っています。いずれは彼の情報収集能力をうちの財閥のために生かしてもらうつもりでいるのです」
「あんたの一族には、私設軍隊があるんじゃないのか?現にあんたが誘拐されたときに活躍している。彼等の中にも狙撃の技術が高い者がいるはずだ」
「彼が広い野原にでも一人でいるのならそれでいいのでしょうが、学校の中ではそうはいきません。万が一失敗した場合、流れ弾が他の生徒に当たってしまうかもしれない。超一流の腕を持つあなたでなければ、安心して任せられません」
「わかった。報酬はスイス銀行の口座に振り込んでくれ」
 校門に向かって歩き始めた男を、その生徒が呼び止めた。
「ま、待ってください!!」
 男は足を止め振り返った。
「…まだ、何かあるのか?」
「あなたに依頼する際には、一切の隠しごとがあってはならないはずです。僕はまだ、あなたに僕の秘密の内容を話していないのに引き受けてくれるのですか?」
「うまく隠していると思っているのだろうが、あんたの声や身のこなしで、大体の見当は付く。あんたがどうしても話したいというのなら、聞かないこともないが…」
 そう言い残すと、男は再び歩き始め、校門から出ていった。
 その姿を見つめながら、その生徒はつぶやいた。
「ありがとう。ミスター東郷」

PART 3 同時刻・同校科学部部室

「おかしいわね…」
(データベースに外部から侵入された形跡があるわ。「記憶操作薬製造法」?一体誰がこんなものに用があるのかしら…)
「部長、どうしたんですか?」
「いえ、何でもないわ。それより、昨日の実験の続きをするわよ」
「え〜、また変な薬飲まされるんですかぁ?」(T_T)

PART 4 その翌日

ズギューン!!

『どうした、好雄。しっかりしろ!!』


END
1997年5月作品
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