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ふわり ふわふわ




地に足のついた歩き方 故郷の錦で飾る
全国各地で作られていたそして今なお作り続けられている
身近な和服、和装小物を紹介していきます。


虎竹男右近下駄
高知県 須崎市 安和
須崎市役所公式ホームページ

学生の頃、ワンダーフォーゲル部にいた私は
合宿で何度か夏の石鎚山に上りました。

瓶が森で泊り、夜明け前におきて
薄暗い中、ご飯の準備をした時のことを思い出します。

夜が白み始めると、森が目覚めるのを感じました。
「森が目覚める」というと、なんだか幻想的ですが

朝露に濡れた羽が乾いた羽虫が
草の葉の裏から飛び立ち
それを追って鳥や獣たちが動き始めた。
そんな営みが周囲の森で
夜明けとともに一斉に行われた気配を
感じた気がしたのです。

石鎚山より南下した
高知県須崎市安和の山には
虎斑竹という虎皮状の模様が入った竹が
自生しているそうです。

竹虎 株式会社 山岸竹材店さん
この安和にしか生育しない不思議な虎斑竹を100年以上前から
生活の中の造形に活かされています。
竹虎 株式会社 山岸竹材店さん虎斑竹の不思議を参照しました


竹虎さんの造形品の中で
私が一目で気に入ったのが
虎竹男右近下駄です。

四角形に並べられた虎竹に
瓶ヶ森で感じた生物達の力強さに似た
「何か」を感じました。

エッジの凸凹と虎竹の表面の艶は
素足で履いた時はもちろんですが
足袋ごしにも充分伝わってきます。

この虎竹男右近下駄
私は七夕に履いて友人たちと奈良に訪れました。
力強い竹虎のご利益(?)か
前日までのぐずついた天気もなんのその
晴天の奈良を楽しみました。


奈良では下御門商店街上富さんをおとずれました。

上富のご主人は
ご高齢ですが、たいへん研究熱心で
以前、おうかがいした時に
関東と関西の鼻緒のすげ方の違い
などを教えていただきました

そこで上富のご主人さんが
この竹虎男下駄をご覧になって
たいへん感心されていました。

竹表に横に切れ目を入れるのは
「胴歯」と言って東北の技法だと
教えていただきました。
また九州の方では
斜めに交差するようにして
切れ目を入れるそうです。

虎竹さんの虎竹男右近下駄は
四角く切った竹を並べていますので
横に切る「胴歯」とは少し違うかもしれません(?)が
下駄がご縁で、たいへん興味深い話を
うかがうことができました。

「履いているうちに良い艶がでるよ、大切に履きなさい」
上富さんで買ったのでは無いのに
そんな言葉をかけてくれるご主人さん

(本当に下駄が好きなんだなぁ)と
カラン・コロン・ホロリ
下駄が鳴いてます。


須崎市役所公式ホームページ
武虎 株式会社 山岸竹材店さん
奈良市役所ホームページ
上富さん



ふわり ふわふわ

安物がいの銭失い
無くした銭で学んだこと

地に足のついた歩き方
故郷の錦で飾る

深き夢見し 酔いどれて
ふわり ふわふわと
風をまとい 土を食らう

「漂うだけ ただ酔うだけ」と
 ただ意地を張っているだけ


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