第3幕 | |
第1場 | |
|---|---|
(突然鳩が逃げるように飛び退き、蛇が顔を出す) |
|
ハンス |
どうしたの、リーデルト |
Oph |
おやおや、驚かせてしまったな |
(星座絵Oph ON) |
|
ハンス |
あ、あなたは? |
Oph |
私は、アスクレピオスという者だ。こうして、夜空を巡っている |
ハンス |
え、分かるんですか? |
Oph |
これでも、地上にいた頃は医者だったのでね |
ハンス |
お医者様なら、どうか、お願いがあるんです |
Oph |
君の世界の医者に頼むべきではないかね? |
ハンス |
ええ。でも、先生達も手を尽くして下さるのですけど… |
Oph |
…確かに、私は多くの者を癒した。死者をも甦らせもした |
ハンス |
それでは、僕はもう… |
Oph |
私には分からない。それが運命ならば、仕方ないことかも知れぬ |
(星座絵Sco ON) |
|
あの蠍は、ある若者の命を奪うため、遣わされたものだ |
|
声 |
ハンス、さあ、先へ行きましょう |
Oph |
気をつけておいで… |
(ハンス、リーデルト、さらに奥へ) |
|
第2場 |
|
(竪琴の調べが流れてくる) |
|
ハンス |
なんて綺麗な音色だろう。誰か、いるのかな |
Lyr |
おや、君は? |
(星座絵 Lyr ON) |
|
ハンス |
あ、僕は、ハンスと言います |
Lyr |
そうか。…まだこんなに幼いのに |
ハンス |
あの、あなたは、何をしているのですか? |
Lyr |
私か。私は、亡き妻のために、歌っているんだよ |
ハンス |
… |
Lyr |
(微笑) 優しい子だね。そんなに悲しそうな顔をするものじゃない |
ハンス |
冥府まで? |
Lyr |
うん。しかし、冥府の扉は、再び開かれることはない |
ハンス |
僕も、もうすぐその扉をくぐって、もう帰ることはないのかな |
Lyr |
昨日生きていたものが、明日は黄泉の国にいるとしても、 |
ハンス |
あれは…。天の川? |
《天の川の写真》 |
|
Lyr |
そう |
ハンス |
ありがとう |
Lyr |
そうか |
ハンス |
さようなら |
(鳩の鳴き声と羽ばたき。奥へ) |
|
第3場 |
|
Vul |
へえ、人間が来てら。珍しいなあ |
(星座絵 Vul ON) |
|
ハンス |
き、キツネ? こぎつねだ… |
Vul |
こぎつねで悪いか。これでもれっきとした星座なんだぜ |
ハンス |
あ、ご、ごめんなさい |
Vul |
人間のあんたが…おい、名前は? |
ハンス |
…ハンス |
Vul |
で、何でこんなところに来てるんだ、ハンス? |
ハンス |
それは、気がついたら空で… |
Vul |
なるほどね |
ハンス |
じゃあ、このまま病気が治らないのが、僕の運命なのかな? |
Vul |
嫌かい? ああ、そりゃそうか |
ハンス |
そうだね |
Vul |
ほら、少し顔色がよくなったな。その調子だよ |
《M27 写真》 |
|
俺の宝物なんだぜ。綺麗だろう |
|
(Vul退場) |
|
第4場 |
|
ハンス |
あ、あのぉ… |
(星座絵 Aql ON) |
|
Aql |
お前が、ハンスか |
ハンス |
え、僕の名を…? |
Aql |
神の神たる我ゼウスに分からぬことはない |
ハンス |
ええ、あの、あなたなら、ご存知でしょう |
Aql |
地上のことは地上で、人間のことは人間の間で行うがよい |
ハンス |
でも… |
Aql |
地上に戻れ。生きるとはそういうことだ。分かったな |
(Aql飛び去る) |
|
ハンス |
ああ、行ってしまわれた |
第5場 |
|
声 |
ハンス、さあ、奥へ |
ハンス |
でも、こんなに遅くなってしまった |
声 |
ハンス… |
ハンス |
あ、僕の部屋だ。父さん、母さん、それに先生もいる |
(ハンス、一瞬言葉を飲み込む) |
|
声 |
あなたはもう病気ではありません |
ハンス |
本当。体がこんなに軽いのはどれくらいぶりだろう |
声 |
さあ、もう少し旅を続けましょう。夜は…永いのですから |
ハンス |
(明るさを取り戻して) うん。行こう、リーデルト |