第4幕

第1場

(白鳥の鳴き声と羽ばたき)

ハンス

ああ、綺麗な白鳥だ

(星座絵Cyg ON)

Cyg

あなたが夜空を旅している少年ですね
さあ、私の背にお乗りなさい。この河を渡してあげましょう

(白鳥飛び立つ)

ご覧なさい。あそこに、勇者ヘルクレスの姿が見えるでしょう

(星座絵Her ON)

数々の冒険に挑みそれを克服した彼も、最期は哀れでした
でも今はこうして、ここに安らっているのです
この世界は、静かで平和な世界です
ここには困難や悲惨はありません
全てが穏やかな光の中に憩うのです
あのヘルクレスの腰を見てご覧なさい

《M13 写真》

彼の地上での苦悩が浄化されて、結晶になったものです
生きている間に苦しんだ人はきっと、この星空で平安を得るでしょう
一際美しく輝くでしょう

ハンス

ああ
こんなに安らかで清らかな世界が僕たちの上にいつも広がっていたなんて
僕たちの地上は、なんて息苦しい世界なんだろう




第2場

Cyg

さあ、あそこの竜のところまで送ってあげましょう

(星座絵 Dra ON)

ハンス

竜だなんて…

Cyg

恐れることはありません。あの竜は、天の頂を守っているのです

ハンス

天の頂?

Cyg

そう。全ての星が、その周りを巡る、星空の中心
天球の調和が定められたところ
私達は、一日とてその秩序を違えることなく、
その頂を巡り軌跡を描き続けるのです
天の軌道が保たれるように

《北極星を中心とした北天の日周運動の写真》

黄金の竜は、その天の支柱を見張る番人なのです
そして、そこには、扉があるのです
あなたの世界と私たちの星空とを隔てる天の扉が

私が送れるのは、ここまでです
ここから先は、あなた自身の意志で進まなければいけません
さあ、お行きなさい

(Cyg退場)

ハンス

ああ、竜がこっちを、僕を見ている

Dra

(肉声で語るのではなく、エフェクタで残響をかけ、念話風に)
少年よ
今ならまだ、振り返ることも、立ち戻ることもできる
この先では遅すぎる。それがかなう内に選ぶのだ
お前の全ては、これからではないのか?
この扉をくぐるのは、まだ早いのではないか?
それとも、この静止した世界の戸を叩くか
この扉の向こうの目も眩む光をその身に受けるか

決めよ。進むか、朝日の下に帰すか
お前の道を

ハンス

…僕は…!!
(決心したように、今にも振り返ろうとするように)

(ハンスが言葉を続けるのを遮るように)
さあ、新しい星達が待っていますよ
行きましょう
夜は、ずっと、続くのです




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