第3幕

第1場

Eliot

人間は、大地を覆うように溢れ出した
未開の土地を切り開き、世界を征服しようとし、
大地からの簒奪を止めずに増え続けた
互いに富を奪い合い、憎みあって、「戦争」を繰り返した
そして、自分の力に溺れた人類は、終に神を追放した

(日周運動 冬の星空 青投薄くON 光害を表現)

これはふたご座。兄は戦に斃れ、弟は嘆きに暮れた (星座絵 Gem ON)
自分の力を驕り、罰を受けて死んだ狩人オリオン (星座絵 Ori ON)
主人の狩人を噛み殺した猟犬 (星座絵 CMa, CMi ON)
地上には、欺瞞と裏切り、憎しみと暴力が渦巻き、世界は汚れていった
…これが、「銅の時代」

Beatrice

星が、ずいぶんと少なくなって…

Eliot

これが、父祖が見た星空なのです
300年前、人類は進んだ技術文明を謳歌し、繁栄していました
人々は、山を削り、海を埋め立て、その生息圏を拡大しました
都市は物に溢れ、人々は豊かさに酔っていました

Rolfe

しかし、その時、自然はもう修復できないところまで壊れていた
人類が壊したんだ

Eliot

増えすぎた人口は、それを養うため大地を極限まで痩せ細らせた
血を流すことをやめない人類は、恐るべき兵器で大地を汚した
森は切り払われ、大気は澱んだ
恩恵の海は、陸から流れ込む汚染物質の終着点となった
野は砂漠となり、川は干上がり、街は海に沈む
人ははじめて、自らの行為に恐怖し絶望したのです

人類が汚し、人工の光が覆った空には、
星は数える程しか、残っていませんでした

Rolfe

この惑星にとって、それこそがまさに「銅の時代」だと、先祖は思ったんだ
神話は、「銅の時代」の後に続く「鉄の時代」を警告して終わる
最後の神に見捨てられた人間は、際限ない滅びの道を歩む

Credo

…今が、そうだと言うのか…?

Ferrie

Credo! 控えなさい

Credo

今が、絶望の時代だというのか!
確かにお前達の言う通り、この星は汚れた
だが、ここに生きる人類は、それを克服するために戦ったのだ
地下の噴気で汚れた大気を潤す浄化装置、
枯渇した水を再生させ命をつなぐ循環装置、
飢えに苦しむ人々を救うためのフードファクトリー、
俺達は、生きるために持てる技術の全てをつぎ込んでこの街を築いた
Terraは、現に栄えているはずだ
都市の光は、その証だ
その俺達の努力を、過ちだというのか
全てを捨てて、過去の何もない時代に帰れと言うのか
貧しさに苦しみ暗闇に怯える時代に
貴様らに、何が分かる!

Eliot

違う! …そうじゃないんだ
あの時、人類は思ったんだ
次の時代を、「鉄の時代」にしてはならない、と




第2場

Eliot

300年前、増えすぎた人類の無策で、この惑星が保たない時が来ていた
それまで、互いに袂を別って争いを繰り返していた人類にとって、
それはたった一つの共通の事実だった
このままでは、人類は滅ぶしかない
自分の子供達に、明日を与えてやることもできない
せめて、僅かに残った自然だけでも、子孫のために残したい
星空を見せてやりたい
そのためには、この惑星が自らを癒すまで、休ませなければならない
これ以上の負担をかけないために… 人類の半数は、星を離れた
それが、移民の歴史だ

Ferrie

その様な歴史が…

Eliot

私達移民は、いつの日か、母なる星に帰ったとき、
大地が蘇っていることを夢見て、
その希望の日だけを待って生きてきた
荒れた惑星を開墾しながら、Terraに残った人々がこの星を守って、
育んでくれることを願って

この星の人々は、再び栄えているかもしれない
でも、あの時に一つになった人の願いは、忘れられてしまった
300年前、次に来る世代のために、人類は一度武器を捨てた
憎しみ合うことの愚かしさを知った
共に生きることを選び、世界政府が作られた
再建のために、差別のない平等を誓った
そして、傷ついた自然を取り戻そうとした
その象徴が、星空だった
だが…

Credo

今のTerraに、自然はない。人間の希望もない
…ということか

Eliot

今あるものを捨てればそれでいいわけじゃない
過去に帰ることが正しいわけじゃない
ただ、忘れてきた願い、失ったものを、取り戻したいんだ
人類の繁栄と自然の調和が共存できる、
新しい世界を作りたかったんだ
…それも、進歩なのだと思う

(青投明るめに 星はますます淡く)

この星を見てほしい (αVir)
もう、かき消えそうなほど微かに光るこの星は、
最後まで、地上に残った女神アストレイアの星だ
この星が、まだ夜空に見えるなら、「鉄の時代」は来ていない

この星が、まだ見えるなら…




第3場

(駆け込む足音、乱暴に扉が開き、急に明るく)

Jeano

(息を切らせながら) 長老! Credo!
動いたぞ! 始まった!

Credo

どうした、Jeano

Jeano

第3地区の連中が、Cityで請願行進をしてたんだ
だが、国軍の奴等、発砲しやがった!

Ferrie

何と…!

Jeano

それが発端で、3区の連中、武装を使ったんだ
他の地区の連中もCityに向かった
あちこちで蜂起してる

Credo

…淵は溢れた。流れ出した奔流はもう止められん。止めさせはしない!
支部に知らせろ! 地区連と通信を確保!

Jeano

おう!

Credo

行くぞ!! 市民軍はこれより虐げられた全ての人民を解放する!

(銃を取って駆け出していく)




Rolfe

どうするんだ、Eliot ?

Eliot

…見届けるんだ …この星の行く末を







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