郊外のディスカウントショップで、ドライバやレンチの横に置いてあるアレだ、細かく区切ったケースの中にネジ等の小さなパーツを入れて整理するアノ箱だ。
関西支部長「hideさん」と呼ばれる男の鞄を背負いつつ
「背徳や罪悪、人が背負うものは、いつも罪深いものばかりね」と、いつも呟いていたアイツの顔を思い出す、、、
俺は、あの時、答えた「ありきたりの科白(セリフ)」を、今更ながら後悔していた、、、
たどりついた居酒屋は、オフィスビルが並ぶ地下街にある、ごく普通の居酒屋だ
「ACアダプタが届かなければ、これを使えばいい」
「TSさん」と呼ばれる、その男は、おもむろに延長コードを取り出すと、三つ又に別れたタップを指差し、こう言った
「これならACアダプタが、互いに干渉せずに3つさせる」
その答えは、すぐにわかった、2台、3台、、、参加者の持っていた鞄の中から次々と出てくるPowerBook
テーブルの上は、酒瓶が並ぶ前に、林檎のマークをつけたマシンが並んでいった。
俺は鞄の中に仕込んだHP200LXに手をかけたまま、おもむろにピピコンを取り出した。
ピピコンを光らせ敵意の無い事を示しつつ、俺は冷静にHP200LXの残弾数(残バッテリ)を頭の中で数えていた
互いに牽制しあう緊張した空気の中、「Heroさん」と名乗る男が、鞄の中からおもむろに幾つかの品物を取り出した。
その言葉に、皆の目が妖しく光る、当然、俺も例外では無い。
ピピコンのトラックボールを、そっと撫でつつ、俺は鞄の中のHP200LXから指を放した。
俺は、荷物の中から19mmのトラックボールを受け取ると、たわむれる猫のようにしばし夢中になった。
思えば、あの時の一瞬の気のゆるみが、俺の犯した最大のミスであろう。
ふと気づくと傍らの「TSさん」のPowerBook165Cは、弁当箱のように開けられている。
色とりどりのボード類が「弁当箱」の中から、アルミホイルに仕切られていたオカズのように、取り分けられていく
取り付かれたように、その手際に見とれている、私の目の前には、さらに信じられないような光景が、広がっていた。
まるで「紳士の国」のような、さえないジョークを呟いたのには訳がある。
「ヤハリ、あの時背負ったのは、犠牲者では無く、背徳や罪悪だったのだ」
俺は心の中で、アイツにそう呟くと、もう一度、哀れな魂のために十字を切った。
かって神の子は、晩餐の酒を、我が血と思い、飲み干せと言ったそうだが
今の俺ならためらいなく、その血を飲み干せるだろう、、、
俺の手の中のピピコンの光が暗くなっていたのは、気のせいだろうか?それとも、、、