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やっと 9/30/02

 ああやっとへんな仕事が終わった。一時はどうなることかと思ったがどうなったのかわからないまま終わった。朝コンビニに行って原稿を送り、ビール飲んでだらだらしてから昼前に寝たら玄関でシガニー・ウィーバーとシャワーを浴びながらクールファイブといっしょに歌を歌い、公民館で近所の年寄り相手の銃撃戦に巻き込まれ警察に電話したら出てきた警官が飯野文彦さんで話がまったく通じずとても困るという夢を見た。銃で撃ってんのー? オレの銃もウッテー、××××させてー、いやあの飯野さん今はあの大変なんでその、他の人いないんですかこっちは人が死んで、他の人ってオレサー、まだ3Pやったことないんだよねー。
 夢の中でも飯野さんは飯野さんなのだった。

秋のサンマリオ 9/25/02

 イタリアの行事かと思ってテレビをよく見たら「秋刀魚漁」だった。

ダンクシュート 9/21/02

 仕事場の近くで小学生くらいの子供がサッカーボールを壁に向かって蹴りながら、そのつど何度も「ダンクシュート!」と叫んでいるのが気になった。それは無理やろと心で突っ込みつつ、しかしもしかするとそういうことの可能なスポーツがインドとかパキスタンとかにはあるかもなあと思ってしばらく窓から眺めていたのだがこの少年、まるで人気のない場所でひとり遊んでいるのにときおり両手を合わせて人差し指を虚空に突きだし「カンチョーッ」と裏返った甲高い声で叫ぶのである。そしてまた「ダンクシュートッ」をくりかえす。
 どんな大人になるのか楽しみだ。

マウンテンバイクを修理する 9/17/02

 修理といっても切れていたリアブレーキのワイヤを交換するだけであっという間のことなのだが、このワイヤがなかったのである。知っている人は知っているだろうが前方後円墳みたいなやつである。もしかすると東急ハンズなどでは今でも普通に売っているのかもしれないけどたぶんそのへんの自転車屋では間に合わないだろうし、しかしトライアスロンをやっていた頃から世話になっている行きつけの「魔法のようになんでも出してきてくれる店」は仕事場から遠いので仕事が死にそうにせっぱ詰まっている今はなかなか行けないし、普通の太鼓のやつ(実際ワイヤを買うときに「普通の太鼓のやつ」などと言うけど、きっとちゃんとした名前があるのだろうと思う)でごまかそうかなと思っていたところ通りすがりに目があった近所の自転車屋のおっちゃんに挨拶ついでに訊ねてみたらこれがまあめちゃくちゃ親切なおっちゃんで、あああれなあ昔どっかにあったなあなどと言いつつ奥へ潜り込んで五分ほどいろんなものをひっくりかえし、あったあったと出してきてくれたのだった。言ってみるものだ。
 おかげでマウンテンバイクが使えるようになった。
 このところ上半身の筋力もつくしちょうどいいかとずーっとBMXばっかりだったので、久しぶりにマウンテンバイクに乗るとパーツの精度は高いし車体は軽いし踏めば踏むだけスピードが出るしめちゃめちゃ楽しい。アホほど踏んでおばちゃんの原付を抜かし幅寄せしてくる頭悪そうな車の前を横切ってクラクションをバーバー鳴らされ道路の右側を無灯火で走ってくるくせに態度の偉そうなアホの自転車には気づかないふりをして全速力でつっこみひっくり返し、楽しくて仕方がない。しかしこの、夜無灯火で右側を走るというとんでもない馬鹿でも、ぶつかって怪我をさせたりするとちゃんと走っているこっちにも多少の責任が発生するのだそうだ。あんな非常識な馬鹿は犬以下うんこ以下の扱いで充分だとばかり思っていた。理由はわからないが一応あんなのでも一種の人として考えないといけないらしい。放し飼いの犬のうんこを踏んだらその飼い主に餌を投げ与えなければならない、みたいなへんな状況である。というわけなので確実に敵をひっくり返すやり方を細かく解説しようと思ったのだがやめておく。どうしてもやりたいというのであれば独自の方法で行い、こかしてどついたら顔を見られる前にさっさと逃げるように。

おっさんたちの自転車 9/12/02

 先日いつも六甲全山縦走に誘ってくれる先輩がクロスバイクとかいってマウンテンバイクとランドナーのあいのこみたいな自転車を買いどうじゃと見せにきたと思ったら、今度は中学時代の友人が、ちょっと真剣に自転車に乗ってみようと思うのでどういうのを買えばいいのか相談に乗ってくれと電話してきた。もしかして四十前後のおっさんに自転車がブームだったりするのだろうかと思っているところへ今度はまた別のおっさんが、自転車通勤しようと思うのだけど「通が見ても感心するようなちゃんとした自転車」がほしいので選んでくれと言うのだった。流行っているようだ。
 みんなぼくが自転車ばっかり乗っているので最新のスポーツバイク事情に詳しいと考えているみたいなのだが実はずいぶん長いこと自転車の雑誌も読んでないし自転車屋さんにも行っていないのである。なんでかというと新しい自転車の情報を得たとたん絶対新しい自転車が欲しくなるからである。なのに友人は、いっしょに自転車屋さんについていってくれという。先輩の、最新パーツを満載した自転車を見て相当気持ちが揺らいでいる今、自転車屋なんかに行けば絶対欲しくなるに決まっているのだ。しかし待て今仕事場には自転車が五台もある。これ以上増やしてよいものか。今一番欲しいのはマウンテンバイクだからマウンテンバイクにしようフルサス欲しいなとちょっと思ったがいいやしかし十五年前に買ったマウンテンバイクは元々BMXのメーカーのものでびっくりするほど丈夫で、今はブレーキが壊れて乗れないけど直せば充分乗れる。どうせレースにも出ないしダウンヒルもしない。新たに買う必要はない。買ってはいかん。しかしVブレーキがあたりまえの時代にぼくのはカンチブレーキしかもリアはカンチ式のUブレーキという珍品で、グリップシフトですらないサムシフトだし、フロントフォークもリジッドのそれもストレートという古くさいものだしフロントギアバイオペースだったりするしサドルはすり切れてぼろぼろだし全体にパーツもへたってきているし、このまま乗り続けると命の危険があるかもしれないなあ、よしやっぱり買おうフルサスやダウンヒルや。いやあかんあかんまだ乗れる大事に乗っていたものでまだ見た目はきれいだし充分乗れるぜいたくはいかんだいたいダウンヒルなんかせえへんがな買ってはいかん買うもんか。と自分に言い聞かせながら買うならスペシャライズドかなあクロスカントリー用のフルサスもあるらしいしなあと一応カタログは取り寄せた。

肘が腫れた 9/9/02

 どうやらまた虫に刺されたらしい左の肘が腫れ上がって曲がらなくなってしまった。寝ているうちにやられたのか朝方痛みで目が覚め、ちょっと体を動かしただけでも激痛が走るため寝ていられずそのまま起きる。顔を洗おうと両掌に水を溜めて、さあ顔へと思ったら痛くて左手だけ曲がらないものだから顔が洗えない。大変不便である。
 よく見ると肘を中心に二の腕の中程から手首のあたりまで赤くぱんぱんに腫れており、ムカデにしては腫れも痛みも少ないし、蟻にしては腫れすぎているし、この感じは蜂かなあと思うものの部屋の中に蜂がいたらいくらなんでも気づくだろうし、なににやられたのかわからない。
 と思っていると、悪いことは重なるもので昨夜読んでそのまま床に放っておいた新聞を踏んだせいで足が滑り、ひっくりかえった拍子に左手で体を支えてしまい、曲がらないはずの肘が勢いよく曲がったおかげで肘が裂けた。音もなくビニールが裂けるみたいにくにゃっと裂けたのだが中から血膿となんだかよくわからない茶色いコロイド状のものがあたりに飛び散らばって、しかも猛烈に痛い。激痛のあまりしばらく動けなかった。落ち着いてから裂けたところを見てみると、桃を割ったような感じでぱっくり開いた断面からもう一方の断面へと繋ぐようにラーメンの麺みたいなものが何十本も垂れ下がっているのである。
 もしかして神経かなにか大変なものが露出してしまったのではないかとぞっとしたのだが、それら細い黄色いものは触っても痛くもなんともなく、まさに茹ですぎたラーメンといった感じで指でつまむと抵抗なく潰れていく。めちゃくちゃ気持ち悪い。どうしたものかと悩んだものの、そんなものぶらぶらさせていては面倒なのでとりあえず全部引きちぎって手の中に集めるとビー玉くらいの塊ができた。傷口を押してみると、血といっしょに麺のようなそれはにゅるにゅるといくらでも出てくる。しばらく押していると出てこなくなったが、結局ちょっと大きめのピンポン玉くらいの塊になった。ぐにゃぐにゃである。いったいこれはなんなのだろう。
 塊に鼻を近づけると蜂蜜のような甘い香りがする。やっぱり蜂に刺されたのかなあ。

夏の終わりにビアガーデン 9/8/02

 飲みに行く口実さえあれば集まる人々が、夏の終わりをはかなんでビアガーデンに行こうと見事な口実を編み出して集まったのだが、驚いたことにビアガーデンはちょうど昨日で終わっていたためしかたなく安い居酒屋でだらだらと飲む。ビアガーデン行きたかったなあ来年こそは行こうなとしみじみしつつ六時間ぐらいだらだらだらだら飲んだが、いったいあんなに長い間おんなじ場所にだらだらいて、なにを話していたのかさっぱり覚えていないのがえらい。
 
コニー・ウィリス/大森望訳 『航路』"Passage" 9/4/02

 珍しいことに「サンプル本」ということで、実際に販売される本よりも体裁のシンプルなものが送られてきたのでおもしろがっていたのだが、ちょっとだけと思って読み始めると恐るべきリーダビリティでぐいぐいひきこまれ、そのまま文字通り寝食を忘れて一気読みしてしまう。こんなに引きずられたのは近年では田中啓文の『水霊』かキングの『グリーン・マイル』以来である。これほどの長さの物語を一気に読ませ、しかも素晴らしい読後感を残す手腕には心底脱帽した。
 ソニー・マガジンズから上下巻で十月の発売らしいが、これは読んで絶対損のないとんでもなくおもしろい小説である。今、この文章によってこの小説の存在を知らされたあなたはきっと読了後田中哲弥に心から感謝するはず。あちこちからいろいろ情報が漏れてくる前に、あとがきも解説もあらすじも読まず、いきなり読むことをお勧めする。いいから読めって。


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