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九月は忙しかった 9/1-9/30/03

 いやほんま。

どこかの山 10/4/03

 どこかの山を自転車で走る。今回もすべてY氏にまかせていたため、どこを走ったのかまるでわからないのである。なんとかいう山の周りをまわって、昨年暮れ雪の中を走ったとき暗くなってしまったため断念した林道を最後に通って戻るというような話であったから、おそらく生野の近所だったのではないかと思う。よくわからないうちに今年もまた六甲縦走に出ることになっており山歩きのトレーニングもしなくてはいかんなあということで、自転車で峠道を三十五キロほど走ったあと近くの山に登ろうというのがY氏の計画だった。
 ところがまたしても大雑把な地図しか持たずに走り出してみると細い林道はやたらと分岐があってどっちにいっていいのか全然わからん迷ってしまうのではないかと思ったときすでに我々は迷いに迷っており上か下かもわからなくなる。おもろそう、という理由で適当に入り込んだ細い林道はやがてとてつもない急勾配の登山道となって自転車を担いで登るしかなくなり、ついにはススキやら棘のあるいやらしい植物などが我々の背よりも高く茂る南米のジャングルみたいな状況となった。もはや自分たちが進んでいるのが道なのかただの草むらなのかも判然とせず木や草の隙間があればそこに頭を突っ込むという具合に進むのみである。しばらく我慢して自転車担いだまま草木掻き分け岩よじ登りなんとか密林を抜けてはみたものの、その先のあまりに険しいアイガーサンクションみたいな様子を見て愕然とし、自転車担いででは到底踏破できないということがわかったため引き返すことにした。つまりまた南米のジャングルへと突入したのである。その後ところどころ乗っていけそうな場所に出るたびなんとか自転車で下ってみたが、急斜面のガレ場が続きなかなかコントロールは効かず、目の前にトゲトゲのいやらしい植物が迫ってきて、そのまま進むと確実に体中傷だらけになるとわかっているのに避けられずわあわあ言いながら突っ込むしかなかったりした。血まみれである。尻がリアタイヤにあたりそうなほど後方に体重をかけつつ下るがそれでも何度か自転車ごと前転しそうになる。これはこれでなかなかおもしろかった。
 這々の体で舗装路へ出、長い下りでは最高速度六十二キロというようなスピードも出たのだがここまでくると相当怖い。ブロックタイヤだからよけいに怖いというのもあるけれど、たかだか六十キロでこんなに怖くてはツール・ド・フランスへの道は遠いなと思う。なんとか歪な周回コースをとってスタート地点に戻った頃にはすっかり陽も傾き体もへとへとで山登りどころではない。去年行けなかった林道には今回も行けず、なにかの呪いとちゃうかなどと言いつつやはり去年わざわざ行ったのに年末で休業していた温泉へ今度こそと行ってみたところいったいなにを考えておるのだあんたら大丈夫か営業時間が五時までしかも四時半までに受け付けを済ませないと入れないというようなことが書いてある。なんやねんそれは村役場でももうちょっとやっとるぞ。そのときすでに六時を過ぎていたわけで当然入れず、なにかと思うようにいかない呪われた一日であった。しかし四時半までに行かないと入れない風呂というのはどういう人のためにあるのだろうなあ。夕食は三時。六時就寝というような暮らしを想像する。
 石を跳ねたり一度チェーンサック(チェーンがフレームとギアの間に挟まってしまうのである)もあったせいで、帰ってきて見てみるとフレームはあちこち傷だらけである。まあこうやって自転車にも貫禄がついていくのだなあとは思うものの、美しいペイントが剥げアルミが覗く様には胸が痛む。フレームだけで十五万円もするのにのー。
 
大阪で遊ぶ 10/5/03

 大阪IMPホールでラジオの公開録音があるというので呼んでもらった。『アベノ橋』だけでなくなんか他のアニメとも合同だそうで、会場付近にはものすごい行列ができている。偉そうで薄汚いラーメン屋の百倍くらい並んでいる。楽屋に入ると文化祭が終わったのかと思うほど目一杯詰め込まれた黒いゴミ袋が三つも四つもあって、なんのゴミだろうかと思ってたら全部声優さんへの差し入れなのだった。ゴミ袋に入れるか。しかし実際この男の声優さんふたりの人気はすさまじく、その後舞台でも客席の沸きように仰天した。なにしろぱっと見は別にかっこいいこともなんともないごくごく平凡な容貌の兄ちゃんたちなのである。アニメの世界はわからん。
 終わってから梅田に出て「がんこ」で打ち上げ。店内で喧嘩があったようで一時騒然となる。パトカーも警官もたくさんやってくる。聞いたところによるとおばはんと若い男の喧嘩だったらしいがそんなことより店を出る際、声優さんのマネージャーのひとりが、エレベーター前で客から事情を聞いている婦人警官のそばに寄って声高らかに「いやあ、可愛いですねえ」と口説きはじめたのにはたまげた。たしかに可愛い人だったが職務中の制服警官を口説く根性はぼくにはないし、仲間だと思われては迷惑するので飛んで逃げた。あとどうなったかは知らないけどちょっと尊敬した。
 半分ほどの人数に減っての二次会はすぐ近くのコジャレタ居酒屋。ちょっと騒ぐたび、静かにしてくれと店員が文句を言いにくるので閉口したが、そんなことを気にする人たちではなく平気で騒ぎ、さらに大声で店員を呼ぶ。途中からあきらめたらしく店員はなんにも言わなくなった。裸足になったサエキがラジオのディレクターの顔を思いきり蹴るのをおお始まったかと遠くから眺めていると、ぼくのすぐ横に山賀さんがいた。今日は蹴られずにすみましたねと言うと、危ない気配を感じたのでできるだけ距離をとるようにしていたとのことだった。みんな学習している。
 明け方まで遊んでホテルに戻り、テレビをつけると関西ローカルの番組をやっていて一瞬不思議な気持ちになる。大阪でホテルに泊まることなどめったにないので、ここは東京ではなく大阪なのだと気づくまでしばらくかかった。ああそうかとわかったので安心しビールを飲んで寝る。

魔法のランプ 10/8/03

 自転車の量販店にふらりと入り適当にあれこれ眺めていたところ、初老の男性が入ってくるなり大声で店員に話しかけたのでぎょっとした。なんとそのおっさん「兄ちゃん、魔法のランプっちゅうのあるか」と言ったのである。あるかいそんなもんと声に出しそうになったが間際でこらえる。店員も困惑気味だったが、どうもおっさんの欲しているのは「電池要らずで」「暗くなったら勝手に光る」「今話題の」自転車用ライトということのようだった。そういうものはちょっとあれですがこれなんかは、と店員がライトを勧めるたびおっさんは「これは電池要らずか?」「暗なったら勝手に光るか?」「ほなこれが今話題のやつか?」とこの三点は譲れないとばかりくりかえし確認する。「電池要らず」と「勝手に光る」はわかるがなぜ「今話題」である必要があるのかはよくわからない。おもしろかったのでずっと聞き耳を立てていたのだが、やっと納得したおっさんが「ほなそれもらうわ」と言って買ったのがどんなライトだったのかはわからなかった。

賢いライト 10/9/03

 魔法のランプで思い出したが、いつも自転車のツーリングではお世話になっているY氏はかつてGTのクロスバイクに乗っていた頃「賢いライト」というのを使っていた。そういう商品名なのだそうだ。魔法のランプを探していたおっさんが言うように「暗くなると勝手に点灯する」ライトである。残念ながら「電池は必要」で「今話題」でもない。
 しかしこれが、ハイスピードでちょっとした段差を越えたりするたびに落ち、わざとやっているのではないかと思うほどその都度壊滅的にばらばらになるのである。毎回爆弾事件後の鑑識班みたいな作業を強いられるためまったく使えない。Y氏の取り付け方法に問題があったかというとそういうわけでもなく、我々が達した結論は「賢いライトは、体が弱い」ということであった。

淡路ふたたび 11/1/03

 まず最初、飲みに行こうと誘ってきた友人によると今回の話は「会社の上司の知人が淡路でカラオケ喫茶を開いたので、会社のつきあいもあるしみんなでいっしょに行ってくれないか」ということであった。しかし実状は諸般の事情でここには書けないアホみたいな理由であって、それがわかった出発前の時点でぼくはやめてもよかったのである。しかしまあせっかく来たんだしと説得されてしまいしぶしぶ車で淡路に渡り、いやもうこんなアホなことがあっていいのかこの人たちはいったい本当に人間かと思うほど情けなくくだらないいまいましい腐りきった阿呆の集まりに巻き込まれた。自転車で走った炎天下の淡路は、終わってみれば心地よい記憶となって残っていたのだが、ここにきて淡路はぼくにとって唾棄すべき忌まわしい最低の地となった。別に淡路島や淡路の人全部が悪いわけではないのでこんなこと言ってはなんだが死ね淡路。

スパイダーマン 11/2/03

 どうしようもない馬鹿映画という評判ばかり聞いていたので、そのせいか見てみればけっこうおもしろかった。しかしまあびっくりしますぞヒロインの不細工なこと。いったいなにがどうしてこんな不細工な人がヒロインなのかと不思議でならず、なにか意図があるのかとそればかりが気になる。いくらなんでも不細工すぎる。こういう単純な映画の場合、演技が少々だめでも美少女を出しておけば成立するだろうと思うのに、なにがどうしてこのヒロイン。まったく魅力がない。なんでスパイダーマンのあなたはこんなののためにがんばるんですかちょっと来なさいいいかげん目を覚ませと説教したくもなるのである他にすることなんぼでもあるやろおまえは。いやあびっくりした。いやもうほんとまだ見てないひとは気をつけた方がいいと思う。ものすごいであれは。

相生で牡蠣を食す 11/5/03

 ある優雅なグループに誘われて相生まで牡蠣を食べに行く。ところが目当ての店は定休日で、しかたなく別の店に行ったのだがここが素晴らしかった。優雅な人たちが集まると、といってもぼくを入れて四人なのだが、それでもなにかしら優雅な空気に包まれるのか終始優雅で牡蠣もびっくりするくらいおいしかった。食べ物で感動することのほとんどないぼくが言うのだからこれはもう大変なことなのである。いやもう本当にうまかった。
 生牡蠣やら魚を売っている感動的なほど親切な店もあった。エイヒレがあったので買ったのだが帰ってきて食べるとこれがまためちゃくちゃおいしくて、今まで地球上で一番おいしいと思っていた明石「魚の棚」で売っている一番上等の八百円のやつよりおいしくて文字通りひっくり返る。ビニール袋にどっと無造作に、しかも大量に入って五百円だったのである。こんなことなら五万円分くら買っておけばよかったとものすごく後悔した。日頃優雅とほど遠い暮らしをしていると優雅なグループに参加して美味なる牡蠣を食しレイモンド・カーバーが描くような胸を打つ親切に接しながらも結局酒の肴で後悔するのである。どんなもんじゃ。

ADSL 11/11/03

 やっとADSLというのに乗り換える。今までは33600のモデムだったので、その違いはものすごい。ゾウリムシと新幹線ぐらい違う。ほとんどテキスト主体でしか使っていなかったためこれまでずっとブラウザは「画像は表示しない」という設定にしており、表示するようになって初めてあちこちのWEBページの背景に模様があったり動いていたりすることに気づいた。勝手に動き出したり音が出たりすることもあって、知らんまにえらいことになっとるなあと今頃感心する。動画をダウンロードしてもあっという間なので、マウンテンバイクとかスノーボードのサンプルビデオを落としてこんなんタダで見られるのかとまたしても感心する。おもしろがってどんどんいろいろダウンロードする。というわけでこれで仕事の効率があがるかというと、どう考えても邪魔にしかならないような気がするのである。

ラジオドラマの収録 11/18/03

 渋谷のスタジオで、ぼくが書いたラジオドラマの収録があった。担当者もサエキも、脚本を読んだ限りでは「まったくわけがわからない」と言っていたのでめちゃくちゃになるのではないかと心配していたのだが、音響関係のスタッフはよく理解していてくれたようで特に問題もなくさくさく進む。
 終わってからガイナックス武田さんと「あるみちゃん」松岡さんと三人でお茶。松岡さんとゆっくり話すのは久しぶりで、非常に得をした気分である。愛らしい容姿に似合わず大阪の姉ちゃん独特の毒舌全開でめちゃくちゃおもしろい。松岡さんにいじめられるのはなかなか楽しいかもなあ。次の仕事に行くという松岡さんと別れ、武田さんと有楽町まで行きなんとなくビックカメラに寄る。ぼくはパソコン用のスピーカーを買おうと思っていたのだが武田さんはデジタルビデオに興味があるらしく手にとってあれこれ見はじめるとなかなか動かない。ひたすらデジタルビデオをいじる。呼んでもその場から動かない。全機能試してみないと気がすまないようで黙々と全機能試してからまたさらにいじる。開けられる部分は全部開けてみる。あーここに電池が入るんかあなどと呟く。他のモデルにも手を伸ばす。こっちもええなあと呟く。そばに展示されているデジカメも触ってみる。他におもしろいものはないかなと周辺を見回す。そしてまた同じデジタルビデオに手を出す。完全に「オモチャ屋に来た子供」である。
 五階まで上がりぼくがスピーカーを選んで買っている間も、またしてもそこに展示されたデジタルビデオをいじり倒し、一階に下りてそこでまたデジタルビデオの展示があるとやはりたちどまっていじり倒すのだった。かなり異様であった。

六甲全山縦走大会 11/23/03

 参加するのは三回目であるが今年は特に山歩きのトレーニングはしないままぶっつけで参加することになってしまった。しかも同行Y氏は「今年は十二時間以内でゴールする」と無茶な目標を打ち立て、各チェックポイントでの通過時間まできちんと計画している。早く並んでおかないと五時のスタート直後に渋滞に巻き込まれて進めなくなるというので三時にはぼくの仕事場に迎えに来てしまい、なんとか眠ろうとビールをがばがば飲んだりしたもののこのところ朝七時八時に寝る暮らしなので少々酔ったところでそんな時間に眠れるはずもなく、結局ぼくはビールを三リットルほども飲んだあげくまったく眠らないまま六甲縦走に出発したのであった。こんなことならコーヒーでも飲んで機嫌よく起きておればよかった。
 全行程を十二時間以内で走破するとなるとけっこうなハイペースで突き進まねばならず、さすがに走ったりはしないものの(時間を競うものではないので安全のため努々走ってはならぬというルールなのである)休憩など取る余裕はない。寝てないせいかぼくは三つ目の山となる高取山あたりですでにふらふらで、前回はまったく疲れることもなく余裕で登り切った次の菊水山の登りで息が切れた。これは相当体調悪いぞと思っているのにY氏はペースを緩めることもなく、摩耶山でのチェックポイントでは十一時三十分通過を予定していたところが、チェックそのものが十二時にならないと始まらないということで、その場でしばらく待たなければならなかった。摩耶山展望台を十二時過ぎに出発し、しかしぼくはとにかく眠くてすぐに息切れするし咳は出るし長いこと散髪もしてないしなんだか脚も痙攣しそうな気配もうそんなハイペースでは進めませんこのままでは死にますというわけでY氏には先に行ってもらい、そこからはひとりで自分のペースで歩く。とはいえそのあと脚は痙攣しまくりである。きつい登りで踏ん張ったとたん両脚の後ろ側が尻の下から踝あたりまで一斉に攣ったときはこらもうあかんかなと思って斜面に突っ立って泣きながら仲のいい女の子に電話して助けてくれと言ったりした。あほかと言われた。
 結局Y氏は十一時間三十分、ぼくはそれに一時間ほど遅れてゴールしたが、途中から膝も痛くなるし、こんなこと二度とやるまいと歩きながらいろいろ呪った。いったいみんななんでこんなわけのわからないことにわざわざ参加するのだろうかあほと違うかと呻きながら歩いていると参加している人がみんな宗教の勧誘に来る人や学校の先生みたいなぼくの嫌いなタイプの人ばっかりに見えてくる。こんなものに参加する人たちとは絶対友達になりたくないと思ったりもしたのだがゴールしてしまえばけっこう満足し、宝塚でビールをがぶがぶ飲んでへろへろ帰る。いつも思うがへんなイベントである。

自転車なら大丈夫 11/24/03

 六甲縦走のせいで全身筋肉痛がひどい。特に右膝は腱がどうにかなっていてめちゃくちゃ痛く、階段を下りるときなどけっこうな激痛が脳天打ちのめすのだがなんとなく動きたくなって自転車に乗ると急な登り坂のときなど膝は多少痛むものの筋肉は全然痛いところもなくがんがん進めるのが不思議。これはつまり自転車で使う筋肉と山歩きで使うところがまったく違うからなのか、それとも自転車で使う部分だけは鍛えられているのでそのあたりの筋肉にはダメージがなかったのか、自転車に乗るやぼくの人格がなにか獣じみたものへとシフトするためか、自転車に乗ることで脳内麻薬どばどばで痛みを感じなくなるのか、そうかもしかすると自転車に乗って運動したおかげで筋肉がほぐされどっと身体機能が回復したのではないかもう治ったのだきっとそうだと喜び降りて歩くといきなりあちこち痛くてこけそうになる。人体の不思議やなあと感心するだけで一日が終わった。ちょっと走ってみたがこれは膝が痛くて一キロ走るのがやっとであった。運動することが健康によいというのは嘘だと思う。


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