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きょうのイチロー 5/31/02

 大リーグの中継でシアトル・マリナーズの試合のあと必ず「きょうのイチロー」というのがある。その日の試合でのイチローの打席を全部見せてくれるわけだが、あのあとすかさず「あしたのジョー」をやってはどうかといっつも思うのだがやらんなあ。

食玩サンダーバード 5/30/02

 アベノ第十二話アフレコ。早めに仕事場を出たのに新幹線が満席ばっかりで、一時間ほど遅れてスタジオに入る。おまけに台本も忘れて今日はめちゃくちゃ。今回はぼくが関わった台本から大幅に変更されていたのでなにがなにやらよくわからないままアフレコは終わる。終わってからすぐ近くの沖縄料理の店へ行きゴーヤチャンプルーとかナントカカントカーとかナントカーとかナントカーなどを食べる。めちゃくちゃうまかったが名前は全然覚えていない。
 横に座った庵野さんがとてつもない偏食の人で驚く。食材になる前動いていたものは食べられないのだそうだ。ベジタリアンかというとそういうわけでもなく、とにかく食べられるものが少ないという。松岡由貴さんが、新婚なのにそれでは奥さんが料理に苦労されるでしょうともっともなことを言ったのだが、庵野さんによると「作る種類が少なくてすむのでかえって楽」だとか。豆腐は大丈夫、というのに出てきた豆腐らしきものには手をつけず、なぜかと訊くとなんとなくだめそうな気がすると妙に自信たっぷりに胸を張って「李下に冠を正さず」と全然関係ないことを言うのだった。しかしあのナントカーというやつはうまかった。また食べたいが名前がわからん。
 ホテルに帰る前いつもコンビニでビールを買うのだが、そこにサンダーバードの食玩が売られているのを見つけてしまい、うーんペネロープ以外なら全部欲しいがとりあえず2号と3号は欲しい、と思いつつ二個買ったところ、これが2号と3号だったのでのたうちまわって喜ぶ。よかったよかった。

出会い系サイト 5/26/02

 天気がいいのでみんなで外で飯を食おう、というなんとものんびりしたお誘いがあった。昼前に寝たばかりで眠かったので夕方まで寝てから参加するとあたりまえだがすでに昼食は終わっており、ただだらだらとビールを飲む。聞けば男五人集まったうちぼく以外の全員が出会い系サイトで知り合った女性とデートを重ねているのだそうでまことにけしからん。みんな妻も子供もいるというのに。しかしなんで「出会いサイト」ではなくて「出会い系サイト」というのだろうなあ。「出会い」とはいうもののちゃいまんがな言葉のあやちうやつですがななに言うてますねんええ大人が手間かけて「出会うだけ」てなアホなことありますかいなもっとその先にええことありまんねんわかりまっしゃろそうそうそれそれそれでんがなできまんねんやりまんねん損はさせまへんがな、みたいな意味か。こういうところにやってくる女の人は人生この先もうなんにもおもしろいことなんかないに違いない若い頃はそれなりに恋愛もあったのになあ今では誰もわたしを女として扱ってくれないわと非常に後ろ向きでどんよりした暮らしの主婦が多いと聞いたが、男の方はというと妻以外との女性なら疥癬淋病クラミジア、エイズ梅毒なにするものぞ行けいけ突進穴さえあれば、病原菌の巣にでもなんでもとりあえず突っ込みたいやつばっかりなわけで、メールでこちこちと関係を育んだあげく会ったら実は妻と夫だったみたいな事故はけっこうあちこちで起こっているんだろうなと思う。で、ま、せっかく会ったしとりあえずホテル行こかとなって家庭円満めでたしめでたしそれはないか。

風呂場の異音 5/25/02

 どこからともなくポコンポコンポコンというような音が聞こえてくる。なんの音かとあちこち耳を向けてみるとどうやら風呂場からである。どこかで水が漏れ落ちているらしいが、探しても見あたらず音の出所もはっきりわからない。壁の中で水が漏れていたりするとやっかいだなあと壁に耳を押し当てたりもしたのだがやっぱりよくわからないのだった。
 どうしたものかと思いながら上を向いたり下を向いたりしているとたまたまくしゃみが出て、驚いたことにそのとたん異音が止んだ。原因はわからなかったが、とりあえずおさまったのでよかったよかったと食事をしたりしていると、またしてもポコンポコンと始まる。風呂場へ行き、さっきみたいに大きな音を出すと止まるのではないかと思って手をたたいたり、わあっと叫んでみたりしたのだが止まらない。しばらくどっすんどっすんぱんぱんわあっとやっぴゆー(口笛)とか騒いでみたが効果はなく、やはりくしゃみでなくてはいかんのかではコヨリで鼻をくすぐってくしゃみをしてみようかと考えたところで音の正体がわかった。窓の外を見て突如わかった。窓の向こうに見える家では法事かなにかをやっており、そこからの音が風呂場に反響していただけなのだ。坊さんが木魚を叩いていた。

『アベノ橋』第八話 5/24/02

 サンテレビで朝の七時半からオンエア。いつもはこの時間、東京にいるので見られないが今日は初めて生で見る。うーん、これまでで一番おもしろいのと違うか。あるみちゃんの松岡さんものすごいなあ。みみずもカエルもみなごめんのあと第三の魔物が背後にいると気づいたときの、悲鳴とも笑いともつかない声がなんともすばらしい。他もいろいろよかったけど、このときの声は妙によかった。
 しかしこれだけギャグのタイミングがうまく仕上がっているのを見れば見るほど、時間の都合で切られてしまったシーンが惜しい。実に惜しい。いろいろ惜しいがあまりに惜しいワンシーンをここに載せておく。喫茶店のシーンである。元々花田さんの脚本にあったシーンを、うんと派手にしたのだ。とにかくぼく自身はものすごく気に入っているシーンである。
 シオタン(アフレコ途中まではシオリンだった)にデートを申し込まれてサッシが大喜びのところ。
 
 サッシ、感激の涙の轍を両頬に流しながら、
サッシのM「生きててよかった……」
 その様子をカウンターの陰からうかがっているあるみ。
 ククク……といやらしい笑みを浮かべ、
あるみ「見てなさいよ〜〜〜」
 (※完成版では、ここからいきなり映画館のシーンに跳んでしまう)
 厨房に置かれている作りたてのパフェに、練りガラしやら、芋虫やら、試験管に入ったムラサキの液体やら、果てはコンバットナイフ、爆弾、重機関銃、自走式対空砲、ステルス爆撃機まで仕込む。巨大なものでも無理をすればパフェの器になんとか入ってしまう。
 泡立つ不気味な物体へと姿を変えたところで、店員がそれをサッシの席へ運んでいく。
店員「お待たせしました」
サッシ「(スプーンを取り)いただきまーす」
 あるみはカウンターの影に隠れて、嬉しそうに来るべき悲鳴に耳を塞いでいるが、
あるみ「(遅い)ん?」
 カウンターからそっと顔を出すと、なんとサッシの席に人の姿はなく、容器は空になっていた。
あるみ「おかしいな……」
 サッシの席までいって、容器に残ったクリームをすくって舐める。
   ×   ×   ×
 喫茶店、遙か上空からの俯瞰。
 地響きを伴った爆発音。
 喫茶店を中心とした町の大部分が「アキラ」のように壮大に爆発。
あるみ「どわーーー」
 爆発の中、最初は点としか見えないが、徐々に姿を鮮明にするのは爆心部分から上空に(俯瞰するカメラの方、つまりこちらに)向かって猛烈なスピードで飛んでくるぼろぼろのあるみ。
 ガン、と音を立ててカメラにぶつかり(カメラそのものが描かれているのではなく、投稿ビデオなどであるように撮影中のカメラに被写体がぶつかってくる映像。画面上あるみの顔でいっぱいになって、映像が一瞬乱れる)気を失って回転しながら(無重力っぽい)また落ちていく。

一回休み 5/23/02

 アフレコは一回休み。なんとなく手持ち無沙汰な気がしてぼんやりしてしまいそうだったので映画を見る。『遠い空の向こうに』"October Sky"というのを見る。何回かWOWOWのプログラムでタイトルは見ていたが全然気にしていなかったところ、先日北野勇作氏が「めちゃめちゃええで」といっていたので録画したのである。うん、たしかにええ映画や。ローラ・ダーンの、町での噂や病気云々というあたりがちょっとわかりにくかったけど。
 気をよくしたのでそのままつづけて『JSA』を見る。『シュリ』もおもしろかったがこれもおもしろいなあ。『シュリ』はラストがくどくてそのあたり不満だったが、これのラストはすっきりしていた。北側の毒蝮三太夫みたいなおっさんが特によかった。

魚屋の二階で宴会 5/22/02

 明石の町おこし会みたいなやつの宴会があった。明石にも町おこしにもまったく興味はないけど、いつも呼んでもらえるので宴会には参加しているのである。ところが今回は単なる宴会ではなくなにやらこれからの町おこしに関する重大なテーマがあったようで、大学教授やその関係の若者が数人、なにかアカデミックな話をしてくれた。のだと思う。魚はおいしかったしビールもたくさん飲めたので、終始なんの話やら皆目わからなかったのはまあよしとしよう。帰り際ひとりの若者がぼくのところへやってきて、あなた作家ということですがどのようなものを書くのですか今まで何冊書いたのですかどこに住んでいるんですかなどとなんじゃこいつ初対面のくせに無礼なと怒る間もなく質問を浴びせかけてくるのでたじろいだ。いやまあその、ともぐもぐ対応していると若者はさらに「作家という仕事をするにあたってこの明石という土地を選んだ理由はなんですか」と大真面目に訊いてきた。そんなこと言われてもなあと困ったので「たまたま」と答えて逃げ帰ってきた。なんやあれはいやがらせか。

自転車がっ 5/20/02

 実家へ帰ろうと夕方BMXを見ると前輪の空気が減っていたのでこれはいかんと、空気を入れようとしたのだがちっとも入らない。虫ゴムがダメになっているのかなあと引き抜いてみたらダメになっているどころか死んでからかなり経っており、あろうことか腐ってちぎれたゴムが中で固まってしまっている。新しいスーパー虫ゴム(ゴムを被せるのではなく、蓋みたいな仕掛けになっているやつ。コンドームに対して、尿道に突き刺して蓋をするタイプの避妊具を想像していただくとわかりやすいかと思いますそんなものはないけど)に交換しても、腐ったゴムのおかげで中に入らないのである。これは修理するとなるとチューブ外したりして小一時間かかるかもと思い、とりあえずBMXはほっといて古いふるいママチャリで帰った。ここまではまだよかった。
 さて大変なのはここからで実家で飯を食い、さあ仕事場へ戻ろうとママチャリに乗って後ろのブレーキをかけたとたん、がきっと音がしてブレーキがかかったままになってしまった。ずいぶん前から後輪のブレーキは、かけるとそのあと数メートル走るあいだかかったままになったりしていたのでそのうちこういうことになるだろうとは思っていたものの、なぜ同じ日に二台つづけて壊れるのだ。
 しかたがないので歩くことにしようと思っていたら父親が、使ってない自転車があるからそれに乗っていけという。変速三段の実用車である。そういえばこんなんあったなと埃まみれのそれを借りることにし、なんか今日は呪われているので気をつけなければとゆっくり走っていると、ちょうど実家と仕事場の中間地点あたりで後輪からばきばきばきと音がした。今度はなんやと見ると、針金が突き刺さっておった。子供のいたずらか、刺さりやすいよう先端が真上に向くよう工夫して置いてあったようで、やったやつが近くにいるのならそいつの尻にこの針金突き刺して目から引き抜き輪っかに結んでバスの後ろにくくりつけてやろうとあたりを見回したが誰もいない。とぼとぼと残り四キロほどを自転車を押しながら歩いたのだった。
 ママチャリは三十年近く使っているものでもはやどうでもよく(たぶん直すけど)、BMXの腐ったゴムは簡単に取れたのであっけなく直り、実用車のパンクはごく普通のパンクであってこれもサルでもできるパンク修理セットで簡単に直してしまい、結局はなんにも大したことはなかったのだがさすがにちょっと気持ち悪かった。誰やだれがなにをしたんや、と本当に久しぶりに知人の顔すべて思い浮かべて全員を疑う。

同窓会 5/19/02

 高校の同窓会があった。クラスのみんなで集まって、というようなものではなくて卒業生のすべてをとりしきる謎の団体が定期的に行う同窓会なのらしい。漏れ聞くところによるとこの謎の団体はとてつもなく巨大であり、その力は相当のもので逆らうと大変なことになるのだそうだ。
 ぼくが出た高校の卒業生はなぜか老人が非常に多く、たぶんみんなひまなのでせっせとこのような会を行うのだろうと思う。で、今回は我々の年代を中心にということで案内が一月ほど前に来ていたのだがいつもの、とりあえずどんなことでも飲む口実に使う人々がこれを見逃すはずがなく「終わってから飲もう」ということで参加しなければならなくなった。すでに捨てていたのでゴミ箱から案内ハガキを探し出し「参加」と書いて出したのはよかったのだが昨日になってよくよく見るとなんと開始は「朝十時より」となっているではないか。どこの馬鹿がそんな早朝出かけるのだ。わーこれは無理やとあきらめ、終わってからあとの飲み会にのみ合流することにする。しかし普通同窓会朝からするか。
 あとで先輩の家に集まりだらだら飲みながら聞けば、来ていたのはいつものメンバーの他はじいさんばあさんばっかりだったそうで、ほんとに行かなくてよかったと胸撫で下ろす。ひとりだけ久しぶりに会う同級生が来ていたが、見事に禿げ上がって電球みたいになっていたので驚いた。十四年ぶりに会ったというのに開口一番ぼくの口から出たのは「あっ、毛がない」あまりのことに他に言葉がなかったのだすまんすまん。

へとへと 5/17/02

 サエキトモにどのようなしかえしをすべきかと、そればかり考えつつ仕事場へ戻る。へとへとだったので知らないうちに寝てしまっていたのだが、夜遅く某氏からの電話で起きる。とある人に聞きましたがあなたなにやらえらい怒ってはるそうですなあ、と言うので別に怒ってないけど納得はいきませんなあ怒ってるわけではないけど一生納得いきませんいいや絶対納得いかんわい台無しやんけ怒ってない言うてるやろっうわあっ、というような内容のことを穏やかに語っているのに向こうがあわてていやいやわかりますわかります落ち着いておちついてどうどう、みたいな電話であった。別に怒ってないて言うてるのに。ぼくより「とある人」の方がものすごく怒っていたと思う。なんのことかわからんかあたりまえじゃわからんように書いておる。

サエキトモ大暴走 5/16/02

『アベノ橋』第十一話アフレコ。東京赤坂某寿司屋における第二次宴会開始直後。
 第八使徒サエキトモ襲来。
 この時点をもって当宴会はネルフ管理下となる。
 ビール数杯の追加によりサエキトモ靴下を破棄。
 のち暴走。
 第三新東京市およびかわいそうな寿司屋被害甚大。第八使徒サエキトモ、アカホリサトルと直上決戦。ATフィールドを展開。
 サエキトモ、アカホリサトルに対する脚部および平手による攻撃により、

 これを殲滅。

 ヤマガヒロユキ、キングレコードジャンボO、タナカテツヤひたすら逃げまどうも大破。
 再起動の予定未だ不明。

眠狂四郎 5/14/02

 テレビで市川雷蔵主演の眠狂四郎円月殺法なんとかかんとか斬りみたいな映画をやっていたのでぼーっと見はじめたのだがそのうち食い入るように見てしまう。めちゃくちゃかっこええやないかなんやこれは。こんなに古い映画なのにこんなにかっこよくていいのかと思う。市川雷蔵もかっこいいがそれよりライティングやカメラワークがかっこよくてびっくりした。ぼくは映画の場合、話がしょうもなくても映像でどきどきさせてくれればそれで充分満足なのである。日本の映画も昔はえらかったんやなあこんなにかっこええとは思わなかった。こないだぼくの好きな小説を原作にしたつい最近の日本の映画をテレビでやっていたのでちょっとだけ見たけどあれはあれでものすごいと思った家族旅行のホームビデオみたいで。

K1ミドル級トーナメント 5/11/02

 マサト(字がわからん)って、ちゃらんぽらんな性格を演出しているだけで実はめちゃくちゃ一生懸命な好青年なのだろうなあ。と思ったりした。惜しかったなあ。それにしてもライバルのコヒルイマキ(こうやってカタカナで書くと爬虫類か昆虫の一種みたいでかっこいいぞ。みんなもやってみよう)はマサトとは対照的に真面目一本槍の根性男というイメージで、こういうふたりが同時期に揃うというのは実にドラマチック。梶原一騎の世界である。もっとやれもっとやれ。
 
第十話アフレコ 5/9/02

 なんとかぎりぎり五時に赤坂三分坂スタジオに滑り込む。今日はいつになく人が多くて座るところがないほどであった。庵野さんや赤井さん、それに「あるみちゃん」のモデルとなったというMさん(本当によく似ていてうっとりするほど美しい人であった)も来ていてなんだか雰囲気が濃いなあと思っているとそのせいなのかなんなのかなぜかプロジェクターの調子が悪く結局壊れてしまったので隣のAスタジオに移動するも今度はモニターのスピーカーが壊れたりしてなんとなく気持ち悪い。ハリウッド映画なら、あのあと七人くらいは死ぬ血の惨劇が展開されたはずである。『スクリーム』のシリーズで、録音スタジオに殺人鬼が現れたので必死に教えようとしているのに音が聞こえないため襲われそうな当人はまったく気づかない、というシチュエーションがあったなあとレコーディングルームを三重ガラス越しに眺めながら思う。
 死人も出ず血も流れないまま無事アフレコは終了してしまい、なんじゃつまらんなあと言いながらぞろぞろ居酒屋へ移動。どういうわけかサエキトモは七輪でばんばんいろんなものを焼き靴下を脱ぎ人々に炭化した魚や肉を食え食えと迫るのだった。甲斐甲斐しく世話を焼こうとしたのではなく、ただただなにかを焼きたいだけだったらしく配分も考えず次々に焼いたためほとんどの食物は炭と化した。武田さんや山賀さんたちの方の七輪で焼いた鶏肉はおいしいのに、サエキが焼くとパサパサかコゲコゲなのである。しかも食わないと怒るのだった。
 
明石で飲む 5/8/02

 田中啓文氏がテナーサックスの修理をしなくてはならんのだということで、先日開店したばかりの明石の楽器修理職人のところへいっしょにいく。小一時間ほどで修理は完了し、驚いたことに修理代はただだった。せっかく連れてきたカモなので十二万円くらい取ってはどうかと説得したのだがいらないという。あんなんで商売になるのかなあ。
 そのあと田中啓文とだらだらアホな話をしながら夜中まで飲む。仕事場に戻ってからそうや明日は東京行かなあかんのやと思い出し、さらにビールを飲んで沈むように寝た。と思う。途中から覚えていないのである。

人が多い 5/3/02

 三鷹から東京まではさほどでもなかったのに、東京駅はアホみたいに混んでいた。しかし人が多くても大阪みたいにどっすんばっすん街灯に群がる虫がごとき脳味噌狂った動きで人がどんどんぶつかってくるというようなことはなく、ちゃんと歩けるのはありがたい。大阪は早く滅びるがよろしい。
 新幹線ももちろん満席である。ぼくは指定券があったので座れたが自由席は大変だったようで、座れなかった人々が指定席の方まで流れてきてドア付近に座ったりしていた。いつも思うが、こっちはちゃんと連休の真っ最中だからと混雑を予想したうえ手間をかけて一週間も前にわざわざ駅まで足を運んで指定席を予約し、それなりの代金を払って座っているというのに席のない子供や年寄りがうろうろしつつこちらを恨めしげに眺めるのはやめていただきたいものである。おれがなにした言うねん。
 前の席にアメリカ人(たぶん)のばあさんがやってきて、乗り込んでくるなりいきなりぼくに向かってごわーっと英語でなにか言う。他にも人はいっぱいおるやろなんでぼくに言うだいたいなに言うてるか全然わからんわと思いながらその巨体と年寄りの割には可愛らしい顔をぼーっと眺めていると、そのうち「C」というのは窓側か通路側かというようなことを訊いているらしいとおぼろげにわかったので、通路側であると教えてやったら今度は米俵ほどもあるスーツケースを指さし胸張ったまま当たり前のようにこれを網棚にあげてくれろと言うのだった。まあ別にかまわんがとあげてやったがめちゃくちゃでかくて重い。なあ婆さん棚にあげたのはいいけどこれあんたどうやっておろすのだと思い、どこで降りるんですかとつい日本語で訊いたらなんのことはないちゃんと通じて京都だという。ぼくは新大阪まで乗っているので、ほなしゃあないなあ京都でぼくがおろしますわと言うとああそれは助かるみたいなことを英語でまくしたてて喜んでいた。それはもうなんの遠慮もない手放しの喜びようであり、あんな風にされるとこっちも親切にするしかなく、敵ながらなかなかうまい作戦だと思う。以前にも一度、そのときは若い女性だったがアメリカ人と新幹線で隣り合わせになったことがあったが、このときも荷物あげてくれおろしてくれこれ訳してくれ弁当選んでくれコーヒーいっしょに飲もう今からいっしょに旅しよう来週パーティーをするから家まで(サウスダコダかなんかそんなところだった)来ないかなどとやたらと頼まれた。あいつらは男になにかしてもらうことが当然と思っているらしいのだ。前のときは若い美人だったのでどちらかというと嬉しかったくらいであったが、今日は太ってでかいギョロ目のばあさんであるなんの得もない。
 京都についたのでしかたなく荷物をおろしてやったらばあさんは、やはり英語で機関銃のようになにかをまくしたてながら抱きついてきてきゃあきゃあ嬉しそうに降りていった。ああ疲れた。
 
第九話アフレコ 5/2/02

 連休なのに外出しあまつさえ新幹線で東京へ行く、と考えただけでめまいがする。そんなことはぼくには無理なのではないか。めちゃくちゃ混んでいたりしたら仕事とはいえつらくてとても耐えられないので引き返してビール飲んで全部忘れようと思っていたのだが、一応平日だったせいかのぞみはけっこうすいていた。
 アフレコのあと赤坂の居酒屋でだらだら飲み、さあ帰ろうと武田さんのジャガーに乗せてもらったのはいいのだがなぜか後部座席には左から山賀さん、松岡由貴さん、サエキトモさんにぼくと四人もぎゅうぎゅう乗っていて、サエキトモは落ち着きがないので隣に座っていると肘が顔面の方に飛んできたり頭突きをかまされそうになったり危険このうえない。そのうちどういう流れかサエキトモはいきなりぼくに向かって「口説いてんの? じゃあ付き合う?」などと言い出すのだった。ああびっくりした。うらやましいか皆の衆。


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