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『幽婚』 5/31/00

 ギャラクシー賞というのがあるそうで、テレビ番組のすぐれたものに与えられる賞らしい。WOWOWでそれの受賞作が何作か放映された。その中に『つげ義春ワールド』というのがあったのでなんとなく録画することにし、すぐその前にスペシャル・ドラマ『幽婚』というのもあって、得に興味はないもののついでに録画しておいたところが、これがおもしろかった。
 幽婚というのは婚約中の女性が死んだ場合、お通夜の代わりに遺体と婚約者が祝言をあげるというしきたりで、WOWOWのプログラムガイドによると中国福建省で実際にそういうのがあるらしい。
 主役は役所広司で、どういう話でどんな風によかったのか書こうと思っていたのだがやめておく。めちゃくちゃよかったものすごかった、とだけ書いておこう。おそらく今から見ようと思ってもビデオで出ることもないだろうし、たいていの人はまず見ることができないだろうから、そういう人たちがああどんなんだったんだろう見たいなあでもどうすることもできないなあとやきもきするのがぼくは楽しいからである。いやあめちゃくちゃよかった。あれを見ないでなにを見るのか。見てない人はほんとに残念なことをしたなあぼくは見たけど。
 『つげ義春ワールド』の方は全然おもしろくなかった。

横浜からやってきた謎のイラストレーター 5/28/00

 輝鷹あち氏から連絡があって、横浜からイラストレーターの高橋秀和氏が神戸までやってくるというので三人で飲みにいく。輝鷹さんも高橋さんも、星新一ショートショートコンテストを通じて知り合ったわけで、もうかれこれ十五年くらいのつきあいである。もう十五年にもなるのに、みんなあの頃とほとんど生活が変わっていないのが不思議。
 輝鷹さんは先日YAHOO!のオークションでセイコーの逆輸入ものの腕時計を買っており、顔を合わせるなり今見てきたのだが東急ハンズで同じ時計が二万九千円だったと言って大喜び。自分の腕時計を突き出して「てっちゃんええか。これは一万八千五百円送料込み。一万円以上の得」なにが得なのやら。
 あたりまえのように「ミュンヘン大使館」でビールを飲む。アサヒビアハウスがなくなってから神戸で飲むのはここばっかり。ここのウェイトレスには美人が多い。今日我々のテーブル付近の担当だった人もとても愛想のいい美人で得。なにが得なのやら。
 やはりショートショートコンテスト出身者で童話作家の山口タオさんは二年ほど前、奥さんの実家へ結婚の許可をもらいに行ったとき、もし年収を訊かれたら多目に嘘ついてごまかすのよと前もって釘を刺されていたので、童話など書いていていったいどのくらいの収入があるのかねと心配そうに訊ねられ、あっそうや多目に言うんやったと胸を張り「年収百万円くらいはありますっ」言ったタオさんもすごいが、それで娘を嫁にやった両親も両親で、それでええなら訊くなよというような話をしながら、閉店間際までげらげら笑っていた。
 結局高橋さんはぼくの仕事場に泊まってもらうことになり、一時半くらいまで飲んでいたのだが、明日は始発で帰るので四時半頃適当に出ていきますと言って寝てしまう。四時半くらいならぼくはまだ起きているかなと思いながら仕事をしようとしたはずなのになぜか八時頃ベッドで目を覚まし、そうそう高橋さん泊まっとったんやったと思って部屋をそっと覗いたら本当に消えていた。

いろいろとばたばた 5/27/00

 いろいろとばたばたしていた。

鶴橋で焼き肉 5/26/00

 一週間ぶりにやっと咳が止まったので鶴橋まで焼き肉を食べにいく。常々定期的に鶴橋まで焼き肉を食いにいかないと禁断症状が出そうになるのに咳のせいでなかなか行けず、やっと咳が止まってよかったなあという話ではまったくなくたまたまである。
 友野詳氏の誘いで総勢二十人くらいが集まった。ヤングアダルト作家を中心にイラストレーターとかゲーム関係者とか本屋さんとか。当初は適当にみんなで集まって飲みにいくだけの話であったのに、とりあえずなにか名目がいるかなというので「神坂一氏スレイヤーズ完結記念」ということにしたところどっと大がかりになってしまったのだそうだ。なんと焼き肉を食べるためだけに東京からもどっとやってきていた。あかほりさとるさんまで来ていた。
 しかしこの焼き肉屋、一年半ほど前にも一度連れていってもらって、この日記にも書いたことがあるがものすごい。よく村の公民館なんかにある脚を折り畳むタイプのテーブルの脚を、折り畳んだままべたっと畳の上に置き、さらにその上にカンテキ(七輪ともいう)を置いて肉を焼くのである。だから全員地べたに直接座って地べたに置いた食べ物を猫背になって食さねばならぬ。かっこわるいし食いにくい。とはいえそのような不自然な姿勢などどうでもいいほどものすごいことがさらに控えていて、なにかと言うとそれは激しい煙である。なにせ室内で焚き火をしているようなものであるため、食べはじめてしばらくするともう数十センチ先に座っている人の顔さえ見えなくなってしまい、吸う息はすべて煙である。天の光もすべて煙。ビールも肉もやがて煙となって、気が付けばカンテキの上で煙を焼いて煙を食いグラスから煙りを飲んで煙のおかわりをしているのであった。前日まで咳に苦しんでいた人間の行く場所ではない。なんとなれば友野さん宅に泊めてもらおうと徹夜覚悟であったのだが、やはり体調が思わしくなかったので終電前に梅田でリタイヤ。
 今日はぜーんぶ神坂さんのおごりであった。どうもありがとうございました。月に一回くらいなにかのシリーズを完結していただきたい。次は寿司かな。
 あれだけ肉を食ったら元気モリモリだろうなあと思っていたのに、明石で電車を降りたとたんふらりと眩暈がし、咳が止まらなくなり、帰って風呂に入ると熱が出た。山に出た里に出たもうええかはいはい。

         5   /19  /0


           0

。 5/18/00

 げの。
 き、だ。  咳の

咳 5/16/00

 三日ほど咳がとまらず          やっと今      少しだ
 が
 
                       



まだ咳がと 5/13/00

 昨日から咳が出続けていたが、今ちょっと咳がやん
                      を利用して

      のだがまだ、

咳が止まらぬ 5/12/00

 風邪はすでに治っていると思うのだが咳だけが止まらない。一日中咳ばかりしているのである。ふと咳をしていないことに気づく瞬間もあるのだが、虫さされの痒みに似て思い出したとたん咳が出はじめる。一度咳が始まるとどんどんそれはひどくなっていき、一分ほども続く頃には咳なのか痙攣なのかわからなくなるほどである。こうなってくると咳と次の咳との間に時間がかかるようになり、吸い込んだ息が咳となって放出されるまでに五分ほども要することがあって死にそうになる。
 たまに電話などかかってくると大変で、はい、と出たとたん猛烈な咳に見舞われ声が出せず、向こうがもしもし大丈夫ですかと言っているのに答えようとして咳が出る。会話にならない。こうしてキーボードを打っているのも次の咳が出そうになるのをこらえてのことであり、いったん咳が出はじめたら最後、しばらくはこんなことさえまったくできな

よい知らせ 5/11/00

 今日も早起き九時に起きる。どんなもんじゃ。しかし考えてみれば早く起きたからなにが偉いということもないのである。昨日の早起き会の人もそうだが、朝早く起きることが人としてすぐれているかのような錯覚をしている人というのはけっこうたくさんいて、たとえば朝の九時まで仕事をして昼過ぎ二時に起きたとすると五時間しか寝ておらず大変勤勉であるにもかかわらず、たまたまやってきた生命保険のおばさんに「あらあいい身分ですねえこんな時間まで寝てられるなんて」と言われてしまうのである。感じの悪い話である。私はテレビを見ません、とか漫画は読みません、と宣言することがあたかもかしこい人間であるかのように錯覚している嫌味な阿呆がときどきいるが、それに似たようなものではないか。しかしまあこのところぼくは早起きの人なので早起きは三文の得などと言っていばることも可能。
 とはいえ実際早く起きても特になんのよいこともなく、多少期待したりもしたもののやはり迷信かいやいや九時ではやっぱりまだ早起きと呼ぶには遅いのだろう明日からは六時くらいに起きてみたらなにかいいことがあるのではあるまいかと悩んでいると、よい知らせがやってきた。
「よい知らせを持ってまいりました」といきなりそのおばさんは言った。あなたはここ数日ずっと早起きしていて偉いので今月家賃はただです、とか、大塚のボンカレー一年分が当たりました、とか、メグ・ライアンをあげます、とか、田中啓文がまたしてもとんでもない大失敗をやらかしました、とかそんなことかなあと期待してしばらく話を聞いていたのだがちっともよい知らせはなく、これを読んでくれと渡されたパンフレットを隅々まで読んだのに特によい知らせは書かれていなかった。どうもあのおばさんは早起きしたぼくを讃えてなにかしてくれようとしたのではなかったようでパンフレットにはでかでかと「目覚めよ!」と書かれているのであった。今日は九時に起きたというのに。

早起き会 5/10/00

 驚いたことに早寝早起きはまだ続いている。今日も九時半くらいに起きてしまい、人としてとても偉くなったような気がするのである。私はこの時間すでに起きておりますよ、ということをアピールしたくて意味もなく狭いベランダにしばらくぼんやり立って道行く子連れの主婦を眺めたりするがそれだけでは満足できず絶対まだ寝ているであろうあの人やあの人に電話をかけ、え、まだ寝てたんですかへええーもう十時ですよ信じられませんなあ常識あるんですかとか言いたくてたまらなくなるのをなんとかこらえつつ仕事をする。ああ午前中に起きているだけでなく仕事をするなんてぼくは偉いなあ。
 誰かに誉めてもらいたくてうずうずしていると、驚いたことにわかる人にはわかるもんですなあ「早起き会」の人と名乗るおばさんがやってきた。十時半頃ドアベルが鳴り、普段ならクソ非常識なクソ早朝から訊ねてくるクソッタレのクソバカタレはどこの阿呆じゃボケナスじゃ呪い殺したろかと布団の中で唸るところだがすでにぼくは早起きの人であるから起きてシャワーもすんでいる。いそいそと出ていくと上品そうなおばさんが立っていて、いきなり「宗教ではないんですけどね」と言っていかにも新興宗教の人がくれそうな雑誌をくれた。宗教ではなく朝早く起きて集まる早起き会なのだそうで朝五時に起きて集まったりするらしい。寝る時間ですぞそれはアホと違うかと思ったが、いやあ早起きはほんとにいいもんですよねえとにこにこしていたら気に入られてしまってどんどん勧誘された。どう好意的に聞いても新興宗教にしか聞こえなかったがひたすら「宗教ではないんですけどね」とくりかえしていたので宗教ではないのだろう。ほななんやろ。
 この話、できすぎていてまた嘘かと思った人も多いと思うが「早起き会」のおばさんは本当に存在しており、本人によると「とてもいい感じの方なので、ぜひまた朝早くに寄せていただきますわね」だそうだ。五時に来るのかなあ。

『菊次郎の夏』 5/9/00

 しばらく前に見たのだが、このところなんとなく見るものが欲しいときに何度かくりかえして見ているのである。めちゃくちゃ気に入った。なんとなく寅さんシリーズを思わせる雰囲気もあって、それで「菊次郎」なのかと思ったりしたのだがどうだろう。
 寅さんと言えば、渥美清が亡くなったときぼくは寅さんの特別編というのを考えた。誰でも思いつきそうなことで、きっとやるだろうと思っていたのだがやっていないようなのでここに書く。
 これまでは年に一回か二回、ふらりと帰ってきていた寅さんがしばらく帰ってこない。どうしたのかなあとみんなが心配していると、これまでのシリーズで出たゲストの誰かが寅屋を訪れ、寅さんならどこそこで見た、みたいなことを言うのである。そこで夏休み、寅さんの甥のミツオ(字がわからない。わからなくてもいいじゃないか人間だもの。みつを)が、探しに行くことになる。
 ここからミツオは日本全国を歩き回り、あちこちでこれまで寅さんと関わりがあった人々と出会うのであるが、出会うたびにその人の出た回の名場面が回想シーンとして織り込まれていき総集編のような感じとなる。しかし寅さんは見つからず、最後にリリィ(だったかなあ。浅丘ルリ子の役)に会ったミツオは、寅さんならさっきまで自分のところにいたのだと告げられる。お祭りでにぎわっている神社へ寅さんを捜しに行くと、人が多すぎてよくわからない。すでに遠くへ行ってしまったのだろうかとあきらめかけていると、寅さんのテキ屋仲間のおっさん(しょっちゅう出てくる人)が、寅さんならほらあそこにと指をさす。見れば人混みの間にちらりと寅さんの後ろ姿があるではないか。ミツオは大声を出して呼び止めようとするが、人が多いのとにぎやかなので寅さんは気づかず、祭りの人混みに消えていく。しばらくしたらまた戻ってくると思うけど、とリリィがミツオに微笑んで、なんとなくこれから寅さんはリリィと暮らすのかなあというようなことをほのめかしつつ「終」思いついたとき、自分で考えておきながらものすごく感動した。絶対おもしろいと思うのだが。
 
『沈黙の陰謀』 5/8/00

 昨日WOWOWでやっていたので録画しておいたのだが、めちゃくちゃな話で大笑いした。もはや「沈黙の」というのは「セガールの」という意味になっているようで『チャップリンの独裁者』とか『ウディ・アレンのバナナ』みたいな感じ。
 以下ネタバレしますが、別に気にするような映画ではないと思う。
 『アウトブレイク』みたいな設定だが、セガールとその身内は最初からウィルスには感染しないという設定なので緊迫感は全然ない。格闘シーンはあいかわらずかっこよくてそうや合気道習いにいかなという気にさせてくれるのだが、元政府機関員で免疫学の権威であるという設定のセガールが、なんであんなに喧嘩が強いのかはよくわからず、ラストでは突然わかった特効薬であるインディアンの秘密の薬草の花びらをヘリコプターで撒き散らし、空から拡声器で「それを煎じて飲むと治ります」みたいなことを言う。撒くなよなあ。
 しかしまあ、セガールの娘役の少女がびっくりするくらい可愛くて、ちょろっとだけしかないけどセガールの格闘シーンとこの女の子だけでぼくは満足した。しかし撒くか。
 次作タイトル予想。本命『沈黙の奪還』対抗『沈黙の狙撃』中穴『沈黙の脱出』大穴『沈黙の国境』それはない『沈黙の結婚』

腹具合がどうも 5/7/00

 ダサコンで悪化させた風邪がなかなか治らず、ずっといやな咳が出ていたのだが、ここ二三日は腹に来た。里に来た山に来た野にも来た。ああ、なんか調子悪くてふえたこ日記調。
 猛烈な空腹を感じるのに、少し食べると胃が重くなって座っているのもつらくなるのである。しばらくするとなんともなくなるのだが、そうするとろくに食べてないせいですぐに腹が減り、ちょっとくらいならと思って食べるとまた死にそうになる。
 おかげであまり寝られず、夜はすぐに眠くなってしまうためこのところ早寝早起きの生活である。四時に寝て九時か十時くらいに起きる程度なのであまり早起きの実感はないが、それでも午前中に起きるのは久しぶりのことで、またこの季節暑くもなく寒くもなく風はいい匂いがして気持ちがよい。こういうとき自転車で走ると楽しいんだがなあしかし仕事や仕事せないかんいやしかし体の調子が悪いと仕事もはかどらないしもしかすると体の調子が悪いのは最近風邪気味だと思って運動不足に陥っているからではあるまいかきっとそうだ。というので自転車に数時間乗って汗をかき、帰ってきたら熱が出た。里に出た山に出た野にも出た。

民謡列車 5/6/00

 ちょっとした用事があって山陽電車という私鉄に乗ったのだが、連休の昼間にしてはすいている車内の雰囲気がなんとなく変である。なにかあったのかなと思った瞬間大音量で民謡が響き渡ったのでぎょっとした。しかもこれがものすごく下手なのだ。ときおり「タケダさんね、そこはこう出てーはいー、やのうて出てーええーはいいーい、ともっと上げて」とか師匠の手ほどきらしき声も入っていて、民謡教室かなにかをまるごと録音したものだと思われた。
 音の方を見ると、ドア付近に座っている中年女性の紙袋が怪しい。おばさんは気持ちよさそうに目を閉じている。あの紙袋にラジカセかなにかが入っているにちがいないなんと迷惑なおばはんだと思って見ていると、おばさんはふと目を開き、あれおかしいなといった様子で紙袋の中に手を入れ、そして耳の穴に詰めたヘッドホンを指で確かめ、かすかに頷いて納得するとふたたび気持ちよさそうに目を閉じたのだった。
 抜けとるぞー、と言いそうになったがおもしろいので黙って見ておく。ヘッドホンのジャックが抜けているのに気づいておらず車両内にぎんぎん響き渡っている大音量を自分だけが聞いていると勘違いしているのである。ぼくと同じ駅から乗り込んだ人々は全員ああそういうことかと納得しておばさんから目をそらす。おばさんはときおり、目を開けるのだが、誰も自分にはまったく注目していないのでやはり安心してうっとり目を閉じるのだった。
 やがて次の駅に停車し、乗り込んできた人達はどえらい民謡を耳にしてみな一様に立ちすくむのであるが、すぐに状況を把握しておばさんを見なくなる。そういうことのくりかえしが続いた。
 かくして乗客たちは三十分ほども下手な民謡とでははははあいややわー奥さんなに言うてますのんぎゃあははははみたいなおばはんの嬌声を聞かされ続け、そのうち降りる駅に着いたらしくばちっとスイッチを切った件のおばはんは満ち足りた表情でゆっくり去っていったのだった。
 直後、若い女性のグループの爆笑がきっかけとなって車両内はしばらく和気藹々となる。それまで気づかなかったが民謡が鳴り響いているあいだは、他の乗客にほとんど会話はなかったのである。異様な空気であった。しかし民謡の合間に交わされる民謡おばさんたちの会話も当然全員が耳にしており、女性グループの中のお茶目な表情をした美人が「そうかカワモトさんのとこは養子さんなんかあ」と言って車内の全員を爆笑させたりしていた。あと今日は来てない岸田さんの息子さんは大学全部あかんかったらしい。どないしはんねんやろねえ。さあなあ。
 おそらくあの人は今日あれほどの娯楽を提供したことに死ぬまで気づかないのだろうなあ。惜しいことだ。

最後のもののけ 5/5/00

 またしてもわけのわからない夢のメモ。
 この世の最後のもののけが佐賀弁望みをかなえてくれる。
 のだそうだ。でその横に、うきうきした文字で「長編いけそう」とも書いてあるのだがなんのことか思い出せない。佐賀弁望みって?

"FULL MOON" 5/4/00

『フルムーン』という写真集を買った。老夫婦が温泉に浸かっている風景ばかりを集めたものではなくNASAが公開したアポロ計画のときの写真を満載したものである。日本版は一年ほど前に新潮社から出版されていたようだがぼくは知らなかった。野尻抱介さんなんかは、発売日に買ったりしてるんでしょうなあ。言ってくれればよかったのに。公式サイトもあって、何枚かの写真が公開されている。あまりに感動したのでついに岩井志麻子さんの写真に換え、宇宙船から地球を見下ろしている写真をコンピューターの壁紙にしてみたのだが、なぜかものすごく悪いことをしたような気がしていやな動悸がおさまらず結局また岩井さんの写真に戻す。一瞬の出来心だったので許してください。

許しませんでしょう!! 5/3/00

 知人が、こんなん好きやろと言って持ってきてくれた。郵便受けに入っていたのだそうだ。
 コピーされたA4サイズの紙が五枚とB5サイズが一枚の合計六枚。いきなり大きな手書き文字で「私達を助けて下さい!」と書いてある。「私」は36歳の女性。大阪のクラブでホステスをしているとき、とあるレストラン経営者と不倫関係になったのだが、別れるときの条件として会社の共同経営者にしてもらったところが、相手の奥さんが「悪質な興信所を使い、精神的嫌がらせをして来」て、常備薬に「脳細胞を破壊しボケになる」薬品を混入され、神戸中央市民病院の医師にかかると「その医師は敵に買収」されており、近所では「狂暴者、酒乱、性的異常者、精神分裂、絶句するようなことばかりの噂を立てられ」嫌がらせは増すばかりで「ナイフでタイヤを切られたり、車の中に動物の内臓の干からびたものを入れられたり、ショウジョウバエが急にわいたり」異常なことが続き、ボストンに逃げたら、そこでもおかしなことは続いてホテルの部屋では「睡眠ガスですこんと眠らされ、翌日、目が覚めると頭のてっぺんから血が出ており」病院に行くと「拉致監禁されました」今では水道水にも薬が混入されるようになっていて「犯罪の証拠はいっぱいあり立証もできるのですが、その道のプロの人間が500人〜1000人ほどうようよと行動しておりもみ消されるのです」警察にも弁護士事務所にも「その道のプロの人間が私の住む住宅にも沢山住み904号室は穴で出入りできるようになっています」「薬物のガスを排気口とかから入れるため、換気扇のスイッチを入れなくても勝手に換気扇が動き出すのでおかしい、盗聴機は電気系統に付けてあると思う、エアコンとかファンヒーターとか冷蔵庫の裏とか素人の私には見つけられない。隣に住む904号の人はその道のプロです」「極悪非道の組織には医者部隊もあるし、科学部隊や、警察部隊や、国際部隊もあり」「ばらばら死体にして山に埋めたろかと○○の親戚の人に脅迫され」「子供は小学5年生ですが、急に学習能力が小学1年生に落ちおかしく感じていたら飼っている犬も異常を訴えだし水道水に混入しています」
 助けてくれ言うてる。

来客の連続 5/2/00

 朝から立て続けにいろんな人が来た。生命保険を勧められて断り、布団のクリーニングを勧められ断り、自動車保険の契約更新の話をし、水道水の検査をするというので浄水器なら買わないよと言ったら浄水器ではなくなんとかかんとか器だと言われ、やっぱりそんなもんいらんので帰ってくれと頼み、神の意志と恵みについての話も断ったあと空耳博士がアイアン・ジャイアントを見た帰りにやってきて宅配ピザを生まれて初めて注文しこんなもんが二千二百円もするのかと驚き黙々とピザを食べなぜかビデオやテレビばっかり二人してひっそり眺め、博士が帰ると今度は三階の友人が来てこっちはテレビがついていてもまったく見ずにいろいろ喋り、気がついたら朝方だった。疲れた。

ハイマール祭 5/1/00

 友人の家に行くため阪神間の私鉄の駅を降りると、ちょうどお祭りの最中らしくにぎやかである。混雑して身動きできないというようなことはないだろうなと心配になりながら駅舎を出ようとしたとき、驚いたことに足下に屈み込んでいた初老の男性が、ぼくのズボンの裾をがっと握り「立って歩いてはいかんっ」と怒る。ふと見れば、あらゆる人々が四つん這いになってしゃかしゃかと動き回っていて、ああなるほど這い回る祭りかと気がついた。
 いっしょに這い回りながら、案内役らしいその男に聞いたところによるとハイマール祭の日は(仕事に使えそうなので削除)さもないと人でないものが生まれる。
 というような夢を見た。おもしろいのは、人が這い回っている祭りの夢を見てからハイマール祭という名前が浮かんだのではなく、夢の中で、まず最初にその名前があったことである。なんとも不思議。


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