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沢田研二が山盛り 5/31/99

 先日、ぼくの『大久保町シリーズ』を読んだ感想だと言ってとある方がミニ・ディスクをくれた。感想文を朗読したのを録音したものかと思いちょっと驚いていたのだが、ぼくはMDプレーヤーを持っていないので三階の友人のところへ行ってかけてみてくれるよう頼む。本の感想が入っているそうだと言うと友人はなんか怖いなと顔をひきつらせつつディスクをセットして、流れ出した音楽を耳にした瞬間ぼくと友人は同時に叫んでいた。「あっ。『太陽に吠えろ』や!」
 しかしそれは太陽に吠えろではなく沢田研二の歌だったのである。同じバンドなんですねこれは。岸辺一徳がベースだったり。それから全19曲、めいっぱい沢田研二の歌が入っていた。ああこの曲はちょうど中学二年生くらいの頃やったなあ、ああこの歌は好きやなあ、ええ歌やなあこれ、トキオは入っとるんかなあ、などとビールを飲みながら一通り聴く。トキオは入ってなかった。沢田研二という人は今でもなんか、しゅっとしとってええ雰囲気やなあと二人しみじみしてしまったのだが、しかしなぜ大久保町の感想が沢田研二なのかは結局わからなかった。でも沢田研二山盛りのディスクというのはなんとなく嬉しい。そのうちMDプレーヤーを買おうと思う。
 酔ってしまったので仕事はせずにそのまま寝ることにするが「落ちてーいくのもー幸せーだよとー」というフレーズがやたら耳について離れない。落ちていきたくなんかないのにな。

女子高生に囲まれた 5/30/99

 明石市にある県立清水高校の文芸部がインタビューしたいと言うので、のこのこと近所の図書館まで出かけていく。最初の電話で話したのは女の子だったが「文芸部の女の子」なのであるからこれはもう絶対「不細工で変なしゃべり方のアニメおたく」と決まっているわけで、いいや絶対決まっているわけで、当然不細工不愉快嫌悪感を覚悟して行ったところ、実際に会った文芸部の女子高生たちは意外にも可愛かったのである。びっくりした。おおあんたもびっくりしたかそうかそうか。
 インタビューの内容は他愛ないものだったのだが、可愛い女子高生に囲まれているという状況は実によろしい。しかも全員ぼくの大好きな「制服」姿なのである。しかも眉が細かったり髪の毛が変な色だったりということもない。しかもちゃんとしゃべる。漢字も書ける。純真な目をきらきらさせた清潔な正統派女子高生に囲まれたのだ。えらいことではないか。
 作家になったら女子高生にきゃーきゃー言われてサイン頼まれたりするんですかねえ楽しみですねえとデビュー前、担当編集者に言ったことがあって、まずそんなことはあるまいよおまえ馬鹿ではないのかという答えを聞いてがっかりしたものだったが、ついに夢は現実のものとなった。ひょひょひょどうじゃうらやましいか。

天満で添削 5/29/99

 他の人の書いた小説を読み、それを大勢の前で、しかも書いた本人もそこにいるというのにボロクソにいちゃもんをつけるという仕事をする。終わってから袋叩きにあったり必ず呪ってやると赤い目で睨まれたりそれでも人間かと糾弾されたりすることもなく、なぜか感謝され中華料理までごちそうになった。先週は田中啓文氏がやはり同じことをし主催者のおじさんに「あんたは添削の天才や」「(訳あって削除)はマザコンや」「(訳あって削除)はあかん訳あって削除や」みたいなことをひたすら言われて誉められていた。不思議な世界である。

雑用に追われる 5/28/99

 なぜかめちゃくちゃ忙しい。日曜日まで忙しい。いらいらしいろいろ腹も立つのだが、昨日に引き続いて、てっきりボツになったと思っていたまた別の短編が生き返ってきたので今日もめちゃくちゃごきげん。気分はトロピカル。

一周年 5/27/99

 ホームページ開設一周年おめでとう、というようなメールを数通いただき、ほんとだ丸一年だと気づいた。いや今日ではなくて昨日。よく続いたものである。この一年日記を書きながらいろんな人にささえられ、などということもなかったすべて俺の手柄である。はっはっはっ。てっきりボツになったと思っていた短編が生きていたので今日はごきげん。

『スター・ウォーズ』を封印 5/26/99

 先日買ったエピソード1のノヴェライズだが、目に付くとどうしても手に取ってしまいぱらぱらめくりそうになるので本棚の見えにくいところに押し込んだところ、やはりそこから「ここにあるよーここにあるよー」という声が聞こえ吸い寄せられるように何度となく取り出しては手に取り無意識に最初の「タトゥイーン──」というのを読みながらはっと気づきおお俺はいったいなにをしているんだ読んではならぬ読んではならぬと冷や汗をびっしょりかきながらふたたび本棚の奥へ押し込むということをくりかえす。
 前回ここにノヴェライズを買ってしまったが読んではならぬのだということを書いたところ、それを読んだ数名の知人から電話やメールがあって、実はね、あれはね、というようなことを書かないまでもおぼろに匂わせるようなことを教えられた。はっきり言って不愉快である。ぼくはどんな映画でも本でも、先に読んだ人からあああれは実はね、とそれがどんな些細なことであれ教えられるとめちゃくちゃ腹が立つのだ。それがあなたスター・ウォーズですよ。今度やったら呪い殺すのでみんな気をつけるように。今後俺の前でスター・ウォーズの話はするな。ああ誰よりも早く観てしまい、観てない人にちょろちょろとネタばらししたいなあ。
 と、思いつつふと見るとキーボードの横には『スター・ウォーズ』のノヴェライズがあるしかも開いているいいいつのまにいったい誰が。危ない。危なすぎる。そこで、映画を観るまではこれを封印することにした。サランラップできっちりと包み、その上からニチイの広告で包み、さらにジュンク堂のビニール袋に入れ、ATOK12が送られてきたときの段ボールの箱に入れ、クローゼットの奥の電気毛布の箱の下に入れた。完璧だ。難点は、数時間おきにいちいちクローゼットまで行って箱を開けたり紙を剥がしたり、またあとでサランラップをかけなおしたりするのがとても面倒だということである。

半年ぶりに散髪した 5/25/99

 さっぱりした。
 
『バトル・ロワイアル』 5/24/99

 一日なんにもせず『バトル・ロワイアル』(高見広春/太田出版)を読んでいた。
 中学三年のクラスで、という設定にぼくは弱い。誰でもこのあたりの年齢というのは思い出深いものなのではあるまいか。ぼくはそれが人一倍強いのだ。詳しくはたぶん一生書かないと思うがとにかく中学三年のときのクラスにはものすごく思い入れがある。それが重なるので『バトル・ロワイアル』みたいな設定にはめちゃくちゃのめり込めるのである。
 「不愉快」という評もあったらしいが、全体を覆う少年誌のコミックや日本のテレビドラマみたいな、良くも悪くもチープな雰囲気がかえって中学三年生という年頃の感覚に合っていて、リアリティが増しているようにぼくには思えた。
 一気に読んで、ああおもしろかった、と満足したのは久しぶり。

明石原人祭り 5/23/99

 明石市大久保町で毎年行われているということは知っていたが一度も行ったことのなかった奇祭「明石原人祭り」に今年は行くことになった。野尻抱介氏が一度行ってみたいと言うので、ではみんな誘って行きますかということになったのである。召集をかけてもさすがにみなさんいやな予感でもするのか臭い缶詰のときほどは集まらず、ぼくと野尻さんの他は田中啓文氏、小林泰三氏、喜多哲士氏のみ。これでは寂しいというので「明石原人になんとなく興味のある会」の「原人」さんに声をかけたところ、その会員他京大SF研究会のみなさん合計たった四名もいっしょに行くこととなり、総勢9名がJR大久保駅に集合した。
 会場までのバスがあると思っていたのにどうやらしばらく出ないらしく、ほなタクシーやなあと言っていたら京大SF研の四人はなにやらごそごそと話し合いをしてはあちこち走り回り、それを見ながら我々は十五分ほど駅前でなんらかの展開を待っていたのだがなぜかなにごとも起こらず結局タクシーで行く。そののちもこの四人は、なぜかことあるごとに頭を突き合わせてはごそごそと相談をしていた。そのシチュエーションというかキャラクターは大変おもしろかったので、どこかで使おうと思う。なんにしろ京大SF研の人たちにはいろいろと気を使わせてしまったようで悪いことをした。
 原人祭り会場をあとにして、バスで大久保駅に戻ると野尻さんが楽しみにしていた厳松堂書店は休みで、やはり京大の四人はここでもシャッターの降りた厳松堂の前でごそごそ相談を始めていたがそれはともかく明石まで出てたこ焼き(明石焼き)食べましょうということになり魚の棚でたこ焼きを食べビールを飲みアホ話をし、居酒屋に行ってビールを飲みアホ話をする。
 一番印象に残っているのは映画の話になったときの小林さんで、その映画は途中まで見たがおもしろくないのでやめたというのを聞いたとたん突如嬉しそうに「ああそれそっからがおもろいんですよ。でかい昆虫が人間をこうね、両側からぶちぶちぶちゅーっと引き裂いて腕が取れるんですよ。血がびぢびぢびぢいっと筋肉なんか糸引いて」「あんたえらいいきいきしはじめましたなあ」小林さんそれにはかまわず「ほんでね。でっかい虫がでっかい爪で女の人が背中から腹まで串刺しにされてその女の人腹の方からその先が突き出るんですよぐふぐふぐふ。それを地面に突き刺して、女の人は痛い痛い言うて地面にピン留めされたみたいになってもがき苦しんでまだ生きてるんです」「あんためちゃめちゃ楽しそうですなあ」小林さんそれにはかまわず「ほんでね。内臓がどろどろっとそれでこっちは骨が見えて皮下組織の黄色い脂肪のぐふぐふぐふ」あの人へんやで。
 たこ焼きはおいしかったしアホな話はおもしろかったし、ああ楽しかったと。
 なんですと肝腎の祭りのことが書いてない。そうかあ? まあこんなもんですわ。

えらいことをしてしまった 5/22/99

 してはならぬと心がけていたにもかかわらず、天満のジュンク堂へふらふらと行った結果やらかしてしまった。非常に危険な状態である。なにがてスター・ウォーズのエピソード1のノヴェライズを買うてしもうたんですがな。買うたら読んでしまう。映画を見るまでは、すべての情報をシャットアウトしておきたいというのに、それでも続々と情報は耳に入ってくる。ニュース・ステーションを見ていてスター・ウォーズの紹介を細かく始めたときなど、どわっと叫んでテレビのリモコンを探し画面を見ぬよう虚空を眺め音声が耳に入らぬよう「あうあうあうあう」と叫びつつスイッチを切ったほどなのに、本は買ってしまった。読んではならぬ。しかし手元にはある。非常に苦しい状況を招いてしまった。
 ハードカバーはなんと表紙に三種類のバリエーションがあった。中身はまったく同じである。しかも横には文庫版まで置いてある。当然文庫は安い。さあどれにするか。まず思ったのは全部買うということであった。いやしかしいくらなんでもそれはもったいない。とはいえ普通の本を買うのとちがってこれはとにかく持っておきたいわけであるから文庫はよくない表紙もださい。やはりダース・モール(うわあ、なんでこんな名前知っとるんや。なんにも知らない無垢だったあの日がなつかしい)か。しかしおそらくはこの表紙が一番人気であろうから、のちのちの値打ちを考えるとここは一つ外して子供のアナキンか、クイーン・アミダラの方はどうだろうかと悩みに悩んだが結局ダース・モールを買った。やっぱりかっこええからなあ。
 しかしうわあめちゃくちゃ読みたい。だがしかしぼくは知っているのである。先にノヴェライズを読んでから映画に行くとものすごく損をした気になることを。『帝国の逆襲』のときもやってしまった。原書のペーパーバックを買ってきて、適当に読んだところなんとなくわかった気になり、それでも気になり翻訳を買ってきて読むと全然違う話だったため自分の英語読解力にひどく驚き、そのあとで映画を見たのでみーんな知っている話だったのである。あの失敗は二度とくりかえすまい。そう思ってやはり『ジェダイの復讐』もノヴェライズが出たらすぐに読んでしまい映画を見たときはレイアがアナザー・ワンでルークの妹であることなんかばっちり知っていてちっとも驚けなかったのである。エピソード4から6の三部作のノヴェライズは、小説としてもめちゃくちゃおもしろかったような記憶があるのだが、今回のもおもしろいのだろうか。おもしろいのだろうか。おもしろいのだろうか。おもしろそうやなあ。
 ああ、読みたい。読みたくない。

できたできた 5/21/99

 きしざる工務店の仕事完了。はっはっは。やっとできましたなあ。長い道のりであった。ふと空を見上げるとああ空とはあのように青かったのだなあ、息を吸い込めばああ空気とはこのようにみずみずしく澄んだものであったのだなあ、犬を裏返せばああこのアホ犬はいつ裏返してもつくづくアホやなあ、となにをしてもすがすがしい。ああ嬉しい。あっはっはっはっ。やんまちょうちょにきりぎりすにはったはた。ぶんぶのせなかがびいかびか。

おお 5/20/99

 おおもう二十日。なんともう十五日は過ぎていたのか。わしは今月十五日にはなにをしておったのかとふと見ればどろーっとしておったと書いてあるどろーっというのはどんな状態じゃアホちゃうか。
 しかし締め切りは先月末だっだのではないかもう二十日ですぞ二十日えらいこっちゃがなこんなん書いとう暇あれへんがなと思うのになんでか友達がケンタッキーフライドチキンとビール持って遊びに来てしまうのだ。

知的な吉川ひなの 5/19/99

 知的な吉川ひなのに言い寄られるという夢を見た。知り合いに、吉川ひなのにちょっと顔立ちの似た美人がいるので夢の中ではその子と吉川ひなのがごっちゃになっているのだが、しかしそれはたしかに吉川ひなので、しかも知的で、それが言い寄ってくるのである。実にいい夢であった。
 話すことも態度もあまりに知的で聡明な感じだったのでめちゃくちゃ好きになってしまい、そうかテレビで喋っているあれは、すべて演技なんだねと訊ねると、そんなことはあたりまえで他のタレントもみんな本当はものすごく賢いのだと教えてくれる。馬鹿が必死で賢く見せようと偉そうにクイズの司会なんかをして実は台本を読んでいる、というあれはすべて演技なのかそれはすごいなあ、と驚いているとサッカー選手も野球選手もそうだと言う。みんなとてつもなく馬鹿そうに見えるけど、とぼくが言うとひなのちゃんはぼくの肩の上に頭を載せて、それだけ演技がすごいのよ本当はみんなすごく頭いいんだから、と言うのであった。巨人の元木も? と訊くと、あの人は球界一賢いかもしれないと言った。
 起きると、それまで特に興味のなかった吉川ひなののことが気になるから不思議である。あと元木も。

早朝の客 5/18/99

 朝、置き薬の人が来て起こされる。いやいや。置き薬の人という美人がベッドまでやってきて「もう朝よ」とかなんとか石鹸の匂いをさせつつ起こしてくれたとかそういうことではない。そんなんだったらいいのになあ。郵便小包が届く予定だったので、呼び鈴が鳴ったのをきっちりそれだと思ってパジャマのまま出たら置き薬置いてくださいというおっさんだったのだ。前にも来たけどというと、それとは違ううちは漢方薬だから大丈夫と、なにが大丈夫なのかさっぱりわからなかったが置いておくだけでいいそうなので置いておくことにする。薬屋さんらしく、ちゃんと紙風船もくれた。しかし置き薬の会社というのはいったいいくつあるのだろうか。すでに仕事場には置き薬の箱が七社分、七つある。一度も使ったことはない。
 もう一回寝ようとベッドに入り、うとうとし始めたら呼び鈴が鳴った。今度こそ小包に違いないとやはりパジャマのまま頭ぼっさぼさで出たら、今度はうおっと思うような可愛い女性で、近所の子供会で塗り絵を配っているのだが要りませんかさしあげますよ、と言う。顔を洗ってぴしっと服を着ていたら中に入ってもらってお茶でも飲んでなかよくなってこれからいつでも遊びに来てくださいいいんですかいいですともじゃあお言葉に甘えてあらもうこんな時間いいじゃないですかいけないわほらもっとこっちへいやんエッチというようなことも充分に考えられたのだが、パジャマに頭ぼさぼさでは誘えない。塗り絵も断って帰ってもらう。
 郵便小包は結局来なかった。

電話が多かった 5/17/99

 起きてしばらくして、さあ仕事をしようと思っていると田中啓文氏から電話がかかってきてだらだら話す。一人では寂しいので天満までついてきて欲しいとかそういう話。しょうがないのでついていってやることにする。電話を切って、さあ仕事や仕事やと机に向かったとたん今度は主婦をしている友人から電話がかかってきた。子供の弁当箱の蓋の横のひらひらしたぱちっと止めるとこが外れてしまったのだがどうやったら元通りはまるのか教えてほしいと言う。わからないと答える。そもそも子供の弁当箱の蓋の横のひらひらしたぱちっと止めるとこ、というのからしてわからないではないか。いったいそれはなんやねんなと詳しく説明を二十分くらい聞いていたところああ入ったわ。ありがとうほなな。と電話は切れた。少し仕事をするがはかどらず、腹が減ったので飯を食い、どろっとした頭でさあ仕事や、と思っているのにまた電話。中学校時代の友人からで今から遊ばないかという誘い。もう十時を過ぎているではないかとさすがにことわったがそのあと最近どうなんよみたいな話をだらだらとする。そろそろ切って仕事に戻ろうかなと思ったあたりでキャッチホンが入る。野尻抱介氏からで、明石原人祭りに行きましょうという話。そののち小林泰三はあれはもしかするととんでもない鬼畜ではあるまいかおもしろければあのおっさん犬の死体でも猫が腐っていても突っついて裏返して中のどろどろ見せてまわりまっせというようなことをだらだらと話す。それから少し仕事をしたがやっぱりはかどらず、ビールをがぶ飲みして死んだように寝る。

だらーっ 5/16/99

 疲れたままだらーっと仕事をする。あんまり進まずだらーっと寝る。だらーっとした夢ばかり見る。

どろーっ 5/15/99

 疲れたままどろーっと仕事をする。あんまり進まずどろーっと寝る。どろーっとした夢ばかり見る。

徒労 5/14/99

 徒労天狗がやってきた。この三日ほどがまったく無駄となる。家に帰れば裸の美女とごちそうが待っているというとき会社の上司に誘われて飲みに行き、説教され罵倒されたあげく上司は酔いつぶれて飲み屋の払いを持たされ、終電がなくなりタクシーで帰るともう美女はおらず今度いつ来るかわからず、時計を見ればもう出社時刻であるというような気分である。めちゃくちゃ疲れたので寝る。

血だらけ 5/13/99

 髭を剃っていて耳たぶがちくっと痛かったのだが、気にせず放っておいたところ知らぬ間に大量に出血していた。仕事の電話がかかってきたのでしばらく話し、受話器を戻そうとしたときマウスパッドの上に血がとろりと滴ったのでぎょっとする。なんで電話機から血が出るのだろうとそのときは思った。編集者のTさん怪我したんとちゃうか。そんなアホなと思って自分を見るとシャツが真っ赤である。今日は暑いなあと感じていたのだがそれは汗ではなく血であったのだ。見れば左半身は血塗れで足下には血だまりができている。まーるで、血だまりで、し、たと口ずさみながらタオルを取りに行こうとしたら貧血のせいか足元がふらつき目の前が暗くなる。朦朧とする意識の中、膝まで血に浸かりながらなんとかティッシュペーパーで傷口を押さえとりあえず止血したが下の階の人には天井から血が降ってきて困ると苦情を言われ、大急ぎで外の階段へ流したところ表の道を歩いていた小学生三人が血に流されて溺れそうになりあわてて助け出し、親まで出てきて子供を殺す気かと怒るので平謝りに謝っていると血は近所の病院にまで流れていったようで、どたばたとやってきた医師団がこの血はあんたの血かそうかよかったよかったこれであの女の子の命が助かるというのでいっしょに血の海を泳いでついていくと病気の女の子というのは年の頃なら十七八はっとするような美人で脚もすらりと美しく、輸血したとたんそれまでの弱々しい姿が嘘のように元気になり命が助かったのはあなたのおかげお礼にどんなことでもいたしましょうと顔を赤らめて言うので本当にいいのかなと思ったけどじゃあお願いしますとバンドエイドを買ってきてもらった。

早朝の電話 5/12/99

 朝六時すぎに電話が鳴って目が醒める。放っておこうとしたのだが、大きな男の声でなにやら留守番電話に話しかけている。なんとなく切迫した感じであったし時間が時間なのでもしや緊急事態が発生したのではないかと思って電話のところへいくとちょうど用件が終わった。再生してみると内容は以下のとおり。
 「えーとどうもあの東灘区の岩本です。昨日、お仏壇を買うことになりました。お仏壇といっしょに、二十万円の阿弥陀さんも買うことになりました。家に帰ったら、おばあちゃんが阿弥陀さんはいらんと言うのです。それで、阿弥陀さんはことわります。よろしく」
 朝の六時から阿弥陀さんをことわるのはやめていただきたい。

ばりばりやるつもりが 5/11/99

 きしざる工務店の仕事も終わらないし日本一本屋で見つけにくい雑誌『電撃hp』のエッセイもやらなくてはならないしで今日は早めに夕食をとり、早めに風呂に入り、ちょこっと本を読み、古畑任三郎を見てまあまあやなあと思い、さあやるぞというところで友人がどやどややってきてめちゃくちゃビールを飲み始めたのでいつ寝たのか覚えていない。

ファイア・スターター 5/10/99

 精神科の患者で不気味な人がいるという話を聞いた。どこにいてもなんにでも火をつけてしまうのだそうだ。そこで持ち物をすべて取り上げ、衣服も脱がしてパンツ一枚だけの姿で個室に閉じこめたところ、やはり毛布やシーツが燃え上がる。なんらかの方法で火を起こしているらしいのだがそれがわからない。気持ち悪くなってパンツも脱がし燃えそうなものはすべて部屋からなくしてしまったら今度は壁や天井が焦げるのだった。もしかするとファイア・スターターなのではあるまいか。そのような超能力が実際に存在するのだろうか。と、そこで部屋にビデオカメラを設置し24時間監視することとなった。期待と緊張に満ちた観察を始めて数時間、ついに男が行動を起こした。男は自分の尻の穴から100円ライターを出して。

できたできた 5/9/99

 やっと短編できあがった。30枚くらいと言われていたので40枚くらい書こうと思ったのだが結局24枚。まるまる三日はかかった。もっと早く書けんもんかなあ。なんの仕事なのかはっきり書かないのは出版社からそういうことを秘密にするよう言われているのかというご質問を受けたがそうではない。ボツになる可能性が高いので、はっきり言ってしまうとあとでかっこわるいからである。頼むからボツにせんといてくれ生活が苦しい。ほっとするまもなくまだやらなければならぬ仕事は山積み。貧乏暇なしを身にしみて思う初夏の朝。

気持ち悪い 5/8/99

 こんなもん書いてもいいのかなあと思いつつ短編を書き進める。大好きな人を殺さなければならないような気分である。書いていて実際に気分が悪くなったり体が不気味にだるくなったり変な声が後頭部から聞こえてきたり戦士として召還されそうになったり地軸の傾きのせいでこけそうになったりする。それなのに途中まで書いたのを読み返してみるとこれが全然おもしろくない。不思議だなあ。

いよいよえらいことになってきた 5/7/99

 いよいよえらいことになってきたなあ。

えらいことになってきた 5/6/99

 えらいことになってきたなあ。

ロスト・ワールド 5/5/99

 昨夜、夜半過ぎに友人が訪ねてきて結局明け方までうだうだしていたためそれから少し資料を読んだりし、寝たのはいつかわからないのだがとにかくかなり明るかったのはたしかで、にもかかわらず午前中に目が醒めてしまい今日は一日調子が悪かった。仕事に集中できず、一時間ほど悩んでは休憩と称して少しずつビデオで『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』を観る。ストレスでこちらの感受性が麻痺していたせいか細切れに見たせいかテレビの小さな画面だったせいか、とにかく恐ろしくつまらなかった。いろいろと噂は聞いていたもののこんなにおもしろくないとは思わなかった。これなら二三日前に見たジャン・クロード・ヴァンダムとロッドマンの『ダブルチーム』というやつの方が、徹底的に馬鹿馬鹿しくてまだ笑えた。話は馬鹿でもロッドマンはかっこよかったし。
 そんなことをしているから仕事がはかどらないのではないかと思ったあなたは正しい。でも休憩したり食事をしたりというときは、本読むかビデオ見るかするからなあ。仕事をちゃんとやっているときほど読書量とビデオを見るのは増えるのではないだろうか。よし。では今から「怪奇! 吸血人間スネーク」でも見るとするかなんやそれ他にないんか他に。

不気味な資料 5/4/99

 とある友人に頼んでいた資料を受け取るため三宮まで出る。誰でも買える本なのだが専門書なので探すのがややこしく、頼んで買ってきてもらったのである。恐ろしいことに七千円以上もした。こんなに高い本を買ったのは初めてではないか。これからもいろいろと使えるかなあと考えて買ってしまったのだが、その分野に関係のない人間にとってこのような本を読む機会というのはなかなかなく、その冷静きわまる文章は内容が内容だけにあまりに異様でけっこう笑える。
 本をもらったあと食事をしながらその友人にあれこれと通常の生活では考えられないきちがいじみた質問をし、今書いている短編のあらすじを話したところ、そのような話に自分は絶対に関わり合いたくないので、資料を渡したことや話をしたことは秘密にしておいて欲しいと言われた。そういうわけで今回買った本のタイトルや内容については詳しく書けないのである。気になりますか。ヒントは(訳あって削除)の(訳あって削除)で(訳あって削除)を(訳あって削除)
 しかしロケット工学の本を数冊資料にして書いたのがぼくの場合「大阪ヌル計画」だったわけで、せっかくの資料ではあるもののほとんど作品に反映しないだろうことはまずまちがいない。七千円以上もしたのに。

同時に二つ 5/3/99

 起きてごそごそしていると同業者から電話。例の短編はできたかと訊くのできしざる工務店の仕事が終わらずそっちはまだまったく手もつけていないと言うとそういう言葉が聞きたかったのだめちゃくちゃ安心したと言って喜んでいた。そんなことでいいのか田中啓文。
 そのあと、つらつらとアイデアをこねくりまわしているうち書けそうな気がしてきたので、そのままいっきに四十枚書く。今ぎょっとしたかははは実際には五行書いただけである。あと数行はこのまま書いていけるのだが、その先を書き続けるにはどうしても資料がいる。学術書を含む少なくとも七十六冊の本を参考にする必要があるのである。どう考えてもある程度の時間がかかる。というわけで、きしざるの方が少し停滞してしまうという由々しき事態に陥ってしまった。
 しかしどうがんばっても一度に二つのことを同時にすすめるということができない。昔からそうなのだ。だから女の子とのお付き合いも二股をかけたことがない。ほとんどない。やむを得ず二股かけるようなことになってしまう場合は、両方の女の子にちゃんとその旨伝えた上で二股をかけたので、結局両方別れてしまったのだった。そらあたりまえやと思うでしょ。ところがそのときは思わなかったのだなあ。なぜ思わなかったのかはわからない。そういうことを二回した。一回したらわかるやろーと思うでしょ。ところがそのときはわからなかったのだなあ。なぜわからなかったのかはわからない。困ったことだ。

終わらん 5/2/99

 まだ終わらんしかも前の方にやり残していた部分を大量に発見したりしてどんどん遅れてしまっていらいらし眠くてコーヒーばかり飲んでいるとやたらと腹が減るのだが食っても食っても下痢をするのですぐにまた腹が減り胃も肛門も痛くてたまらず痛みに耐えきれなくなって少し横になったりしたときには短編のプロットを考えたりしているのにちっともいいのが思いつかずこれも間に合わなかったらどうしようかと怖くなって結局四六時中この世のあらゆるものに対して怒ってしまうのだ。かわいそうなのはよだれである。それもこれもなにもかもがあの電話のせいじゃ。

いらいらする 5/1/99

 ちっとも進まんいらいらする全部あの電話のせいじゃ。


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