真夜中に焼肉を大量に摂取した直後はかなり治ったように思っていた風邪が、仕事場に戻ってからどどっと悪化した。今日はガイナックスのイベントが大阪であって、チケットももらっていたのだがとてもいけそうにない。どうしよ、と思いながら気を失うように寝てしまい、蛙でいっぱいのプールに首まで浸かりながら法に基づいてウーピー・ゴールドバーグと最低二回以上セックスしなくてはならぬ制限時間以内にできない場合は相手がローレンス・フィッシュバーンに代わりますとか気色悪い夢ばかり見ていると電話が鳴って田中啓文がライブに行こうと言うので風邪引いて死にそうやねんほなあきませんなあとしばらく話をしたのだがあれは夢だったのか実際あったことなのか。
ちゃんと仕事 3/29/02
アフレコのために東京まで来ても、翌日はへとへとでいつもまっすぐ帰るだけだったのだが今日はちゃんと編集者に会って仕事する。いやまあごはん食べただけだけど。
新宿駅で待ち合わせたのだが携帯電話がなければ絶対に会えなかったはずで、ついに携帯電話の恩恵に浴することができたと悦に入る。八百円出したかいがあったというものである。電話が鳴って「あのー、今だいたいその場所に来てるんですけどー」と電話と背後から同時に聞こえたのでその背中を眺めつつ「あー、今ちょうど真後ろに立ってますわ」みたいな。
せっかく新宿の有名なお店を予約してもらっていたのに、昨夜遅くの焼肉が喉から尻まで詰まっていて、おいしいとかどうとかまるでわからない。空腹であってもあまりそういうことはわからないのにこんな状態では人気のオムライスも名古屋のキシザルもおんなじである。もったいないことをした。
アフレコ第四話 3/28/02
一昨日あたりから風邪を引いてしまい、できるだけ動かないようにしていたのにますますひどくなってしまう。普段なら、ちょっと走ったらましになるかなと考えてごんごん走ったりしていっきに悪化させるところを東京行かなあかんからと自粛したのである。自分でも偉いなあと思うのに結局ひどくなるとはどういうことか。
薬を飲んでごまかし、できるだけ動かないよう気をつけていたのに途中新幹線が地震のせいで緊急停車して停電して真っ暗になって空調も止まって空気が淀んだりアホなガキが騒ぎ出したりしてどきどきしたまま赤坂のスタジオまで行く。
風邪のせいで頭はどんよりしており、今回は自分の書いたネタもそこそこあったというのにまたしてもよくわからないままアフレコは終わる。ちゃんと絵や音楽がついたらきっとおもしろくなるのだとは思うけど。アニメやゲームのパロディは、元を知らないのであいかわらず全然わからんのだった。
ガイナックスに一度戻ってから、武田さんと山賀さんと三人で焼肉。食い始めたのは十二時ごろである。普通夜中に焼肉なんか食わんやろと思うのに、それを不思議がるぼくをさらに不思議そうに見る両氏がぼくにはとてつもなく不思議であった。毎週東京では腹一杯になる。
モノマネの番組 3/26/02
モノマネの番組をやっていたので見た。けっこう好きなので、見つけたらそのままだらだら見ることが多い。今日やっていたのはたぶん、コロッケがパッチモンに引き抜かれたせいでいなくなってしまった元祖の方で、パクって真似した方の番組よりは数段おもしろいとは思うのだが、それでも最近はかなりつまらなくなってしまった気がする。新しい人も次々出てきておもしろい人も多いのだが、この手の番組もそろそろ終わるんかなあと思ったりした。それはともかくずーっと出ていて、全然似てなくて太陽系凍りつきそうなほどつまらないのに客席のサクラはわあわあ騒いでなぜか審査員の点数も高い世にも不自然なクリタなんとかという人(我孫子さん口調でさあみなさんごいっしょに)あれはなに。ずーっと前からいっつも不思議なのである。ぼくにはわからないなにか特別なネタなのだろうか。あれは、なにがおもしろいの?
楽器修理職人独立記念宴会 3/23/02
先日店開きをした楽器修理職人の独立を祝い友人が集まって宴会を開く。場所は近所の焼肉屋。狂牛病騒ぎからずっと肉はすべて半額なのでしばしばお世話になっている。死ぬほど食べて飲んだが一人二千円ちょっと。元々安い店なのだがやはり肉半額というのはありがたい。
しかしまあ友人の独立を祝う、などと言うと友達思いな関係みたいだけど結局はみんな飲む口実が欲しいだけなのである。
『アベノ橋』第三話アフレコ 3/21/02
第三話の台本は、ぼくがリライトしたものとはまったく違うものに変わっていたので今回あんまり仕事はなかった。ロボットアニメのネタが多かったらしく、元ネタがわからないぼくは置いてけぼりである。みんな笑っているのになにがおもしろいのか全然わからず、最初から最後まで取り残されていた。とりあえず第三話は田中哲弥は全然関係なかったのだなと思っていただいてよろしい。しかし声優さんたちのプロフェッショナルな仕事ぶりには感心してばかりである。「ムネちゃんノリノリね!」という台詞が妙におかしくて、頭の中をリフレインする。そのたび笑ってしまうので困るのである。あれはおもしろかった。
赤坂の高級料理屋で、山賀さんあかほりさん鶴田さんの対談があるというのでのこのこついていき、隣の部屋でこそこそごちそうのオアマリを食う。さすが赤坂なのでオアマリでも大層なごちそうである。ええ仕事や。
佐藤さんと話した「寛美のスター・ウォーズ」のネタはめちゃくちゃおもろかった。アホのポーズで鼻ほじりながらルーク・スカイウォーカー役の寛美が「しゃーないわ。ぼくほなじぇだいやりまつわ」とか。
ホテルチェックインすると夜中三時半。ひとりでビール飲んでだらだらしていたら明るくなってきてしまったのであわてて寝る。
e-novelsの集まり 3/16/02
e-novelsの人々が集まるというので京都河原町まで行く。普段ひきこもりに近い生活をしているというのにこのごろは東京やら京都やら出歩いてばかりでそのうち死ぬかもしれないなあと半ば本気で思う。田中啓文さんがぼくにくれるはずだった本を忘れたというのであんたあかんなあやっぱりアホやと罵っていたのだが、ぼくは牧野修さんに渡す本を持っていっていたのに渡すのを忘れてまた持ってかえってきていた。
『アベノ橋』第二話アフレコ 3/14/02
なるほどこんなふうにやってほしいのですがと思ってもすでに絵ができているとある程度それに合わさないといけないのだなあ。アニメの素人はいろんなことに驚くのである。のんびりした感じのつっこみでも、アニメだとかなり強烈な感じになってしまう傾向があるみたいだった。「田中さんみたいにのんびりした感じは、アニメではなかなか出せない」と山賀さんに言われたが「田中さんみたいにのんびりした感じ」というのが自分では全然わからないのでよくわからない。ぼくってきびきびしゅしゅっとした感じだとばかり思っていたのだがどのへんがのんびりしているのか。
そういうことなら絵コンテを先に見よ、と「絵コンテ」なるものをA4コピーアホほどの量どっさり渡されてデイパックは破れそうになり肩も外れそうになる。
携帯電話を買う 3/13/02
毎週東京に行かなくてはならないので、もはや持ってないではすまない状況となりついに携帯電話を買う。一円で売ってるやつでええわと思って行ったのに一円のはなくて、結局八百円のものにする。予算の八百倍である。昼は四百八十円の定食ですまそうと思っていたのに結局三十八万四千円の昼飯を食ったようなもので、こんな経験は生涯に二度とあるまい。黒くて二つ折りのやつがかっこいいなと思っていたところ、八百円のやつはちょうどそういうものだったのでちょっと嬉しい。しかしまあこんなものが八百円で買えるとはなあ。なぜか記念品ですと美人のお姉さんが熊のぬいぐるみをくれた。このぬいぐるみトイザラスで買うと八百円以上するんとちがうかなあと思いつつ愛想のいい近所のガキにくれてやる。
確定申告 3/12/02
ちょっと早起きして確定申告に行く。すぐにすむだろうとなんにも口に入れず起きたままの状態で行ったら一時間少し待たされてしまい、腹が減って倒れそうになる。誇張でもなんでもなくぼくは腹が減るとたちまち倒れてしまうのである。やっと順番が来て、すでに書き込んだ書類を見せると三分ほど税務署の人はそれを眺めて「はいけっこうです」それで終わりか郵送でもよかったなあと思いながらふらふら仕事場に戻り、適当にオムライスのようなものを作って貪り食い、食い過ぎて眠くなったので夕方まで寝る。起きる動く腹が減る食べる眠くなる寝る獣のような暮らし。
また東京 3/7/02
今週から『アベノ橋魔法商店街』のアフレコが始まり、なぜかぼくも全部に立ち会うことになってしまったので今日もまた東京。アニメのアフレコというものを初めて見た。絵の方はまだ完成しておらず半分くらいしか色が塗ってなかったが、これでもアフレコの段階としてはかなり進んでいるそうである。いやしかし主人公「あるみちゃん」がめちゃめちゃ可愛い。多少は自分でも動かしたキャラクターだというせいかもしれないが惚れそうになって自分で驚く。アニメキャラに恋してしまうオタクの気持ちが少し理解できたような気がした。
アフレコのスタジオが赤坂なので、終わってから山賀さんと武田さんと三人で「赤坂で」食事。訳あってあまり詳しく書けないのが残念でたまらない。
三鷹まで戻りガイナックスに寄ってからぼくはホテルにチェックイン。朝方ぐっすり眠っていると、見知らぬ女性がベッドから出てシャワーを浴び、それからスーツに着替えてぼくの耳元であなたはそのまま寝てていいからと囁いて婉然と出ていったので、はっと気づいて今のん誰やとばたばた起きあがりドアのところまで行くとちゃんとチェーンはかかっていた。夢だと思うのだがシャワーの音やドアの閉まる音や耳に触れた髪の感触などなにもかもがめちゃくちゃ鮮明で気持ち悪くなる。夢だと思うのだが。夢にちがいないのだが。なあ、あれ夢やろ。夢やというてくれたのむ。
疲れているというのに 3/4/02
死んだように眠っていたのに、朝八時頃怒号で目覚める。仕事場の前の道でなにやらもめごとが持ち上がったようだった。変なおっさんでもいるのだろうくらいに思って、また寝ようとしたのだが騒ぎはいっこうに収まらず気になって眠れない。窓から見てみるとワゴン車の運転席側に小さなおっさんが頭をつっこんでいて、助手席の方に男をひとり押し倒している。ときおり動くのは殴っているらしい。車のそばには、殴られている男の連れと思しき若い女性が立っていて困った顔をしている。ちょっと荒っぽいおっさんが、車と接触したかなんかで因縁をつけているのだとそのときは思った。ぼくも何度か見たことのあるワゴン車で、いつも階段の横に停めるので邪魔に思っていた車だし、そうそう適当にどついとったってくれ二度と停めなくなってちょうどよいおっさんが反撃されたら降りていって加勢してやってもよいぞ、しかしやられている方もあんな小さいおっさんくらいどうにでもできるだろうになにをびびっておるのだアホちゃうか、とぼんやり眺めていたのだが漏れ聞こえてくる言葉から推測するにどうやら悪いのは殴られている方みたいだった。警察を呼べ、というようなことになった。
すると驚いたことにパトカー十台にバイクが十五台くらいぞろぞろとやってきて狭い道にぎちぎち並び、仕事場のまわりが火曜サスペンス劇場みたいになる。警察暇なんか人余ってんのかやることないんか。
おっさんが警察に話している声が「弟の車や」「見てすぐわかったからやがな」「酔っぱらいが」「なんべんおんなし話さすねん」「せやから弟の」「わしがとりあえず」「去年の祭り(そう聞こえた)」「まむしが卒倒(いや、ほんとにそう聞こえた)」などと断片的に聞こえる。結局殴られていた男と横に立っていた女性(奥さん、と警官に呼ばれていた)は別々にパトカーに乗り込み、殴っていたおっさんは自分の車で「ほなあとで警察にも寄る」のだそうだ。ワゴン車はあとから来た別のおっさんが運転して警察へ向かったようであった。よくわからないのはこの、あとから来たおっさんが額から血を流していたことで、謎は深まるばかりなのである。あれはいったいなんであったのか。詳しく知っている方はご一報ください。
寝なおそうとしたらいっしょに昼を食べようと友達が遊びに来てしまって夕方まで帰らず、そのあとそうそう今日はすぐ近所の友人が楽器修理の店開きをする日やったと思い出して酒屋まで自転車を走らせワインを買い祝いに持っていく。なぜワインかというとワインは見た目優雅で値段がわかりにくいからである。五百円のワインも二万円のワインも外国のラベルが貼ってあるとまるで違いがわからない。わかる人にはわかるのかもしれないが我々にはわからないのでそれでいいのである。店開きといっても、自宅の一室を仕事場にしたというだけのことなのだが独立したのはなんにしろめでたいことである。
めたくそ疲れたのでビール飲んで早く寝ようと思ったら、今日だけは来ないでほしい、と思う日には必ずやってくる連中が狙いすましたようにばたばたやってきて朝まで帰らないのだった。今度知り合った女の子は尻が小さくてかわいいのだアホか尻は大きい方がかわいいやろなんでやねん小さい方がええいや大きさより形やろどんな形がええねんとかそんな話はどうでもいいのだ寝さしてくれ。なあてっちゃんどう思う。知るかっ。
疲れた 3/3/02
十時チェックアウトのホテルだったためほとんど眠る時間はなく、どろーっとしたままガイナックスでもらった「アスカ」と「レイ」のフィギュアなどが入った紙袋(なぜか大きく「おたべ」と書いてある)をぶら下げて三鷹から東京まで満員電車に乗る。こんなに混んだ電車に乗るのは何年ぶりかというほど混んでいて、酒も抜けきっておらず頭がくらくらした。しかも手には「アスカ」と「レイ」のフィギュアである。サラリーマンの頃はもっと早起きしてもっと混んだ電車にも乗っていたのにと、過去の自分に感心する。昔はぼくもちゃんとしていたのなあと思うのに手には「アスカ」と「レイ」のフィギュアである。
アニメスタジオでギャグ解説 3/2/02
『アベノ橋魔法商店街』の台本に少し濃いめの大阪ギャグを入れたら、作画スタッフの人たちが全然わからないということで、わざわざ阿佐ヶ谷にあるアニメスタジオ「マッドハウス」まで行って「とおるちゃんっ。いっ」とか「つらいのー。笑えよー」とか「まいったまいったマイケル・ジャクソン」なんかを、驚いたことにビデオカメラの前で実演してみせる。どんな仕事や。
SF大賞パーティー 3/1/02
SF大賞のパーティーがあった。会場に入ってすぐガイナックスの山賀氏とお会いする。『アベノ橋魔法商店街』の台本、ぼくの書いた分をおもしろかったと言ってくれたので大変ほっとした。後半けっこうめちゃくちゃしたので、みんな怒ってるのと違うかと心配していたのである。
授賞式はというと受賞した北野勇作氏がスピーチでアホなことを喋ったせいで、あとに続いた新人賞の人たちもなんか変になってしまっていて痛々しい。かわいそうに。さすがに授賞式ともなると北野さんもちゃんとした服装をするのだなあと遠くから感心していたのだが、一見ちゃんとした服に見えたそれは実はチェコで買った作業服だそうで、よく覚えていないが五十円くらいだったらしい。その後の北野勇作の奇行については、いろんな人が書くだろうから割愛する。要約すれば「北野勇作は人に施したり寄付したりするくらいなら相手を殺すか自分が死んだ方がまし」ということのようだ。
帝国ホテルでの二次会のあと数寄屋橋のカラオケボックス。ここで北野さんはなぜか自分の奥さんとぼくをくっつけようとする。「いけいけ。いけるいける。オレ横で見とくからいけいけ」とかわけがわからん。奥さんである森川さんが「E.T.のふるさとのみんながE.T.を迎える歌」を体揺らしながら歌ってくれたのに爆笑した。USJのアトラクションでこの爆笑ネタは繰り広げられるのだそうである。ぼくもE.T.のアトラクション、見たのに全然気がつかなかった。一回行けばもういいかと思っていたけど、なんとなくE.T.はもう一度見たいような気がする。あれは笑えますぞ。
ホテルに入ったのは朝五時くらいだったが、牧野修田中啓文両氏と朝七時くらいまでだらだらする。北野勇作がいかにアホかを再確認した日であった。