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床下から鶏の鳴き声がする 1/8/06

 ぼくの仕事場はアパートの二階なのだが一階の方から最近しょっちゅう鶏の鳴き声がする。コケコッコーではなくオッオエーウォーオーという感じでめちゃくちゃ耳障りである。町中だと一戸建てでも鶏飼うのはちょっとどうかと思うのだがアパートで飼うかオッオゥエー。どうやら二羽いるらしい。まあたぶん子供が縁日でヒヨコ買ってきたら大きくなっちゃったということなのだろうなあ。階下の子供たちみんな愛想のよい可愛いやつらなので別に腹は立たんが朝昼夜にかかわらずオッオァウェーと鳴くため寝入り端などオッウクェーガヤーわーなにが起こったんやとベッドから落ちそうになる。こりゃたまらんと思いつつ暮らしていると人間なんにでも対応できるものでそのうち慣れてしまいオッワウェーゾゾーンドガギョグァェーと夢うつつに聞きながら眠る日々。けどやっぱりうるさいので早くつぶして食えオッオァォゥェーエーグギョアォーキョヨー。ケヨヒォー。

職務質問 1/14/06

『注釈 警察官職務執行法』という本があるのだそうだ。
「警察官は異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りうる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる」うわあなんちゅう文章じゃ。
 去年歌舞伎町で飲み屋を探して数人で歩いていたとき、つぼ八の入り口でここにしょーかーなんや結局つぼ八かーほなどないしょーみたいなことを言ってたら突然警官ふたりが背後からぼくに近寄ってきて、とんとんと背中を叩く。はあと振り返ったら「あの、職務質問よろしいですか」と言う。はあかまいませんが、と言っていると他の人たちがなんやなんやとなって、すると警官驚いて「あの、この方たちとごいっしょですか」そうです。「あっ、ではけっこうです」なんやったんやあれは。「ぼく怪しかったですか」と逃げようとする警官に訊いてみたのだが「いやいやあのあの」みたいな感じでそそくさと去っていったのである。なぜ他の人たちとごいっしょならよくて、ひとりなら職質なのだ。いったいぼくのどこが「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りうる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」だったのかなあしかしなんちゅう文章じゃ。

タイに行く 2/7-11/06

 バンコクとかサメット島とか行ってオカマにめちゃめちゃ好かれる。詳しくは別に書くことにする。

「フォクシーガール」 3/6/06

 SFマガジン掲載予定の短編、とりあえず書き終える。途中からめちゃくちゃになりそうだなあと思いつつ書いていたらやっぱりめちゃくちゃになった。やったー。

マグリットとデルボー展 3/18/06

 最近Y氏が突然絵画に開眼したようでもっといろいろ絵が見たいなあなどと言う。ほな姫路にマグリットとデルボーが来るみたいですし行きましょかーということになり去年明石海峡大橋のてっぺんにいっしょに登った美人も誘って三人で姫路へいく。入場料金五百円という安さが気になったがやはり値段だけのことはあるしょぼさで、でもまあ二三枚おもしろいのがあったのでそれなりに満足した。実はぼくの「猿駅」はかなりデルボーの影響を受けている。かな。

『オペラ座の怪人』 3/31/06

 ブロードウェイのミュージカルを最近映画化したやつである。WOWOWでやっていた。なんかちょっとへんなストーリーはともかく、オープニングのシャンデリアから劇場が再生していくあたりでいきなりしびれてしまった。例のテーマ曲(ばあーん、ばばばばばー)が実に印象的で、もうこの映画ここだけでええんちゃうかと思うくらいである。これだけのためにDVD買っても損はない。これ映画館で観たかったなあと心底思った。楽曲はどれも魅力的で、さすがアンドリュー・ロイド=ウェバーええ曲作るわあんたほんまにえらいなあと感心する。なにを隠そうぼくは『ジーザス・クライスト・スーパースター』が大好きである。『キャッツ』はいまいちピンと来なかったけど。
 とはいえこの『オペラ座の怪人』ストーリーの発端となる場面、オペラ座で上演している歌劇の中のアリアをヒロインのクリスティーヌが舞台で歌っているというのに、バルコニー席でそれを観ていたお金持ち青年ラウルが「その曲に合わせて台詞を歌いはじめる」という状況にはまったくなじめずのっけから混乱した。台詞と台詞の合間に、ふたりで愛を語り合うシーンなどが歌によって表現されるというのならどうにか理解できるが、会話のところどころだけ唐突に歌になるというのはミュージカルに馴染みがないぼくの場合かなり違和感がある。それでもまだ「台詞の途中が歌になる」のは五光年譲ってよしとしよう。しかしどう考えてもあのアリアのシーンはへんだろう。劇中劇の舞台で歌われているアリアは歌って表現される「台詞」ではなく、この虚構内の人々はそれを現実の「歌」として聴いているはずなのに、その歌に兄ちゃんの台詞が重なるというのはミュージカルという不思議な形態の中であっても不自然すぎるのではないかと今これ書きながらいやしかし普通に喋ればすむところいちいち歌うくらいだしオペラ座が物語の舞台となっているので演目と日常との境目がなくなるというこれはそういう演出でそれはそれで別にええのかなという気になってきてしまった。うん、まあ、もうええわ。

スペクトラムとか 4/19/06

 ちょっと前、田中啓文に「ソウルバンドでラッパ吹かんか」と誘われて、ちょうど映画『ザ・コミットメンツ』見たころだったりしたのでやるやると安請け合いしたのだが今日、演奏する曲というのでスペクトラムとかSHOGUNのCDと譜面が届いた。どっちもぼくはよく知らない。ウィルソン・ピケットは? オーティス・レディングは? さっそく聴いてみるとハイトーンのメロディがえんえん続いている。こんなんは何年も吹いてないクラシック吹きには無理や思うなあ。ハイCより上の音なんか現代曲でもめったに出てきませんよ。それがあたりまえみたいにいきなりハイDから始まってたりする。マウスピース、浅いやつ買ってみるかなあ。吹けるかなあ。練習もあんまりできないだろうし、こんなん何曲も吹いてたら絶対鼻血出るわまちがいない。でもまあなんかおもしろそう。

コナモンの人たち 4/23/06

 昼頃親しい編集者から電話があって聞けばすでに明石に来ているという。仕事とは無関係にお好み焼きとかたこ焼きといったコナモンを食べ歩くためにわざわざ仲間と明石まで来たのだそうだ。魚の棚で合流すると、明石到着後すぐ観光ガイドなどでは一番有名な明石焼きの店に行ってきたというので、あそこは地元ではボロカスの最低ですわということでまあまあ普通の店で明石焼きを食べなおすことになる。ぼくはそろそろ締め切りヤバインヤケドナーと思いつつ起きていきなりのビールがぶがぶ飲んでへろへろになる。たこ焼き食べるためだけにわざわざ東京から明石まで来るなんてなあ。えらいというかなんというか。

「スクーリング・インフェルノ」 4/24/06

『ミッションスクール』最終話、書き下ろし分の短編とりあえず書き上げる。めちゃくちゃ時間かかってしまったなあ。

高井信さん浅暮三文さんと飲む 4/25/06

 朝方突然高井さんから今日浅暮さんと飲むので来ないかと携帯電話にメールが来たので、ちょうど一仕事終わったとこだし大阪まで飲みにいく。アホな話するのかと思っていたら、梅田地下の大阪伝統的庶民的二度浸け禁止的なんかちょっとビールぬるいんちゃうか的串カツ屋でショートショートの今後を考えたり実験小説や新しい文章表現やルーチョ・チェーヴァとかマンディアルグとかバーセルミとかスラディックとかについてなどずいぶん作家っぽい話題で知的に盛り上がった。
 そのあと餃子ミュージアムというところで、なんかどれもおいしないなあでもだらだらビール飲めるからええかみたいな感じでだらだらし、電車がなくなるといって高井さんが帰ってから浅暮さんとふたりで線路下のカウンターしかない店で飲みながら今度は徹底して下ネタなことを話し合う。これは他では言うてはいかんよと言われたのでなんにも言いませんがへんにおもしろかった。
 高井さんにしろ浅暮さんにしろ同業者だからというのもあるとは思うが、それよりもまだこれからなんかいろいろおもろいことやったるでえとがつがつ生きている人と会うのはやっぱりおもしろいなあと思う。世の中「人生あとはただ生きるだけ」ないっしょに飲んでも麩踏んだようなすでに終わってしまった人もけっこういるので、まわりにおもろい人間がうじゃうじゃしているぼくの人生はかなりお得なのではないでしょうか。

白いペレ 5/17/06

 ジーコはかつて「白いペレ」と呼ばれていたという。では本家ペレは「黒いペレ」か。ほなあと黄色いペレ(東洋人)赤いペレ(インデアン、最近はネイティブ・アメリカンともいう。ネイティブ・インデアンという人多いけど落ち着けそれはインド人のことだ)青いペレ(病人かガミラス)と集めて「蹴球戦隊ゴペレンジャー」を結成するというのはどうでしょう。もともとのゴレンジャーもドッジボール順番に蹴っ飛ばしたりしてたような気がするし。

クローズアップぜんざい 5/18/06

 寝付きが悪かったのか一晩中『クローズアップぜんざい』というネタをめぐる夢につきまとわれる。あと顔だけ猿の鳥もいて「猿鳥」というこの鳥が飛び立ったあとはものすごく清潔なのだという話も何度となくくりかえされた。「去る鳥」ではなくて「立つ鳥」というのではないのか、いいやだって現にここに「猿鳥」がいるではないかみたいな。

ハナシをノベル第一回 5/20/06

 大阪堂島で月亭八天田中啓文コラボレーションの新作落語会。第一回目の今回は田中啓文作の新作二本が八天さんによって演じられた。次は北野勇作でその次はぼくが書く予定。それはともかく打ち上げで飲んだあと北野さんとふたり大阪駅までタクシーに乗ったのだが降りたとたん北野さんは(訳あって削除)を(訳あって削除)して大騒ぎ。大阪駅コンコース内に響き渡る大音声で「(訳あって削除)ーっ!」と叫びつつ踊り喜ぶ。(訳あって削除)くらいのことであんなに喜べるあのおっさんは偉いと思う。

女子高生がぼくの 5/25/06

 本屋に行ったら制服姿の女子高生がぼくの『ミッションスクール』を、他の本には目もくれずいきなり手に取る瞬間に遭遇した。おっと思って眺めていると、本を裏返しあらすじを見たとたん、その女子高生は忌まわしいものでも触ってしまったかのようにあわてて元に戻すのだった。無理に買えとは言わぬがとりあえずあらすじくらい読めよ。

谷川流氏を囲む会 5/26/06

 そもそもはぼくが一仕事終わってちょっと暇になったのでなーあそぼーなー誰か飲み会やろーなーと言い出したことが始まりで、すると小林泰三がそれならなんか京都の方で舞妓さんと飲む話があるみたいなのでそれに集まってはどないやみたいなことになって、そんなら前々から飲み会あったら呼んでくれと言うてた谷川さん誘いますわーと誘って谷川さんから行きますわーと返事もらってするとなんでか京都のその会はあっけなく無期延期みたいになってしまったのだった。
 せっかくやしほな大阪で飲みましょかということになり、思いつくまま声をかけてもらったらみんな忙しいのか暇なのか結局総勢八名我孫子武丸北野勇作小林泰三田中哲弥田中啓文谷川流友野詳冬樹蛉の宴会となった。信じがたいことにぼくが店の手配などせねばならず、こんなん一番苦手やのになあと思いつつなんとか一軒予約する。けっこういい店で対応もよく、こんなちゃんとしたことできるなんてぼくすごいなあとものすごく偉くなったような気がした。なんのテーマもないのは寂しいので一応「谷川流氏を囲む会」ということにしたのだがやっぱりというか北野勇作アホ一直線を中心に怪獣とか仮面ライダーとか井川遥の駄洒落とかタンスの角とか頭から血がだらだらなのに若い女と会うなんて人でなしっ、みたいないつものメンバーが始終アホ炸裂で物静かな谷川さんは完全にほったらかしだった。谷川さんこれに懲りずまた飲みましょうね。

『日本沈没』 5/29/06

 完成披露プレミア試写会というのの招待券が送られてきたので谷四のNHKホールまで見にいく。SF作家クラブ会員は全員招待だったみたいでずいぶんいい席に案内された。一般の人はもらえないプレス用のでかいパンフレットももらえははは君たちはもらえないのかぼくはもらったけどねとそこまではけっこう楽しかったのだが東京大阪福岡名古屋北海道の五カ所同時の試写会だそうで、開演からしばらくは東京武道館での舞台挨拶生中継を延々とスクリーンで見せられて映画観る前に疲れ果てた。そりゃ目の前に俳優さん並んで喋ってくれたら楽しいだろうけどスクリーンで見せられる方は馬鹿みたいである。
 ぐったりしてからやっと始まった『日本沈没』特撮シーンは実にかっこよくてこれだけのために映画館で観るのもありだとは思うがまあ日本の大作映画はみんなこんなんやなあという感じ。馬鹿が作ってしまったというわけではなくたぶんわざと、観る側のレベルをものすごく低く見積もって映画作ってるんだろうなと思う。その方が金は儲かるということなんだろうけど思いっきりなめられてるぞーみんな。終わってから北野勇作小林泰三と三人で飲みながらいろいろ反芻してげらげら笑う。冒頭シーンとかクライマックス大爆発とかめちゃくちゃかっこよかったんだけどなあ。

マウスピース買った 6/1/06

 夏にやるスペクトラムに備えトランペット用ソフトケースを引っ張りだしてみると元々ぐにゃぐにゃで持ち運びにはけっこう神経を使う代物だったのが二十年という年月のせいかもはやケースというよりラッパに雑巾巻いてそれ楽しいですかみたいな状態になってしまっているのだった。ハードケースもいくつか持っているもののどれも無駄に大きく、前から欲しかったとにかくラッパ一本無事に運べたら他になんにもいりませんという潔いハードケースを買うことにした。近所で楽器修理やっているヤストメくんにカタログを見せてもらいSKBというメーカーのものがよさそうだったのでそれに決めたのだが、いろいろ見ているとカタログにはマウスピースも載っている。ジェットトーンのもある。昔流行ったがクラシックプレイヤーのぼくには生涯関係ないと思っていたジェットトーン。うーんもしかしてこれを使えばハイトーン鳴りまくりなのではあるまいか。メイナード・ファーガソンみたいに吹けるのではないのか。きっと吹けるのだろうなあ。欲しいなあというわけでカタログ見ただけでマウスピース買うのはやめといた方がええでと当然のことを言うヤストメくんの意見を無視して頼んでしまった。メイナード・ファーガソンモデルが欲しかったがかなり特殊な感じだったので学生の頃から使っているBachの1Xとカップ経がほぼ同じの1Mというのにする。だいたいこのBachの1Xというのだってぼくはあれこれ試奏して最終的に辿りついたというのではなく、二十年ほど前これ買うたけどオレには合わんわーいらんわーと言った誰かのものをほなちょっと貸してと借りてみたらそれまで使っていた1Cよりうまく鳴ったのでそのまま使い続けているだけなのである金さえ払っていないのであるカタログでマウスピース選んでなにが悪い。
 そうそうこんなん欲しかってんというやすもんげなシンプル極まりないハードケースとともに届いたジェットトーンスタジオモデル1Mは実にかっこよかった。さっそく吹いてみることにしたがぼくの仕事場は町中のアパートなのでこそっとしか吹けず、小さな音ですかーっと吹いてみたところ鳴る鳴るなるなるめちゃくちゃ軽く鳴るぞっ。と思って今まで使っていたBachも吹いてみたがたまたま調子よかったのかそっちでも鳴る鳴るがんがんなるなあなんやそれどういうことやと思ってあっち吹いたりこっち吹いたりしてみたが、たしかにジェットトーンは軽く鳴るような気がする。ケースと合わせて二万円もしたのに気がするだけかい。もっとちゃんと吹ける場所でちゃんと鳴らしてみないとわからないし、まあなんにしろ見た目かっこいいのでよしとしよう。

ブラジルのカカ 6/9/06

 テレビではサッカーの話題ばっかりで、サッカーに興味のない身としてはチャングムの時間がずれたりして少々うっとうしいのだがブラジルにカカという選手がいるというのを知ってこれはちょっと嬉しかった。いつだったかトルコにオカンという選手がいたので笑っていたのだ。今度はブラジルに出現か。やはりトルコの監督は選手を語るとき「うちのオカンがよくやった」というのだろう。ブラジルの監督も「うちのカカはたいしたものだ」というのだろう。アメリカのトーチャン、インドのバッサマ、ロシアのムスコ、韓国のヨ・メ、イングランドのダンナーとか集めてチームを作れば監督の談話「うちのヨメもよくやったがムスコもがんばった。ダンナはいまいちだったがその分バッサマとトーチャンの活躍がチームを救ったな。でもやっぱり一番えらいのはオカンやー」

アンジェラ・アキ 6/11/06

 いいなあアンジェラ・アキ。歌はまだ聴いたことないけどこの人のキャラクターはぼくの好みど真ん中の中のピンポイントなのではないか。
 と夜中のテレビでたまたま見てぼんやりそんなことを思っていたらNHKのトップランナーに出ていたのでちゃんと見る。素晴らしい。ああもう絶対ピンポイントのタイプや歌もめちゃくちゃよかった。Wikipediaによると『カラオケの十八番は石川さゆりの「津軽海峡冬景色」』だそうだ。尊敬するアーティストの中唯一入っている日本人は椎名林檎だ。
 頼む誰かアンジェラ・アキをぼくに紹介してくれ。

ネットショッピング 6/15/06

 ブッツァーティとかマンディアルグとか欲しかった本がなぜか続けざまにアマゾンのマーケットプレイスでずいぶん安く出ていたのでがつがつ買い、うわーなんかいろいろ安かったーと喜びつつその勢いでアンジェラ・アキのCDも注文していた。さっき見たら最新アルバム『HOME』初回限定版DVD付というやつは発売前にもかかわらずすでに在庫切れとなっており驚いたことにマーケットプレイスではプレミアがついている。どういうわけかこの限定版ぼくが買ったときは15パーセント引きで売られており通常版は最初っから定価のまんまで売られていたのでDVDまで付いて限定版の方が安かったのであるああなんかいろいろ得をした気分だ。
 しかしまあこうしたネット環境というのは実に便利でありがたいけど、古本屋を巡る旅の楽しみとか図書館へ行く高揚感とかレコードを店で買って持って帰るあいだのわくわくとかがぼくの暮らしから完全になくなってしまってなんとなく寂しいような。いや便利で楽な方が断然いいんだけどね、なぜか少し後ろめたい。

大正区でスペクトラム 6/18/06

 田中啓文とともに大正区のスタジオでバンドの練習。二年ほど前Y氏に誘われて子供ヤマハ音楽教室のアンサンブルに出てちょろんと吹いたとき以来全然ラッパ吹いてないのにいきなりのスペクトラムは言わばたまにゴルフして「けっこう運動になった」というような人が突然半袖短パン姿のまんまではぼく今からチョモランマに登りますというようなもんだわなあと心配していたのだが現実は想像以上に厳しくスタジオ入りして気づかされたのは前もってもらっていた譜面がinCだということでありつまりピアノ譜とおんなじ調で書かれているわけで言われてみればスコア譜なんだからそんなことは普通見ればわかるわけなんだけど人間楽な道を知らず選ぶというかなんというか、ぼくがのっけからハイDかよーとびびっていたのは実はまだそれより一音高いハイEだったのである。つまりラッパのファのシャープの高いやつのその上の高いやつです。そんな音、遊びでもほとんど出したことないわ。フレーズは細かいし何回もくりかえすし音は高いしエレクトリックな中で吹くのでずーっとフォルテッシモだしもうこうなるとスポーツ。
 しかしまあこれだけハイトーンばっかり続くとややこしいフレーズでもとりあえずリズムにのってぱぱぱぱぱっぱぱぱぱーとか適当にめちゃくちゃやっているとエレキな音に紛れてなんとなく吹けているような気がする。指まわってないし吹けてないのは百も承知だがなんとなくできている雰囲気にひたれるのだなんせ自分の音はあんまり聞こえないし。
 先日ハードケース買うついでに買ったジェットトーンのマウスピースのおかげもあって、ばてばてのぺらぺらな音ながらとりあえずはそれらしい高音も鳴ったので、めちゃくちゃ疲れたがめちゃくちゃおもしろかった。なんちゅうか、細かいこと気にせず(本当は気にしなくてはいけないんだろうけどなー)でかい音でラッパ吹くのはそれだけでおもしろいのだなあとあらためて気づいたことである。こういう楽しさはクラシックにはまったくないもんなあ。
 終わってからの焼き肉みたいな焼き鳥がまたびっくりするくらいうまくて、それもよかった。店に入るなり店内の有線でアンジェラ・アキの『This Love』がかかったのもよかった。今日のぼくのiPodShuffleは全曲アンジェラ・アキのみで、その潔さも我ながらよかったと思う。

ワールドカップサッカー 6/21/06

 日本が決勝トーナメントに進める可能性はあんまりないとかいいやあるとかいろいろ毎日喧しいが、ぼくは「日本は世界でもっともサッカーの弱い国である」と世界の人々に認識されたとしてもまったく平気である。「日本人は世界一屁の勢いが弱い」と決めつけられても平気であるのと同様に平気である。サッカー好きな人がワールドカップに夢中になるのはわかるが、なぜ国中で狂騒的に盛り上がるのかがわからんほな暗算世界大会とかも国中で応援してやれ。
 しかしテレビ見ていてもぼくのまわりの人々も「あそこでなんでシュートできひんのや」とか「あんなもんオレでもゴールできた」とか「頭が悪い」とか「初めからワシのと言うとおりしとったらよかったんや」とかおまえ何様なことをみんなけっこう好き勝手に言っている。
 ビール飲みながらテレビ見ていてこの歌手下手やなあとか言うのと同じで特に悪意があるわけではないんだろうけど「サッカー日本代表チームに選ばれワールドカップに出場する」などという華々しいことからはほど遠い凡庸な人生を送り下手するとサッカーやったことすらないようなドシロートの人々にまでかくも悪し様に罵られ無責任に批判されながら日々過酷なトレーニングに耐え遠い異国の地で必死に駆け回り勝てないまでも世界の強豪とイーブンに戦っているサッカー選手たちを思うと、勝てたらいいのになあくらいは思うのだった。

扇風機千二百八十円 8/4/06

 ぼくの仕事場のトイレは西側の端にあって風通しが悪く、この時期はめちゃくちゃ暑い。日中は便器で七宝焼きが焼けるほどで、一度うんこしながらくしゃみをしたら読んでいた雑誌が燃え上がったことがある。そこで目の前に扇風機を置くことでこれまでどうにか生き延びてきたのだが三年前から首を振らなくなった安物の扇風機が突如まったく動かなくなってしまい、このままでは排便中死亡の恐れがあるためしかたなく新しいのを買いにいったところなんと千二百八十円だった。今まで使っていたやつは小さくていかにも安物の雰囲気を全身にまとっていたが、それでも十年ほど昔近所のホームセンターで買ったときは千八百円くらいしたように思う。今日買ったやつはちゃんと大きくて高さは最大九十センチにもなり風力は三段階に調節できちゃんと首も振りタイマー付でしかも羽根は透明でデザインもなかなかおしゃれなのである。さらに保証書には「輸入元」の会社名が書いてあって、どこの国からの輸入品なのか書いてないのでわからないもののこの扇風機驚いたことに舶来品らしい。こんなものすごいものが千二百八十円。買っても法に触れないだろうかと心配になったが結局買った。仕事場まで持って帰る道々、待てもしかするとこれは扇風機ではなくて扇風機の形をした容器にお菓子の詰まった子供用のおもちゃなのではないかいやしかしこの大きさにお菓子が詰まっていたら千二百八十円ですむはずはないしひょっとして電気で羽根を回転させるのではなく両手で掴んで団扇のように振り回すことで風を発生させるタイプなのではあるまいかなどとあれこれ心配したのだが、実にちゃんとした扇風機でほっとした。しかしまだ安心してはおらず、この先なにが起こるかわからないのでとりあえず背後には気をつけることにする。

最後のバンド練習 8/6/06

 大正区のスタジオでバンド練習。今日は田中啓文はお休み。その代わりホーンセクションには強大な助っ人トロンボーンが初参加で助かった。適当に一本のクダ曲げただけの楽器でよくもまああんな細かいフレーズ吹けるものだと感心する。
 前回の練習のとき途中でマウスピースをジェットトーンからBachに戻したらその方が調子よかったので今日は最初からBachで吹く。ちゃんとハイトーンも鳴った。練習開始から三十分くらいはちょっとびっくりするくらい鳴っていたと思う。すぐばてたけど。いやしかし小学校五年生のときからトランペット吹いてきて、自分がこんな音出せるとは全然知らなかったよまったく。ジェットトーンで軽い音を鳴らすこつみたいなものが多少わかったので、そのおかげかとも思うのだが、でも結局ジェットトーンいらんかったなあせっかく買ったのに。
 来週は本番なので大正区での練習は今日が最後であって、ということはつまり終わってからのあのおいしい焼き鳥も今日が最後なのだった。実に残念である。梅田にも支店があるということなので探してそのうちまた行こうと思う。今日もめちゃくちゃおいしかった。焼き鳥も含めて、ええバンドやなあと思う。

猫が 8/11/06

 仕事場の自転車置き場に自転車を置こうとしたら、すぐ後ろで猫の鳴き声となにやらぶんぶんいう音が聞こえた。振り返ってみると道の向こう側に猫が二匹いて、そのうち一匹は口にセミをくわえているのだった。猫の口の中でセミは元気に生きており、猛烈な勢いでハネををぶんぶんいわせている。猫てセミ食うんやなあ、と思っていたら猫は二匹そろってとことことぼくの足下まで歩いてきて、やはり二匹そろってぼくの顔を見上げる。そのまま動かずじっとぼくを見る。セミはぶんぶんいっている。ぼくは別に普段から近所の猫と仲良くしているわけではなく、この猫二匹がなにをしたいのかよくわからなかったがどうもなんらかの評価を求めているような気がしたので「すごいなあ。えらいえらい」と言ってやったら、納得したのかまたしても二匹そろって元いた場所に戻り、満足げに寝ころんでくつろいでいた。へんな猫。セミはその後も猫に噛まれたままずっと必死でぶんぶんやりつづけていた。

ビッグステップでライブ 8/13/06

 アメリカ村のビッグステップでライブをやる。我々ホーンセクションが参加する曲目は全部スペクトラムで「Tomato Ippatsu」「In The Space」「Fly」「Act Show」の四曲。けっこううまくいったのではないかと思う。練習ではいいかげんにごまかしていた「Act Show」のややこしいフレーズも奇跡的に(そこそこ)外さず吹けたし、せっかくハイトーンも(たまには)ちゃんと当たっていたというのに、聴きにきてくれていた北野勇作森山由海両氏によると「マイクのせいかホーンセクションはほとんど聞こえへんかったでー」ということだった。なんじゃそらと思ったが、こういう音楽もなんとか吹けるかもなあという自信にはなった。めちゃくちゃおもしろかった。次はブルース・ブラザース・バンドみたいなんやりたいなあ。

ロナウジーニョ 8/18/06

 前からどこかで見た顔だなあとは思っていて、バファリンの半分が優しさでできているのならロナウジーニョの半分はロバでできているに違いないなどと言うておったのであるが、さっきテレビCMでロナウジーニョ見てはたと気がついた。ジャー・ジャー・ビンクスだ。
 試しに「ジャー・ジャー・ビンクス ロナウジーニョ」で検索してみたら、そう思っている人はけっこう多いのだった。ああすっきりした。
 しかし見れば見るほど似ている。ここまで同じ顔だと似ているというよりどちらかがもう一方を参考にして作ったとしか思えないのである。いや参考にしたとか共同制作とかいういいわけが許されるレベルではあるまい。あきらかに盗作だ。とはいえ、よりによってジャー・ジャーをパクるというのはどういうセンスしとるのか。

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