いや、歌いはせんがなんかそんなタイトルの小説があったなあなんでいきなり新京極、みたいな。
昨日廣済堂から電話があって『GOD』がまだ着いていないという噂を耳にしたがそれは本当かと言うので、まだ来てない旨伝えるとのけぞって驚いて(たぶん)かなり前に送ったがおかしいなあ、ではすぐに今度は郵便ではなく宅配便で送るので待つようにというようなことになったのである。この日記によって知ったのではなく斉藤肇氏に聞いたとのことであった。おそらく斉藤さんはこの日記を読み「田中哲弥が『GOD』が来ないと怒り狂っているのであのまま放っておくと巨大化して日本各地を踏んでまわって火を噴くかもしれない」というような内容のことを廣済堂の方に言ってくださったのであろう悪いのはただただ怠惰な郵便局だというのに。しかし変なところでお世話になってしまったことである。斉藤さんお元気ですか。
すると驚いたことに今日の朝十時には届いていた。二十日近くかかってもまだ来ない郵便と、夕方遅くに出しても翌朝届く宅配便。死ね郵便局。
適当に半分ほど読んだだけだが竹本健治氏の「白の果ての扉」がとてもおもしろかった。あと笹山量子氏(ちぇろ子さんですね)「神様助けて」も、ちょっと昔風の雰囲気がぐっときて好印象。あとはお風呂で読もう。
両替機の百円 8/30/99
先日、スター・ウォーズのエピソード1を観に行ったとき輝鷹あち氏に聞いた話を唐突に思い出した。
弟の長女、つまり姪をつれて近所(兵庫県加古川市)のゲームセンターに行ったという。小学生になったばかり(ぐらいなのだと思う)の姪が、両替機で千円を両替したのち戻ってきて言うには、どうやら前の人が百円を取り残していったようで、千百円出てきたから百円はそのまま置いてきたとのこと。ええ子やなあと思いながらも輝鷹さん、元々金に細かく損得勘定にうるさいことでは日本一まちがいなしの人であるから、あのな、そんなもんはもらってきてもええねんで。置いてきたってどうせ(次の人が取ってしまうだけのことなんやから)と言いかけたとき、見知らぬ幼い女の子がとことことやってきて百円を差し出し「これ、忘れてたよ」
教訓。田舎の子供は要領が悪い。
ビールが安かった 8/29/99
最近はサントリーのマグナムドライという発泡酒を主に飲んでいる。少なくなってきたので「靴のヒラキ」へ(靴の、とは言うもののたいていなんでも売っている)買いにいかねばと考えていたところ「麒麟淡麗・サッポロブロイ、ワンケース2650円」というチラシを新聞の間に発見した。マグナムドライが一番いいのだがヒラキだとこれはワンケース2880円。この際麒麟淡麗でもブロイでもどっちでもかまわんワンケース二百三十円の差は大きいこの店で買おう、と思ったものの前にも一度行ったことのあるこの酒屋は駐車場が恐ろしく狭い。なにを隠そうぼくは車の運転が好きではなく、道が混むとか駐車しにくいとか考えただけでもいやになってしまうのである。今日は日曜だから道は混んでいるに決まっているし、そのうえあんなじゃまくさい駐車場に入れなければならないのなら、やはりヒラキにしようとも思ったがそれでもなお二百三十円の差は大きい。そこでママチャリで行くことにした。片道二キロ程度であるしおそらく問題はなかろうと考えたのだがこれがよかった。めちゃくちゃよかった。途中、ふと覗き込んだ見知らぬ酒屋の奥に「2580円」と書かれたマグナムドライを発見したのだ。車なら絶対に見逃していたらはずである。うおっと叫んで飛び込んでばばっと二ケース買う。あんまり嬉しかったので思わず店のおっさんに「安いなあこれ」と言ったら、おっさんは「せやろ」と言ってにやりと笑った。
恐ろしいメール 8/28/99
プロバイダーから先月の利用明細のメールが送られてきたのだが、なんとそれには超過料金約二万八千円で基本料金との合計三万数千円を引き落としますなどと書かれていた。二万八千円といえばほぼ140時間分に相当する。昨日も書いたがどんなにがんばったってそんなに使えないのである。先月は、すでに三千円で百五十時間使えるとしばらくかんちがいしていたため機嫌よくつなぎっぱなしにしたりしてたしかに基本の24時間を多少超過したのだが、いくらなんでもそんなことはありえない。しかしもしかするとぼくの計算方法にまちがいがあって実際にはそのくらいになってしまうのだろうかもしかすると切ったつもりで三日ほどつなぎっぱなしだったりしたのだろうかひょっとすると誰かにパスワードを盗まれたのではあるまいかいいやおそらくは組織的な陰謀に巻き込まれているのだまちがいあるまいそういえば仕事場の前をうろうろしている小学生の目つきはあれはまともではなかったなどと疑心暗鬼にかられ大金が失われる恐怖に動悸が激しくなり呼吸困難に陥り手足が顫えてとまらず視界は黒く染まり鼻血が噴き出て大量失血のため意識が朦朧となって仕事どころではなくなってしまって女の子と長電話したりする。
これはどういうことかとメールを送ったところ、すぐに丁寧なメールが返ってきて「超過料金集計計算のシステムで一部不具合が発生」したための間違いであったことが判明した。めちゃくちゃほっとする。ああ怖かった。しかし今回のこれは極端に高額であったから明らかにおかしいと気づいたものの、普段から何万円も使っているような人だと一万円や二万円上乗せしてあっても気づかないままということもあるのではなかろうか。あなた大丈夫ですか。
"Austin Powers The spy who shagged me"の予告編 8/27/99
『オースティン・パワーズ デラックス』のUS版予告編がダウンロードできるというのでしてみたら音声が出ない。ドクター・イーブルが息子に"Zip
it!"とかいうシーンもちゃんとあって(日本版にはない)音が聞きたくてたまらない。どうすればいいのかといろいろいじっていたところ、これはクイックタイムのバージョン4が必要なのだということに気づき、めんどくさいなあと思いつつクイックタイム4もダウンロードしてみた。
出た出た。ちゃんとドクター・イーブルが息子の言葉を無視して「しゃびれー。しゃぶじゅぶじゅー。じゅぶじゅべれべー」と言っている。クイックタイム4のインターフェイスもかっこよく、気をよくしてよっしゃスター・ウォーズの予告編のでかいやつもダウンロードしたろと思ってクイックタイム4バージョンを見に行ったらこれはコンピューターの方がG3でないとだめなのだそうだ。いつのまにかぼくの使っているやつは「遅い方」の部類になってしまっているらしい。買ってからまだ三年しか経ってないのに。
なんだとそんなことをしていていいのかとな。心配はいらぬ。なにしろ今月からリムネットは150時間まで基本料金3000円でいけるようになったのだ。どんなに使っても月に150時間なんてとてもではないが使えない。がんばったって50時間も使えないのである。テレホーダイにも入っているため、したがって夜中はいくら使ってもただなのだうははははは。だから全然だいじょうぶなにそんなことではなく仕事はどうなっておるのかとZip
it! 原稿はしゃべじゃぶるべー、もう月末じゅぶるべれー。
フルフェイスとヘルハウスくらい違う 8/26/99
うちの母親が言うことには、あそこのお兄ちゃんはえらいオートバイ好きみたいやなあ今日も大きなオートバイ乗ってヘルハウスのヘルメットかぶって出ていきよってやったわ。
マウンテンバイクさながらの自転車 8/25/99
実家でとっている神戸新聞をまとめて読んでいると、23日朝刊の第一面のコラム(朝日なら「天声人語」)に公開中の映画の話題を絡めて自転車によるメッセンジャーのことが書かれていた。その中に「マウンテンバイクさながらの自転車」という記述を見つけてしばらく考え込んでしまう。ということは「マウンテンバイク」という「自転車のマウンテンバイク」ではないなにかもっとすごいものがあるのだろうか。これは気になる。いやまあ、これを書いた人が自転車のことに無知でマウンテンバイクとオフロードバイクかなにかとを混同しているのだろうとは思うのだけど、もしそういうものがあるのならきっとぼくは好きになるだろうなあと考えると「万一」のことが気になるのである。どんなものだろうか。
しかしこの新聞は以前(平成11年7月23日朝刊)にも『スター・ウォーズ エピソード1』について「主人公アナキンが九歳の男の子に設定されているのは、映画のターゲットが小学生あたりの男の子に絞り込まれているから」とか「SFXによる活劇部分に比べて地の「語り」部分が見劣りするのは荘重厳粛なファンファーレに代表される古くさい管弦楽を多用している点にある」ので「もっとヒップポップにするべきだった」(「」内すべて引用ではなく要約)とか、とことんずれたコラムを掲載したこともあるのでなかなかあなどれない。五代ゆう氏はこのコラムに関してウェブ上でえらく憤激されていたが、ぼくは爆笑した。あんまりおもしろかったのできちんとスクラップしてあるくらいである。書いた人の肩書きには「武庫川女子大助教授」と書いてあったが大丈夫か武庫川女子大。
『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』 8/24/99
朝方なかなか眠れないのでなんとなく観た。映画そのものはそれほどおもしろくなかったが『オースティン・パワーズ』を観た直後に本物の007を観るとめちゃくちゃおもしろいことに気づく。なんせやっとることはおんなじなのである。007が悪の組織に忍び込み、発見されて逃げながら末端の兵士などを撃ち殺すのを観るたび、ああ今殺されたあの男はもしかするとジョン・スミスとか山田太郎とかいうような名前の生真面目ないいやつで友達も多く家に帰れば妻も子供もいて、家では奥さんが夕飯の支度をしているときに電話が鳴るので出てみると大変残念なことですがたった今ご主人は突如侵入してきたイギリスの諜報部員の携帯電話によく似た秘密兵器から放たれた謎の青い炎で焼き殺されましたとか知らされて、泣きながら子供を抱きしめ悪の組織の手下でいることはつらいこと、などと言っているのだろうなあと考えてしまう。
しかし前作『ゴールデン・アイ』(だったかな?)もそうだったがボンドカーの扱いがひどくて笑える。BMWが大金を支払って使ってくれと無理に頼んだとかいう噂も耳にするが、実際スタッフたちの「こんな車使いたないのになあいややなあ」というつぶやきが聞こえくるようだ。前はオープンカーだったが、これはまったく活躍しないままアメリカ人のおっさんにあっさり「欲しかったらやるわ」と譲ってしまったし、今回はボンドはほとんど運転せずリモコンでおもちゃみたいに動かしながらずたぼろにこわし、あげくのはてに駐車場ビルの屋上から落としておいて物陰からにやりと笑うのである。まったくBMWが嫌いだとしか思えない。実際この映画を観てBMWによいイメージを抱く人は少ないのではないだろうか。ものすごくかっこ悪かった。
とはいえこの007映画の最大の欠点はボンドガールが不細工なことだ。あれはいかん。
『オースティン・パワーズ』 8/23/99
WOWOWでやっていたので観た。もうすぐ公開される続編の方はえらく評判になっているが、この一作目の方はほとんど話題にもならず近くの映画館でもやっておらず、観たかったのに観られなかったのである。この差はなんなのだろう。
いやあしかしおもしろかった。オースティン・パワーズも他のキャラクターもいいがドクター・イーブルがひたすらおかしい。ものすごいキャラクターである。映画のあと、続編の方の紹介番組もやっていて、ドクター・イーブルがタイムマシンに飛び込んだもののスイッチが入っておらず壁にぶつかってひっくりかえるというシーンを「ドリフ世代にも受ける」みたいに紹介しておったがそれはどうかなあ。あのシーンがおかしいのは、ドリフ世代でなくてもすでにあたりまえの「ぶつかること」ではなくて、その直後大あわてで立ち上がったドクター・イーブルが無理矢理平静を装いながらちょっと寂しそうに"I'm
OK."と言うときのなんともいえない雰囲気なのではあるまいか。たしかに「おバカ映画」にはちがいないが、ただのバカではなくてかなり計算されたバカだと思う。ものすごい才能によって作られているのを感じて感動さえ覚えるほどである。けれど「ぶつかる」のを笑う、あるいはぶつかっておかしなことをやっているが馬鹿馬鹿しくてそれほど笑えないと感じる人にとってはこの映画、ただのアホな映画にしかすぎず、そういう人がギャグ=アホ=誰でもできる低俗な文化と解釈するのだろう。アホはおまえじゃ誰に怒っとるんじゃ。
いやほんま 8/22/99
くりぬいてどないすんねんな。
いやしかし 8/21/99
なんでくりぬく。
むかむかする 8/20/99
ローソンで『GOD』を発見した。なんらかの理由で今回は送ってもらえなかったようなので買おうかと手に取りとりあえず自分の作品が載っているかどうか確認する。ちゃんと載っていた。よかった。しかし。ふと見慣れないルビがあるのに気づいて思わずその場で「くそっ」と叫んでしまった。「刮ぐ」と書いてあったものをわざわざ濁点を取り「刮く」と変えたうえルビは「くりぬ」と振ってあるのである。なんで刮ぐが「くりぬく」なんじゃどこにそんな読み方があるなんで著者校のときそのまま出しているのに本になるとこんな変なルビが付くのだわからなければ放っておいてくれ前後から判断してここで「くりぬく」わけがないとは思わんのか「こそぐ」じゃこーそーぐーっ。むかむかしたので買わずに帰る絶対買わんあああ買うもんか。ああむかむかするなんなんじゃあれは。
『最悪』 8/19/99
奥田英朗『最悪』(講談社)読了。この著者の『モノマガジン』のエッセイが好きで前から名前は知っていたのだが小説は初めてである。『ウランバーナの森』という作品もあるらしく、さっそく探してみようと思う。『最悪』は帯に「ハリウッド映画を観ているよう」と大きく書いてあるのでそういうノリなのかと思って読んだが全然違った。めちゃくちゃおもしろいが「ハリウッド映画」というのとは別のおもしろさではないか。「TBS系列王様のブランチ」とその下に書いてあるけどこれがなんのことなのかぼくは知らない。どういう意味で「ハリウッド映画」なのだろう。ぼくは典型的なハリウッド映画も大好きだが『最悪』の場合、少々強引な展開でもおもろかったらええやないけというようなところはなくもっと緻密に書き込まれているし、ああおもしろかっただけでさらっと終わるわけでもない。リアルな人物造形と心理描写でぐいぐいひっぱって最後に大爆発する、恐れ入りましたと言いたくなるような「小説」である。ラストはぼくならまったく違ったそれこそハリウッド的な感じにしてしまっただろうし、下手をするとこれを肩すかしみたいに感じる人もいるかもなあと思うのだが、なるほどこの方がよほど心に残る。エンターテインメントとして小説はどうあがいても映画に勝てないのかというとそういうわけでは決してないとぼくは思いたいので『最悪』みたいに登場人物たちにとことん感情移入のできる「これぞ小説」と言いたくなるような作品に「ハリウッド映画みたい」などと書かれていると、なんとなくむっとする。
で、『GOD』は来ない。ものすごくむっとする。
『GOD』は来ない 8/18/99
待てど暮らせど『異形コレクション「GOD」』は届かず、あちこちでもらった買ったというのを読んでいらいらする。仕方なくローソンや本屋を探すがやっぱりない。ぼくの作品は本当は載ってなくてみんなしてぼくを騙しているのではないかという気がものすごくしてきたのだが誰か読んだ人いますか。
合気道の道場へ行った 8/17/99
スティーブン・セガールの映画を観るたびにやってみたいなと思っていたのだが、とある友人がとても参加しやすい合気道の道場があるぞというので行ってみた。初めてなのに稽古前にはなんの説明もしてもらえず、黙々とスウェットパンツに穿き替えていきなり稽古に入る。もちろん他の人はみんな道着である。見よう見まねで柔軟体操をし、それが終わると師範が前で技を見せてくれ、それをそばにいる誰かと組んでかけたりかけられたりするというのを繰り返す。なにがなにやらさっぱりわからなかったが、何度かやっていると巨漢の白人(本当にいた)をすこーんと倒せることもあったりしてなかなかおもしろい。一時間半ほどの稽古であったが、最後の方にはおおこれこそセガールがやっとったようなやつやないかと嬉しくなるようなものすごい技があって、小柄な師範が大きな相手をどったんばったん軽々とひっくり返すのを見てはしゃぐ。すぐにやってみたが全然わけがわからず、高段者のおじさんにものの見事にひっくり返され腕をねじ上げられ、それでもなにをされたのかやっぱりさっぱりわからなかった。おもしろかったのでまた行こうとは思うのだが、こんなことができるようになったからといってなんになるのかなともちょっと思う。誰かに殴りかかってこられるというようなことがこの先ぼくの人生において発生するとはあまり考えられないからなにあんた殴りたいのかかかってきなさい。
異形コレクション『GOD』が来ない 8/16/99
仮住まいへの転送のため郵便が遅れているのかと思って待っているのだが、まだ来ない。他の人のところへはとっくに来ているらしいのでいらいらする。もしかして今回はもらえないのかなと思ったのでローソンに買いにいったらまだ売ってなかった。ジュンク堂まで足を伸ばしたがやはりなかった。ひょっとするとこれはなにかの陰謀なのではあるまいか。ぼくに『GOD』を読まれると困る人物あるいは組織が存在するのではないか。久しぶりに知り合いの顔すべて思い出して全員を疑う。
郵便 8/15/99
現在実家の方が仮住まいになっているため実家宛の郵便物を転送してもらっているわけであるがこれが異様に遅い。まあ、わざわざ手間をかけてもらっているのだから、しようがないといえばしようがないのだが、それにしてもちょっと時間がかかりすぎるような気がする。もうちょっとどうにかならんものか。
と、少々いらいらしているときに郵便局から仕事場に電話があって、今から代引き郵便を届けるが釣り銭のないように金を用意しておけと言う。そんなこと急に言われてもと思いながら財布を見ると一万円札と小銭しかなく、釣り銭が必要である旨を伝えると「じゃあ、また明日にでもということで」などと言うのである。郵便局というのはそういうものなのかと思ったので「ぴったりの金額を用意できない場合は届けてもらえないんですか」と訊いてみた。すると向こうはいきなりたじろいで「いやまあなんですけどその明日でいいですか」とよくわからないことを言う。そこで「今日はだめなんですね」と念を押すと「いやそのちょっと時間がかかったりしてその、で、どうします?」こっちが訊いておるのだとこのへんでかなり腹が立ってきて「どうしますて、釣り銭がないから今日は届けられないと言うのなら明日にしてもらうしかないでしょうが」と大声を出したら「では、釣り銭を用意しますので三時半頃におうかがいします」だと。最初からそうしろ。
女子高生が路上で 8/14/99
本屋へ行こうと明石の裏通りを歩いていると自転車に乗った制服姿の女子高生がスカートを翻してぼくを追い越していった。髪は手入れの行き届いた黒髪でセミロング、すらりと脚の長い実に清潔そうな美少女である。太股まですっかり見せながら走っていくので今日は得したなあとほくそ笑んでいると、その女子高生は十数メートル行き過ぎたところで突然民家の玄関先に自転車を停め、その家に用事なのかはたまた自分の家なのかとじろじろ見ているぼくにちらりと一瞥をくれたとたん、驚いたことにスカートを脱いだのである。
下にもう一枚極端に短いスカートを履いていたのだがぎょっとした。制服のスカートを自転車のカゴに放り込むと、今度はブラウスも脱ぐ。これも下にTシャツを着ていたのだがやはりぎょっとした。ブラウスもカゴに入れると残念なことにそれ以上は脱がず、ふたたび自転車にまたがって今度はもう脚のほとんどを見せながら颯爽と走り去っていったのだった。
いったいあれはなんだったのだろう。家族には学校に行くと嘘をついて家を出て途中で私服に着替える、というようなことであればなにも路上で脱がなくてもよかろう。しかもあきらかにぼくの存在を知っていながら見えるところで脱いだというのも解せない。大阪のどす黒い女子高生なら道ばたで素っ裸になって笑っていても全然驚かないが、ちゃんとした清楚な感じの娘だっただけに不思議である。またやってくれないかなあ。
向かいの家の災難 8/13/99
昼過ぎに仕事場でうんうん悩んでいると、すぐ近くで怒気を孕んだ車のクラクションが長々と響き渡った。いったいなにごとかと窓から顔を突きだしてみると、クラクションを鳴らしているのは斜め向かいの家の主人とおぼしき男性で、看護婦寮を訪ねて来たらしい違法駐車の車のせいで自分の車が出せないことに怒っているようだった。さすがにガレージをふさぐように停めてあるのではなかったが、道の向かい側に停めてあり、ガレージの幅が狭いのと道が狭いのとで車は出ることができない。どこのアホじゃ早よどけんかあっという怒りのクラクションであったわけである。
しばらくすると看護婦寮から小さいおっさんがあわてて出てきて、声ははっきりきこえなかったが、すぐに車の持ち主を捜しますのでごめんなさいねえ、なんでわざわざここに停めるかなあ困るなあ、看護婦というのはみんな馬鹿ばっかりなので訊ねてくる客も似たような馬鹿なのですすみませんというようなやりとりがあったようである。
やがて若い兄ちゃんが、さっきのおっさんに連れられておどおどとやってきたが情事の真っ最中だったらしく顔には口紅がつき上半身は裸でズボンもまだきっちり穿けておらず左手には丸めたティッシュを持ちあろうことか右手には脱がしたばかりの女性の下着がぐっしょりと握りしめられているなどと書きたいところだがこのへんはもちろん嘘である。一応きちんと服は着ており、ぺこぺこ頭を下げながらなにごとかを口にした。向かいの主人が固まった。なんだどうしたと仕事場の窓から落ちそうになりながら見ていると、この若い男どうやら車のキーを車内に閉じこめてしまっているらしいのである。動かそうにも動かせない。
このアホが看護婦となにする前に車の方なんとかせんかあお前の頭はセックス専用かあっ、と向かいの主人は怒り狂うかと思ったのに全然怒り狂わず呆れたように黙ってしまっただけだった。JAFを呼んだようでしばらくはそれを待つ。なぜか寮のおっさんが一番申し訳なさそうにしていて落ち着きがなかった。
三十分ほどしてJAFが到着しアホの車はいなくなったのだが向かいの主人の受難は終わらない。車のエンジンがかからないのである。セルの音はするのにエンジンがかからない。ボンネットを開けていろいろ調べたりいじってみたりするがやはりエンジンはかからず、十分ほどもあれこれやってからあきらめたのかいったん家に入った。しばらくは静寂が戻ったのだが三十分ほどしてオフロードバイクに乗った若い男がやってきた。車に詳しい知人を救援に呼んだものと思われた。さっそくボンネットを開け、ちょこっとなにかを触るとエンジンがかかり、ああよかったよかったこれで万事うまく、と思っているところへその家の小学校低学年くらいの男の子が帰ってきて、おっバイクやかっこええなあと駆け寄ったとたんバイクが倒れ子供はその下敷きとなり怪我をしてぎゃーぎゃー泣き喚く。あわてて引き起こしたバイクが今度は車の方へ倒れ車のボンネットをへこませブレーキがどこかにひっかかり、こりゃいかんと車の方を少しバックさせようとしたおじさんいろいろいらいらして腹が立ってしまっていたんですなあかわいそうに。車はとんでもない勢いでバックしてどっすんばりばりと家の玄関に突っ込んだ。
あまりのことに居合わせたもの眺めていたもの通りがかったもの全員呆然としていると、どこからともなくちゃらちゃらしたスポーツカーがやってきてふたたびガレージの向かいに駐車した。そして車から降りたやはりちゃらちゃらした格好の若い男は向かいの家の惨事にはまるで無関心なまま鼻歌混じりに看護婦寮へと入っていったのだった。
あとのことは知らない。
エリカ・バドゥとシシカバブーくらい違う 8/12/99
というのを思いついた。それだけ。
シンクロニシティ 8/11/99
なぜかシンクロニシティの嵐。先日のユナイテッド・ジャズ・オーケストラのライブでやったジャコ・パストリアスという人の曲がえらく気に入ったなあと思っていると三階の友人の部屋でそのレコードを見つけ驚き、ネット上では津原泰水氏の掲示板でその話題が発生しているのを目撃し、翌日神戸福原にある友人の飲み屋へ行くとウェザー・リポートの「バードランド」がかかっており、この曲昔流行ったなあなどと話をしているうちこれもジャコ・パストリアスのバンドであることを知る。ついこのあいだまで名前を耳にしたことさえなかったのに。
朝日新聞の夕刊で連載の「陰陽師 生成り姫」を読んでいると貴船神社が出てきて、そういえば昔吉本で「貴船なんとか」という女性演歌歌手と仕事をしたことがあったが、あの人は貴船神社から名前を取ったとか言っておったなあとふと思い出したとたん点けっぱなしにしていたテレビのニュースで貴船神社が映り、おおこれは偶然やなとさほど気にもせず、しかし引っ越しのとき実家から運び込んだまま放っておいた古い書類などの詰まった段ボールがなぜか突然邪魔に思えたので整理していると、その演歌歌手を使った梅田花月ポケットミュージカルの台本が出てきた。関係ないが月亭八天さんもそのときいっしょに出ていた。
新聞に挟まっていた宅配寿司屋のチラシに「軍艦うに」とか「軍艦いくら」とかやたらと軍艦軍艦と書いてあるのでこれはなんなのかと不思議に思い、しばらく考え込んでどうやら海苔を巻いてその中にネタを入れる形のものであるらしいと気づいて納得し、安心してアホ犬よだれの散歩に行くと、やっと新しい環境に慣れてきたとはいえやはりなんでも怖がり、特にアスファルトを嫌うので田圃を見つけるとわあ草や泥やっとばかり跳び込んでざぶざぶと走り回るため、その結果身体の下半分が泥で汚れて焦げ茶となり、あたかも軍艦のような姿の「軍艦いぬ」と化す。
またしても腕時計 8/10/99
少し前のことになるが、また腕時計を買ってしまった。去年七月に買った(訳あって削除)の調子が悪いので、いつでも交換するという店主(どういうわけか四ヶ月くらいで別の人になる)の言葉を信じて持っていったら本当に新品と交換してくれて、相変わらず親切やなあなどとなごんでいると前から欲しかった(訳あって削除)の(訳あって削除)もそこにあってもっとまけろと値切ったところどんと安くしてくれたのでそれもつい買ってしまう。通常では考えられないくらいとにかく安かったのだがまさか偽物ではあるまいな。というわけで、ぼくが(訳あって削除)の腕時計をしているのを見てもそれはユダヤ人から買った(訳あって削除)なのであまり気にしないでください。
ぼうっとした 8/9/99
なんだか一日ぼうっとする。なにかひとつめちゃくちゃくだらないことを思いついたのだが、それが思い出せない。とてつもなくくだらなかったことだけは覚えているのだがなんだったかなあ。どのくらいくだらなかったかというと思いついた瞬間これは田中啓文に教えてやればきっと喜ぶはずだと思ったくらいくだらなかったのである。気になる。
有馬温泉でジャズ 8/8/99
ユナイテッド・ジャズ・オーケストラの本番である。大阪のスタジオで練習してから有馬温泉へというスケジュール。昨日のサイレントブラスのおかげではないと思うのだが、練習ではけっこう鳴るようになっていて驚く。かなり気分をよくして有馬温泉へ。乗せてもらった車がセリカのコンバーチブルで、空を眺めながら風で髪の毛ぼさぼさになりながらさらに気分をよくし、現地で温泉に入ってのんびり落ち着いて本番の演奏はもうどうでもよくなる。
舞台は温泉街のど真ん中の川岸にあって全然ジャズをやるような雰囲気ではなかったが、まあまあ人も集まって二回も演奏した。驚いたことにトランペットパートは椅子がなく、立ったまま吹くのであった。吹奏楽関係ではこういうのも何度かやったことはあるものの、なにからなにまでクラシックのオーケストラとは勝手が違うのでとまどいまくり。一回目のステージが始まって、けっこうびびっていたのだが途中でふと「かなりいいかげんにやってもまったく問題ない」ことに気づいて突如リラックスした。二回目は缶ビール(なんと飲み放題)を二本飲んで臨んだせいもあってだらだらにリラックスし、まあまあハイトーンも出たしリズムにもちゃんとついていけたしで、今までで一番きちんと吹けて非常に満足である。どの曲もおもしろかったが特に「チキン」という曲はめちゃくちゃかっこよくて、吹いていて実に幸せ。こういう気分になるのはほんまに久しぶりやなあと思ってわくわくした。また呼んでね。
やっぱりラッパが鳴らない 8/7/99
明日本番なので、ちょっとだけでも練習しておこうと思いヤマハの「サイレントブラス」という、数年前に買ったものの一度試して二度と使わなかった機械を出してきてトランペットを吹いてみた。このサイレントブラスというのがどういうものかというと、ラッパのベル(一番先の花びらみたいに開いたところ)に栓をしてしまい、そこからエレキベースのように音を電気的に拾ってリバーブとかいろいろエフェクトをかけ、それをヘッドホンで聞くとあら不思議他の人には聞こえないのに吹いている人は教会やホールで吹いているような気分になれる、という日本の家庭事情を考慮した練習用ミュートである。
トランペットというのは息を吹き込んで鳴らすものであるので、ベルに栓をしてしまうと当然息は抜けず音も出ない。吹けなくなるのだから静かなのはあたりまえだと思うのだが、ほんの少しだけ空いた隙間から出る息で、ちまちまと吹くことがかろうじてできる。つまりまともには吹けないわけで、ちゃんと練習になっているのかどうかさっぱりわからないのだ。
とりあえず、リズムの難しいところだけ何度か練習したのだが、やっぱり全然吹けないのだった。
"STAR WARS EPISODE 1 THE PHANTOM MENACE"ふたたび 8/6/99
ただの券があるのでいっしょに行こうと、最近復活の兆しを見せている謎の作家輝鷹あち氏に誘われてエピソード1をまた観にいく。前回は大久保のワーナーマイカルで観たが今回は神戸三宮の阪急会館。震災で潰れて建て直されたのだが、新しくなってから行くのは初めてである。震災前にくらべてずいぶん客席も少なく狭くなってしまっていたので驚いた。ワーナーマイカルみたいなスタジアム形式の座席に慣れてしまうと、平地に並んだ座席からスクリーンを見上げるスタイルはかなりつらい。それなのに料金が大人二千円となっていてむっとする。ワーナーマイカルは千八百円だったのである。設備の悪い方が高いというのはどういうわけか。まあ今回我々はただなのでいいのだが、やはりなんとなく腹立たしい。
しかしなにが腹立たしいと言って(以下映画の内容に触れますので観てない人はちょっと危険)最後のスタッフロールが全部終わる前に灯りが点いて音声も切れてしまったことである。最後の最後にダースベイダーのコーパー、コーパーの呼吸音が入るのに、最初の「コー」あたりでぶつっと切りやがったのだ。輝鷹さんに「今のはダースベイダーのコーパーコーパーやってんで」と教えてあげると、ほんまかいな雑音やと思うたがななんでそんなん切るんやあほちゃうかと憤っていた。「もう一回ワーナーマイカルで見なおす」そうだが、たいていの人は一回観たら終わりだろうから今日観た人はラストにダースベイダーのコーパーが入っていたことを知らないままなのである。金取って見せるんならちゃんと全部きっちりやるべきであろうなに考えて映画館やっとるんじゃ脳味噌ないのか。売店の若い連中は客が来てもずーっとみんなで集まって世間話をしながらげらげら笑っているし、あんな映画館二度と行くものか。
明石で焼き鳥 8/5/99
担当編集者が明石まで来てくれたので焼き鳥などを食べながらスノーボードの話をする。まあそういうことで。
進まない 8/4/99
進まないなあ。
バートンスノーボードのカタログ 8/3/99
去年も一昨年もなんにも買っていないのに今年もバートンがカタログを送ってきてくれた。かっこいいので嬉しいのだが、昔からバートンのカタログは英語をそのまま訳しただけみたいな変な日本語満載でものすごい。「スノーボーディングのベストなことは、見かけのカッコよさではなく、どのように感じるかです」「我々が素材を作る方法は、目的に応じて最高のパフォーマンスを提供します」「このアリーナでは話をしたり、このシチュエーションからの脱出方法を見つけることはできない」「すべてのライダーに精神錯乱を伴わないアクセスを」わけわからんのである。
仕事に明け暮れてはいたものの 8/2/99
前から約束していたため友人の医学博士にひっぱられて大川興業コントライブ『すっとこどっこい神戸版Vol.3』を観に行く。まったく笑えないものもいくつかあったが、ひとつだけ不覚にも大爆笑してしまったネタがあった。とても書けないけど。
やたらと辛いものばかり出る居酒屋で軽く飲んでから仕事場に戻る。やはり不気味な動悸がときどき起こり集中力は散漫となる。『猿』書いていてちっともおもしろくないのだが大丈夫だろうかと不安になり吐き気がしてきたので気分転換にと、電車で読んでいたS.ハンターの『ブラック・ライト』の続きを読みかけたらしばらく読みふけってしまい、ついつい下巻に突入するがおおこんなことしとったらあかんのじゃと気づいてあわてて本を閉じる。明け方までがんばって全然進まず。本当につらいときは、なんにもしなくていいんだよ。みつを。言うとる場合か。
ラッパが鳴らない 8/1/99
ユナイテッド・ジャズ・オーケストラの練習に参加する。ほとんど寝ていなかったせいか電車で大阪に向かっていると、なにもしていないのに動悸が激しくなり吐き気がしてきた。死ぬのではないかと恐怖におののきながらよろよろと待ち合わせ場所へ行くと、もっと死にそうな顔をした田中啓文氏が地べたに崩れていたのでなぜか安心する。
しかしラッパは全然吹けなかった。ブランクのせいももちろんあるが、毎日練習をしていた絶頂期でもあの譜面は初見では無理だったと思う。だいたい五線譜の上に何本も何本も横棒があるようなハイトーンなんか、今まで見たことなかったからなあ。数えないとなんの音かわからんのである。
音の出ないのはもうどうにもならないような気がする。吹き始めて十分くらいでばててしまって音が出なくなる。なんとなく音が出にくいのではなく、突然掻き消したかのようにぱっと音が消えるのである。出るのはすぱー、と息だけになってしまう。無理に絞り出すので昨日今日ラッパを吹き始めたばかりの小学生みたいなひょろひょろした音しか出ず、ここまでだめになるものかと感心した。
小説を書くというのも、何年も書かなかったら全然だめになってしまったりするのだろうか。