君は五月のスフィンクス 一刻の休息の いかりを桜の掛の下におろす 君は泣くも笑うも自由だから 青空 かろやかにお道化たまえ |
青い空に 私は昨年の11月に引越しをしました。庭とはとても呼べないわずかな地面に、一本の桜の木が、しっかりと根を張って樹齢を重ねています。格別桜が好きというわけでもなかったのですが、冬の落葉を根に置いたり、玉子焼きを作ればその殻をまいたり、酔えば小便をふりかけなどなど、ひと冬枯木を眺め、花の咲くのを楽しみにしていました。早春のある朝、新聞を取りに外に舳てみると、たった一枝に待ちこがれた花が開きかけていました。やっと咲いてくれた、これからぱっと、ぱっといくんだ、桜だ桜だ…と。 しかし今年の天界の機嫌はよほど悪かったのか、花は咲きたがるのに雨が降ったり寒かったり、それでも七分くらいまでは開いてきたのですが、私の桜はそこでおしまい。ポトリポトリ七分咲きのまま落ちてゆきました。なんともくやしい私の早春賦だったのです。そしてこの時候に、友がひとり足早に人生を駆け抜けていってしまいました。 「青空にドン」は、こんな春先きの桜の木の下で、うつらうつら夢見られたものです。このおどりを、はじめてお会いする大阪と名古屋の皆様、そして、故谷川楕長に捧げます。たとえばおもちゃ箱のざわめき、壊れかけたものの笑い−−−ブリキの月うさぎ、首なし、放火魔、ライター、おしゃべり老女、ギリシャの春男、虫、タンポポ、だんご−−−鉛の兵隊は出てきませんが、皆、欠けたままのおかしな姿で、カタカタ、ドンドン、通り過ぎたり、ころがったりします。騒々しくて、馬鹿馬鹿しくて、滑稽で、けれどどこかひっそりしている、そんな景色をお見せできたらと思っています。 大きな劇場でやるのではありません。手に取るように観ていただけたら、うれしいのです。 とりいえびす |
大阪・心斎橋島之内協会/名古屋・大須七ッ寺共同スタジオ 1987年9月15日〜20日 舞踏手 鳥居夷・田中陸奥子・紺野尚子 STAFF 照明:阿部善郎 音響:大阿久和夫 舞監:丸山良尚 写真:大畑早苗 宣伝美術:ギガグラフイツク Special Thanks: 劇団日本維新派、galleryシヤンソニエ、池内琢磨、七ツ寺共同スタジオ、キョードー名古屋 企画・製作:舞踏舎 天鷄 |