『ノクターン』は観客をその研ぎ澄まされた緊張感で包んで離さない。
次から次へと繰り出されるイメージは、醜さ、奇形、狂気、畏怖といった、呪われた美に満ちている。
秋色の衣で形づくられた塔に灯がともされ、シュールな妖精たちの鳥かごになる。その中で、最後に現れる主宰の鳥居えびすの黒塗りのからだは、衰弱のあるいは異形の者の象徴であるかのようだ。
やがて鳥居は鳥かごの脇をすりぬけると、この世の者ではないものへと変身を遂げる。
時を刻み、混沌を孕んで動く彫像と化すのであった。
───そしてこの作品の一番の見せ場は、やはりなんといっても、小柄だが恐ろしいほどに目を赤く見張らせて踊る田中陸奥子の、集中力と抑制との天賦の才によって表される、静かに燃え立つパッションであろう。
作品紹介→WORKS / 1994 ノクターン
出典HP→シカゴ・トリビューン