土地家屋調査士法と測量法との相関関係
(1)土地家星調査士法
土地家星調査士法第2 粂は「調査士は、他人の依頼を受けて、不動産の表示に関する登記につ き必要な土地又は家屋に関する調査、測量、申請手続又ほ審査請求の手続をすることを業とする」と規定しており、登録した調査士以外のものは調査士の業務を行うことはできないものとされております(調査士法第19条)。
調査士は、その業務を行うにあたっては、法令、通達及び調査士会の制定する要領(調査測量 実施要領)等に準拠して公正かつ誠実に業務を行い、迅速かつ適正に事件を処理しなければなり
ません。(調査士法第1 条の2 )。
(2)測量法
測量法第2 条は「土地の測量は、他の法律が定める場合を除いて、この法律の定めるところに よる」と規定しています。 測量法は、測量について@
基本測量、A 公共測量、B それ以外の測量の3 種類に分類し、この うち、公共測量ほ、一定規模以上(路線の長さ6kmを越える多角測量や、面積が7?を越える面積測量等)
の、官公署が計画機関として行う測量に適用される測量であります。
この公共測量については、これを実施する計画機関が作業規程を作成して建設大臣の承認を得 る必要があります。(測量法第33 条)。 測量法第33条に基づき、建設省が計画機関として公共測量を行うために定めた作業規程が、「建
設省公共測量作業規程」(以下「作業規程」という。)であります。
「作業規程」は、〈土地及び境界等について調査し、用地取得等に必要な資料及び図面を作成 する作業〉を「用地測量」と定義して(作業規程第42 4条)、さらに、作業項目を、資料調査、境界確認、境界測量、面積計算等に細分し、それぞれについて作業内容を定めており(作業規程第425条)また「作業規程」ほ、測量法に規定する測量業者以外は、公共測量を請け負うことができない旨を規定しております。(作業規程第7
条)
そこで、測量法の公共測量の規定、そして「作業規程」の「用地測量」の規定から、「用地測 量」は、測量業者の専門分野と解されております。
測量法と土地家屋調査士法は、測量に関する一般法と特別法の関係にあり、登記を目的とする 土地の調査、測量の業務は、調査士の専門分野と解されております。
(3)法秩序維持のための諸原理
我国において、法としての全体の数は数えきれないほどの数になりますので一見すると、はなはだ錯綜しているように思われます。現実に規定の文言のうえで表現的には矛盾、衝突する点も実際にあるようにとられますが、そこには一定の原理というものが働いて、優先して適用される法とそうでない法との区別がたてられ、全体として法秩序の統一が失われないようになっております。
一定の原理には次の4 つがあります。
- 法の所管事項の原理
- 法の形式的効力の原理
- 後法優先の原理
- 特別法優先の原理
土地家屋調査法と測量法との矛盾を解決するためには、上記「B法の形式的効力の原理」と「D特別法優先の原理」を用いれば解決できますのでこの2つの原理について説明いたします。
@法の形式的効力の原理とは
我国の法の全体系は、憲法を頂点に法律、政令、省令、地方自治体の条例というように段階的構造をもって組立られています。それぞれの法形式の間には、優劣の原則が定まっていますので法形式を異にする2
つ以上の種類の法の間で内容の矛盾、衝突する規定が設けられた場合には、この原則に従っていずれか一方の種類の法が優先して適用され、他方の法はその矛盾衝突する限度において適用されないことになっています。これを「法の形式的効力の原理」といいます。
具体例をあげれば、憲法は他のすべての種類の法に対して形式的効力が強いし、法律は政令よりも強い形式的効力を有しています。
この原理から土地家屋調査士法と測量法との優劣をみた場合にどうなるかと言いますと、どちらも国の最高議決壊関である国会によって法律として成立している法でありますから同格であるといえます。この様に法律で同格のときに、お互いの条文の文言の矛盾、衝突が生削除じた場合どちらを優先すべきかについては、次に説明する「特別法優先の原理」により解決することができます。
A特別法優先の原理とは
ある事項について、広く一般的に規定している法と、その内のある特定の人、物、地域、場所、時点、期間等について、その一般的規定と違った内容の定めを規定している注がある場合に、前者を「一般法」、後者を「特別法」といいます。この場合、常に特別法が優先されますのでこれを「特別法優先の原理」と言っています。
測量法第2 条には「土地の測量は、他の法律に特別の定めがある場合を除いて、この法律の定めるところによる。」とあり、同法第3 条には「この法律において測量とは土地の測量をいい、地図の調製及び測量用写真の撮影を含むものとする。」という規定もあります。
一方、土地家屋調査士法と測量法とについて具体的にみてみますと、土地家屋調査士法第2条に「調査士は他人の依頼を受けて、不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査、測量、申請手続きまたは審査請求の手続きをすることを業とする。」という条文があります。
このことから土地家屋調査士法第2 条の「不動産の表示に関する登記に必要な土地に関する 調査・測量を業とする」という規定からみて前述した特別法優先の原理の、ある特定の場合を定めた法に該当しますので「特別法」となる訳です。
他方、測量法は第2 条、第3 条の文言から広く一般的な虎定をしている法律であり「一般法」と言えます。
(4)「用地測量」業務と土地家屋調査士の業務の差異
@地積測量図の作製は、「用地測量」には規定されていない業務であります。
「用地測量」は、公共事業の用地取得等に必要な資料及び図面を作成する作業を目的としており、最終的には、用地取得のための登記、つまり地積測量図作製に関連した業務であります。
しかし、登記のために、最も重要な地積測量図についての規定はありません。このことからも、地積測量図の作製は「用地測量」の業務でないことは明らかであります。つまり、測量業者の専門業務ではなく、調査士業務の専管業務と理解されるものであります。
A登記申請書、登記申請図面等、不動産の表示に関する登記の申請手続に関する規定は、当然ながら「用地測量」の作業項目にはありません。
したがって、登記申請手続に関する業務は、土地家屋調査士法による土地家屋調査士の専管業務であるといえます。
以上、「用地測量」業務と土地家屋調査士の業務とについて、それぞれが根拠とする「作業規程」と、「調査測量実施要領」について比較しますと、「用地測量」における筆界の確認作業については、登記のため必要な作業としての、緻密さに欠けると評価せざるを得ません。
また、「用地測量」の調査、測量成果をそのまま利用して、地積測量図を作製することは、より専門性が必要な登記を目的とする添付図面としては、地積測量図の持つ性格からみても適格性に欠けるものと指摘せざるを得ないところであります。
したがって、従来から行われていた「用地測量」の調査、測量成果を利用して官公署の嘱託職員が登記嘱託書を作成する場合には、土地家屋調査士と同等程度の能力がある嘱託職員であっても、用地測量による成果が登記を目的とする地積測量図の作製資料としても適切であるかどうかについて、現地の点検作業を行うなど、「用地測量」では不足する部分を補う作業が必要になるのであります。
したがって、最初から土地家屋調査士が地積測量図を作製することが、土地家屋調査士法に則しているといえるのであります。
それゆえ、官公署等からの嘱託登記事件の発注に対して、公共事業の適正かつ迅速な実施に寄与することを目的として、土地家屋調査士法第17条の6 により、各県公共嘱託登記土地家屋調査士協会の設立が認可されたものであります。
(5)新規発注「筆界確定測量」の必要性とその確立
現在、測量業と調査士業との間で問題となっている点は、測量業者が「用地測量」の成果から「登記用の地積測量図」を作ることにあり、逆に、その作業が最終的に登記に関連することから「公共測量作業規程による用地測量」を、土地家屋調査士が官公署から受託しようとする事にあります。
つまり、測量業と土地家屋調査士業の接点部分が問題を起こすのであり、接点以外の部分では全く問題は生じていないのであります。
では、どうしたら問額点をなくすことができるかを考えればよいことになります。
現行の建設大臣承認による「作業規程」から、応用測量の第4 葦、「用地測量」が削除されない限り、測量業が行う「用地測量」の違法性を確定することは難しいでしょう(測量法上では正しいが、調査士法上では否と思われる。)。そこて、私達の公嘱協会は、測量業が行う作業規程の第43
7条以後の作業として、建設省と折衝をして「筆界確定測量」の作業項目を独立させ、「筆界確定測量」を「調査士業務」として何らかの形で確立させることが、今後の調査士会や、公嘱協会の重要な課題であるものと考えられます。
現行の「用地測量そのものの違法性」として、測量業の行う用地測量作業の全部を調査士業務の前提測量として、調査士法に抵触するとして訴えることは無理があることから、用地測量に対応して、不登法・調査士法を根拠にして、新規発注業務として作業規程の最後の箇所から始まることになる、「筆界確定測量」を確立する事が必要であります。
測量法による現行の「用地測量」を尊重し、「用地測量作業」を存続させ、公共事業の円滑な推進に寄与することをもって、その成果品資料を参考として、「公共嘱託登記」に限定し、「公嘱協会」がその資料を利用し、「筆界確定測量」を実施すれば、両業界が、共存共栄することができ、今まで明確でなかった業域が整理され、両業界が安心してその業務を履行できることになります。
分離発注ではなく、「新規発注」として「筆界確定測量」が制度化されれば、従来から問題となっている、丈量図と現地との「不符合」が解消されることになり、法務行政をはじめとして、自治体、土地提供者等にも、安心と安全が確保されることになり、まさに国益に繋がる、新制度であります。
今すぐに両業界と、関係官公署等がこの新しい方策を制度として確立することに取り組み、充分な検討により、その実現のための努力をすることが課題であると考えるものであります。
