東京大学地文研究会天文部プラネタリウム

 東京大学地文研究会天文部は、学部1,2年生を中心として、毎年11月に開催される東京大学駒場キャンパスの学園祭「駒場祭」にプラネタリウムを製作出展している。このプラネタリウムは、ドーム直径10mと、アマチュアでは最大級の規模を誇り、各種の投影機からエアドーム、 上映される番組まで、全て部員の手によって自作されている。
 上映番組は「ソフト」と呼ばれ、毎年2年生の担当者が脚本を執筆、部員の出演で収録、編集して上映される。一般のプラネタリウムと同様、番組は投影機とスライドを組み合わせて、音声番組を流す形式であるが、単なる星空解説以外に、ドラマの要素を加味したソフトが作成されることが多い。ここに紹介するのは、そうしたソフトのために検討されたシナリオの案である。

東京大学地文研究会天文部のWWWページ




シナリオ・コンセプト

 通常プラネタリウムの番組では、季節の星座の探し方をたどって解説する星空紹介が行われる。星空を再現する本来の機能として当然の構成である。しかし、私は、星空解説とドラマ性の中途半端な折衷はあまり書きたくなかった。星座を紹介するならば、直に星を指しながら解説だけを充実させたいし、逆に、星語りに束縛されてオーディオドラマの自由度、物語の流れが損なわれるのも避けたかった。そのため、「星空解説」を番組として独立させて別途上映することと交換に、ソフトでは作家性を優先し、「星にまつわる物語」を語るストーリーを重視して説明的な星の扱いは排する試みをした。結果、上映作品ではまともに星が見られずあらゆる視聴者に批判されるものを作ることとなってしまったが、ここに紹介した諸作品も、星の見つけ方の案内やありきたりの神話紹介ではなく、星という天象からイメージを膨らませた物語そのものを星空の下で楽しんでほしいという願いを持っている。




端書に代えて

 今回、過去の作品をサルベージ、及び再び加筆、補完していく作業で、当時はそれなりに納得していたはずのシナリオが、改めてみると恥ずかしいほど粗末であることに気付いた。シナリオのエッセンス、骨格としては、確かな技術を持って削り出せば充実したソフトになるという自負はわずかながらある。しかし、残っている断片は必ずしもそのイメージを引き伸ばすことができているとは言えず、大部分を今回執筆したソフトに関しても、当時のスケッチに引きずられていることを差し引いても、表したかったものが表現できているとはとても言い難い。悲しいかな、自分の筆力のなさを痛感する羽目となった。なお衝撃だったのは、当時ソフト担当者が必ず自信喪失の洗礼を受けるとも言われた先達の傑作ソフトを、執筆中ふと聞き直したときに、今更その完成度にショックを受けたことである。そのソフトに挑めるシナリオを、今になっても書くことができない自分に深い失望を禁じえない。