| タイトル | Suite Habana + MAGONIA + TR |
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| 名前 | S.Naito (管理者)さん |
| 日付 | 2005/05/09 22:01:19 |
| ・永遠のハバナ "生活"というもの、"人生"というものの美しくはない表情、重さを私は知らずに稚気ばかりで生きている。 むき出しの人間性や生々しい人情は苦手で、特にそれが日本のものだと耐え難い。 けれど、異国での人々の息づく眼差しや表情を描き出した映画に惹かれるのは、ある客体化ができるからなのだろうか。 ドキュメンタリータッチで明示されたストーリーは無い。 でも、人間の数だけの物語が、そして一つの国の物語が収まりきらないほど溢れ出している。 槌音が、水音が、足音がリズムを叩き出し、ラテンの音楽に乗って人々が歩いている。 でもそれは明るいイマージュの南米ではなく、生きている人々それ自身の心臓の音でもあるのだろう。 かつては華麗であった面影が朽ちかけて今の窮乏を一層惨めなものにしている。 人々は寡黙にそれぞれの勤めを果たし、命を繋ぐ。黙して苦悩に耐えながら、誰かを思う。 小さくとも賢明な人間の姿が愛しい。けれど余りにも儚く哀しい。 まるで、そのまま街並みと共に塵芥に散り果ててしまいそうな閉塞した空間。 流動し塗り替えられ続ける東京という街で画面に向かう私さえ、息が詰まってしまう世界が彼らの現実の全て。 それでも、夜に彼らは夢を見る。ホールで、ステージで、自分が願う何かになれる瞬間を探して。 その夢の他愛なさ、大きすぎる切なさ。夢が夢のままであることを彼らは諦めていはしないか。 彼らの顔には、笑みがない。常に、何かを耐え、あるいは惜しんでいるようだ。 ただ子供だけが見せているあの心からの笑顔は、やがて失われてしまうのか。 「ゲバラもジョン・レノンも、もういない でも、わたしたちの人生は、ここにある」 ああ、エルネスト。君はいったい何を残そうとしたのだろう。 君の中にある"フーセル"は、君を慕う人々の中に今も受け継がれているのだろうか。 彼らが夢を抱き未来を求める眼差しを取り戻す日が来るのだと信じたい。 ・マゴニア 「希望は最後に消えるもの」 その言葉が有り余る寂しさを突きつけるのは、自分の中にもいつか消える希望、憧れがあるからだろうか。 異国情緒、その中に漂い続ける誰かへの強い思慕、希求と、それが届かないことへの不安が潜在的に内にある。 想いがはじけ、掴もうとするその時、夢はそこで終わり、伸ばした手だけが残される。 もどかしさと苦しさとそして恋しさと哀しさ。 3つの物語はそれぞれ形は違えども、人はそうしたものに押しつぶされながら誰かを求めている。 けれどもなんと言うシュールさ。 人が切に求めているものは、それぞれが自分の内に閉ざした宇宙の夢に過ぎないのか。 この世の誰もが結局は何かを病んでいる、それに例外など無いのかも知れない。 それはニヒリズムやシニシズムなのか、それともちっぽけな人間を痛々しい世界ごと包むほどの広大な愛の眼差しか。 求めていたものは去っていき、待っていた人は戻らない。 それでも、MAGONIAは空を滑っていく。夢だけは残っている。 消えていく希望をそれでも抱き続ける人間は愛しい。 ・トップランナー 放映開始の当初から興味を持っていた番組である。 世の中、トーク番組はたくさんあるが、クリエイティヴを持つ人々が、体裁的でもなく砕けすぎるでもなく、 真剣にプライベートな言葉を語っていることを感じる。とてもVividなシリーズだ。 アニメーション監督は過去に何人も登場したし放映は面白かったが、彼が出ると聞いて初めてその場で聞きたいと熱望した。 所詮当たらないと覚悟はしていたが、あまりにもあっさり門は開かれた。 「TR 映像作家・新海誠」 NHKのスタジオで、多くの熱烈なファンに(恐らくは私もまたアニメマニア一様の思い込んだ表情で)交じって、 メイキングのテクニックに見入り、創作のエピソードに耳を傾けてきたわけで。 実に充実した貴重な経験を手にできて、クリエイティヴ関係では結構私は運が強いのかもしれない。 "ベタ"という言われ方もあるし、彼なりの型のあるキャラクター、ドラマは批評的な見方には向かないのかも知れない。 でも私は、限りなく私小説的、プライベート・エッセイ的な機微を透明に漂わせているその情感がたまらなく好きなのだ。 「彼女と彼女の猫」に日常の切なさと優しさを、「ほしのこえ」に痛切な一人の存在への希求を 描き出した彼の持ち味は、そうした短い物語、大きな世界のごく一部、近しい空気にこそ真髄があると思う。 「この人に見て欲しい、そういう相手を思って作ること」その言葉が腑に落ちた。 理解してもらえないかもしれない、けれどもたった一人に伝えたい、共感して欲しい、それだけプライベートで、 だからこそ混じりけが無くシンプルなものが伝えたいという思いそのままに真っ直ぐに飛んでいく。 ああ、私が何かを作りたい、語りたいと思っているのも、そういうことだったような気がする。 卓越した映像技術はこれまでの経験で培った揺るぎないもので、その上にご自身のemotionに正面から向き合っている。 一人の作家としての新海誠はもちろん私の憧れとするものの一つを具現しているし、 本当に穏やかで丁寧な人で、一人の人間としても親しみと信頼を抱け、この人と友好を持ちたいと本気で願っている。 新海監督の次回作、恐らく彼らしさが一層強く出てくるだろう次の作品に期待している。 | |