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最後の明石原人の骨 6/30/99

 SF大会で会う予定のとある人に明石名物「明石原人の骨」を買ってきてくれと頼まれていたので大久保駅前の厳松堂書店へ赴く。そうそう一見犬のうんこにしか見えないがちゃんと「明石原人」と明記してある本物であるそうあれあれ。驚いたことにもう売っておらず、店の人に訊ねるとちょっと待ってくださいと言って奥から「秘蔵」という感じで原人の骨を二つ持ってきてくれた。一つはぼくが数年前買ったのと同じやつで、もう一つは少し小さめでキーホルダーになっているもの。もうこの二つで最後です、と言うのでどちらも買ってしまった。もうないらしい。今回ぼくが買ったのが最後なのである。どうするみんな。ないとなると欲しかろうこの先明石原人が地球規模でブレイクしたときこの骨がどれほどの値段で売り買いされるかを想像するとあまりのことに頭がくらくらするほどである。どうじゃうらやましいか。

ビール券 6/29/99

 缶ビールについているシールを集めるとビール券をくれるというキャンペーンがあって、こつこつためた結果かなりのビール券が集まった。シールのために飲んだのは発泡酒だったにもかかわらず、発泡酒のような下世話なものではなくきちんとした缶ビール二本としか交換できません、というようなことが記載されていたのだが、近所の酒屋にそのビール券を持っていって、この券で交換できるビールと同じ金額分の発泡酒にすることは可能かと訊ねるとはいはいいいですよと麒麟淡麗2ケースくれた。めちゃくちゃ得をした気分である。どうじゃうらやましいか。
 
怒濤のメール 6/28/99

 なぜかどっとメールが来た。よく来るタイプのあっはっは大久保町読みました日記読んでます馬鹿ですねえほんとぼくって変ですかそうですかでわーみたいなのも数通あったが大半はねずみ講とエッチな出会い関係。いやいやまあ落ち着け。ねずみ講と出会ってエッチなことになってどうするのじゃ「ねずみ講への勧誘」と「エッチな出会いのチャンスのお知らせ」は別。しかしどうだろうねずみ講とエッチな関係になるというのもおもしろいかもとふと思ったのだがああなるほどわかったぞ。毎度毎度新手のねずみ講が出てきて、そのつど騙されてしまう人というのは馬鹿なのではなくねずみ講に入会して騙されることで性的な快感を得ているのではあるまいか。
 いやいやわからん。世の中いろんな人がいる。ねずみ講フェチがいたってなんの不思議があるものか。月刊『無限連鎖』みたいな雑誌なんかもあったりして、巻末のコーナーにはねずみ講フェチの人々からのお便りが載っていたりするのだ。
 毎号楽しく読んでおります。ねずみ講騙され歴三年の地方公務員です。五月号の特集「二週間で一千万円騙されるインターネット!」は大変参考になりました。私も先日、インターネット上で情報を五人に売るというタイプのものに参加したのですが二万円ほど儲かってしまいがっかりいたしました。しかし先月は二十五万円注ぎ込んで一円ももらえなかったばかりか警察に事情聴取までされて久々に全身が顫えるほどの快感を得ることができました。上からの連絡が途絶えて本部に電話をし「この番号は現在使われておりません」と言われたときのあの快感。ああまたやっちゃったなあって後悔する自分がたまらなく愛おしくなりついつい股間に手が伸びてしまいます。今そのことを書きながらもあの興奮を思い出して体がほてってくるほどです。いつの日か「原野」の方にも手を出して騙され妻子ともども路頭に迷うことを夢見て暮らしています。乱筆失礼いたしました。
 追伸、宗教関係の特集などはしないのですか。
 
モスラのたまごっちが死んだ 6/27/99

 引っ越しの最中に一度死んでしまったので、最初から育てていたのだがまた死んだ。今回はずっと気にして常に面倒をみていたのになんでなのかわからない。急にぴこぴこ言い出してそのまま死んでしまったのだった。突然死であった。結局モスラになるまで育てられなかったがもうええわめんどくさいし。よくわからないがとにかく腹立たしい。

引っ越し最終段階よだれ大移動 6/26/99

 朝起きて未練がましく『エピソード1』オールナイトの時間表などを眺めていると大久保駅前の映画館でもやると気づいて奇声を上げる。あわてて電話して時間など訊ねると全席指定ですでに半分近く売れており、今も行列がどんどん長くなっていますとのこと。すぐに行って並べばなんとかなる可能性はあったが、今日は引っ越しの最終片づけおよびアホ犬よだれを仮住まいへ運ぶ作業を手伝わねばならず、十分くらい悩んであきらめる。
 悩むと言えば古いおもちゃを捨てるかどうするかでずっと悩んでいたのだが、結局置いておくことにした。そんなにいろいろ買ってもらえるような境遇になかったので、たまに買ってもらったものは鬼のように大事に扱い、いちいち箱に入れて保管していたため綺麗に残っていたのである。バンダイの「コンピュータ・カー」エポック社の「サッカーゲーム」「スーパーピンボール」メーカーがちょっとわからないけど「光線銃SPのライフルとルーレット」など。「コンピュータ・カー」というのは車体の下に細長いカードを差し込むと、そのカードの切り込みによって車の動きを制御できるというもので、今見るとその仕掛けは実に単純。どこにもコンピュータなんか使われておらずなかなか微笑ましい。明石魚の棚の古びた玩具店で古いおもちゃを漁る編集者がいたりするので、今度仕事場に来たとき見せびらかそうと思う。
 先日の引っ越しのあともよだれはそのまま廃墟のような家に取り残されており、一日何度か面倒を見にいってやるという状態だったのだが本日ついに仮住まいへと移動した。これまでは人も通らぬ山奥の静まり返った囲いの中でのんびり暮らしていたのに、突然鎖に繋がれ動くたびにじゃらじゃらと音がするため怖くてまったく身動きできなくなり、しかも車は通るわあちこちで犬は鳴くわで雨が降っているにもかかわらず小屋に入ることさえできず壁に体を押しつけて硬直し耳と目だけをせわしなく動かしつづける。餌も食べないので数分で死ぬかと思われたが、しばらくしてようすを見にいくとちゃんと餌を食べたのち小屋に入って自分の尻を舐めていた。かなり慣れたようだが、それでも体をぶるぶるっと震わせると鎖がじゃらっと鳴るのにいちいち驚愕し、がくっと跳び上がって逃げようとする。それを何度もやる。どないかならんか。

『スター・ウォーズ エピソード1』に誘われて悩む 6/25/99

 先先行オールナイトが明日土曜日にあるという。ロードショウが始まってから、平日の空いた映画館でのんびり観るつもりだったのでまったく気にしていなかったのだが、いっしょに行きませんかと言われるとにわかに観たくなって観なければ死ぬような気がしてきた。電話をくれた田中啓文氏は「あべので観るつもり」だと言う。それはちょっと遠いと言うと「そうですな無理ですな。ほなぼくは観てきますのであとで内容はそっくり教えたげますわ」鬼畜の行いとはこのことである。
 なんとか神戸あたりで観られないかとあれこれ策を練るが引っ越しの続きが驚いたことにまだ残っていて余裕がなく、誰かいっしょに行く友人でもいれば勢いもつくかと思い何人かに電話をしたところがみんなそこまでする気はないとにべもない。十年前ならみんな鼻息も荒く必死になって観にいっただろうに三十を越えていい歳になると人は皆落ち着いてしまうのだなあ。なにおまえもはよ落ち着けほっとけ。

『偏執の芳香 アロマパラノイド』 6/24/99

 警告あります。
 『偏執の芳香 アロマパラノイド』(牧野修/アスペクト)読了。毒鬼です。魂匂いします。このような気持ち悪さが描かれた小説他になかったのと魂で思います。不安が読ませられますので知りました。読んでいるうち毒想念に襲われるので怖いからやめてください。電波系の人の読むのは大変なことになります。ささくれて頭くじられます。見てましたから本当です。本から匂いする気持ちしましたかフレッシュ宇宙見ましたか。魂大変です。やめてください。

引っ越しとは関係なく飲みにいく 6/23/99

 田中啓文氏と三宮で飲む。ひたすら喋る。どのようにして帰ったのか覚えていない。

引っ越し後の疲れで寝込む 6/22/99

 いや、まあちょっとゆっくり寝たというだけなのだが。

引っ越し後の整理で疲れる 6/21/99

 まだあった。

引っ越しの後片付けで疲れる 6/20/99

 まだやることがあった。

引っ越しで疲れる 6/19/99

 二度とやりたくない。

引っ越しの梱包作業で疲れる 6/18/99

 引っ越し屋が来て荷物の梱包をしてくれるはずが、三十四年も住んでいると溜まった物の数は尋常ではなくしかもうちの父親が家中のあらゆる空間に棚を作っておりさらにうちの母親というのがなんでもかんでもとっておく人なので狭い家の中には通常の家庭七十五軒分のがらくたが蓄積されてこれはもう民家というより倉庫であり作業はまるではかどらない。手当たり次第段ボールに詰めていくが今度は段ボールの置く場所がなくなってきてあとはもう運びながら詰めるしかあるまいということで志半ばにて断念する。
 
引っ越し準備で疲れる 6/17/99

 引っ越しの準備で疲れた。
 
新しいランニングシューズ 6/16/99

 ずっと使っていたナイキのエア・マックス・テイルウィンドというやつの底がずいぶんと減ってしまったので「靴のヒラキ」へ行った。ナイキのコーナーを見るがいいのがなく、俺が来ることぐらいわかっとるやろなんでないねんずらっと置いとかんかどういうことやこれはとぶつぶつ言いつつ帰ろうとしたら特売コーナーにリーボックがあった。ぼくはナイキというメーカーに信仰心に近いものを抱いているので他のメーカーのランニングシューズなどまるで眼中になかったのだがそこにあったリーボックはちょっと変わっていた。甲の部分のボタンを押すと靴の内部に空気が入って足をホールドする仕掛けになっているのである。履いてみると紐をあまり締め付けなくても足全体が心地よく包まれてなかなかよさそう。しかし履き心地よりもポンプで空気を入れるというシステムそのものにめちゃくちゃ惹かれた。ああなんか未来的やんかかっこええやんかとどきどきする。難点は色が蛍光黄緑なので底が減ったあと街履きにおろすのはちょっと難しく不経済なことであるなあと逡巡していたところ値段を見ると5800円。ほうほう安いではないか。エアマックスは下手すると20000円くらいするからなあどうしたもんかなあとやはり迷っていたのだが決め手となったのは希望小売価格19800円。約七割引か七割引いうたら七割も安いんかそらすごいがなと買ってしまった。
 さっそく履いて走ってみるとおろしたてなのにまったくどこも痛くなく実に快適。あまりに快適なので普段走る距離よりも数倍長く走ってもまったく疲れない。実はこの文章も走りながら書いておりすでに走りはじめてからノンストップで1000キロを超えたがまだまだ行けそうである。いやあいい買い物をした。

たまごっち 6/15/99

 先日友人が遊びにきて「モスラのたまごっち」なるものを見せるので、今の時期たまごっちみたいなもん持っとる人間はあんまりおらんやろなあなどと笑っていたらそのまま置き忘れて帰ってしまい、ああ忘れていったなと軽く考えていたところがこれが非常にやっかいな代物だった。
 翌日朝早くからいきなりたまごっちに起こされた。ぴょりぴょりぴょーなどとなにが起こったのかと思ったが、あれこれボタンを操作していると「腹が減っている」らしいことが判明し、なんとか餌の与え方もわかってことなきを得る。うんこを片づけたりもしてやらねばならずそれ以来手が放せなくなってしまった。ブームのときはまったくなんの興味もなかったし、いったいどういうものなのかもはっきりとは知らなかったのだが、実際育ててみるとおもしろいとか楽しいとか可愛いとかとは関係なく気になってしかたがない。
 犬の散歩の途中で「ごきげん」が悪くなったので遊んでやっていると、あっちこっちに鼻を突っ込んでいたアホ犬よだれはなにを思ったかたまごっちめがけて駆け寄ってくると、わんと一声いやな鳴き方をしたのち、けっとでも言いたげに鼻を鳴らして土を蹴り出した。えらく怒っていたようだがあれは嫉妬かな。

「猿駅」 6/14/99

 『異形コレクション11「トロピカル」』(廣済堂文庫)が送られてきた。ぼくの「猿駅」という短編が載っている。実は「トロピカル」には別のを書いたのだが、それは次の「ゴッド」に載ることとなり、ずっと以前に書いた「猿駅」が急遽「トロピカル」に入った。去年「ボツじゃボツじゃ」と騒いでいたのがこれである。イラストは空山基氏。以前「水妖」のときにも書いたがぼくはこの人の絵、大変好きなので嬉しい。
 さっそくぼくのを読んだ父親が「おまえはほんまはうちの家系の人間とちがうんやないか」と眉間に皺を寄せ「きちがいやと思われるから親戚にはこの本のことは言うな」と厳命を下してから母親には「読まん方がええ」と言っていた。母親は素直なので「ほな読まんとこ」と目を背けていた。「ゴッド」に入る予定のやつもこうこうこういう話でけっこうえぐいよと言うと両親は「おまえだいじょうぶなんか」と真剣に心配しているようすだった。変なことで親に心配をかけてしまったことである。

『ムトゥ・踊るマハラジャ』 6/13/99

 ビデオで『ムトゥ・踊るマハラジャ』を観る。それ以来しばらくはなにをしていても「インドの歌」が頭の奥で鳴り響き、ふと気づけば「ばらかんばらかりよっさんぎー」などと意味不明の言葉で歌を口ずさんでいるのである。おそるべしインド。

“真言アルバム返し” 6/12/99

 6/5の日記で大学のアルバムで冬樹蛉氏の写真を見つけて笑ったと書いたら、今度は冬樹さんが“真言アルバム返し”をかけて逆襲してきた。つまり向こうも同じアルバムを所有しているわけで、そこにぼくの顔を見つけて笑おうというのである。悪趣味きわまりない。人間としてどうかと思う。
 冬樹氏はアルバムに今とまったく違う「一週間くらい下痢をしたあとの時任三郎のような、凛々しい青年」であるところのぼくの顔を発見し驚いていらっしゃるが、さすが恐ろしいまでの洞察力と言えよう。ここまでばれてはしかたあるまいここに真実を公表するが実はぼくはかつて時任三郎に似ていたのではない時任三郎その人だったのである。なにそんな馬鹿なことがあるわけないと言うか。いいやある。あった。詳しい話を聞けば誰でも納得するはずである。しかし詳しい話は書けないのだ。いやあまいったまいった倉田雪乃て誰や。
 
バナー広告 6/11/99

 無料カウンターサービスを変えたせいか、最近このホームページにバナー広告を載せませんかというようなメールがちょくちょく送られてくる。登録すると、そのバナーを見にきた人が一回クリックするごとに10円あげますよというのである。ぼくのこのページへのアクセスは最近では一日平均230程度らしいので、これが多いのか少ないのかはわからないが一人一回ずつクリックすれば一日少なくとも2000円、一月60000円にもなるではないか。自転車買えるなあクーラー買えるなあギネスビールも買えるなあと思い、そのバナーなるものをさっそく見にいったところサンプルとして100種類ほどもならんだそれらバナーはどれもたいてい女子高生とかOLとかが尻を半分出したような写真で、見出し文字には「女子高生の制服を犯す!」とか「教室で制服を脱がして!」とか「制服・ブルマー・スクール水着」とか「監禁・奴隷・羞恥」とか「OLの顔面に!」とか「羊の尻に!」とか「バッタの髭に!」とか「キリンと野生動物保護区域で!」とかそんなのばっかりである。ぼくの場合素っ裸で脚を拡げて笑っているおねえちゃんよりも、制服からすらりと脚が出ている女子高生の写真の方がずっとぞくぞくするので、それらのバナーを見るのもけっこう楽しいのだが、ここからわざわざ女子高生のパンツを眺めにいく人もめったにおるまい。一日に一回か二回、下手すると一度もクリックされない日も多いだろうと考え月六万円の夢は消えた。しかしあのようなバナー広告をこつこつと制作している人もいるのだなあと思うと、その作業を想像するのはなかなか楽しい。よっしゃ次は「ブルマー!」ちうところを赤青反転でちかちかさせるのはどないでっしゃろ、みたいな。

昔からよう言いまんがなの答え 6/10/99

 先日の「昔からよう言いまんがなシリーズ田中哲弥編」の答えがわからないので教えてくれというメールを何通かいただいた。「気になってしかたがない」とおっしゃる方もいる。気にするほどのものではないと思うのだが、ある人などは「ひとつの答えを思いついたものの、もっと深遠にして崇高な、あっと驚くような答えが隠されているのではないかとそれが気になって夜も寝られない」とのことである。そうそう。実はあれにはものすごい意味が隠されているのである。三国志あたりの連想でなんじゃこれは、苦しい駄洒落に過ぎないと鼻で笑ったあなたは甘い。驚けあれにはなんと五つの解釈が隠されているのだ。さあみんなもっと悩むがよい。
 
明石で飲む 6/9/99

 いや一応仕事の話だったのだが明石でビールを飲んだ。新しく担当になった編集者がわざわざ明石まで来てくれたのである。居酒屋で飲んでそれから前に行ったアイルランド人の店へ行き、夜中までずっとスノーボードの話をしていた。この編集者は実はスノーボード関係者なら知る人ぞ知る大変な人なのである。今年は滑りにいけなかったとぼくが言うと、今でも富士山なら滑れるから行こうか下手すると死ぬけど、とか、一年間アラスカやニュージーランドなど雪を求めて渡り歩き世界中の山を滑りまくってスノーボード小説を書くというのはどうだろうきっと楽しいよ(あたりまえや)みたいな話。
 スノーボードを題材にした話は、もしかすると書けるかもしれないなとちょっと思う。取材でニュージーランドとか行かせてもらえないかなあ。

過去の恥 6/8/99

 引っ越しの準備でごそごそやっていると高校の頃書いた小説の断片や、手紙や、写真や、ラブレターの下書きノートなど二度と見たくも思い出したくもないものがぞろぞろ出てきてどきどきする。そうそうラブレターの下書きノート。大量に書いていたためそのようなノートを作っていたのである。いちいちうわっと叫んで捨てるのだが、やはりちらりとは読んでしまったりもする。下書きノートは実際、ちょっと可愛いなと思っただけの女の子にもいちいち熱烈な手紙を書いていた時期があった(それが一番成功するような気がしていた)ので、いちいちものすごいことが書いてある。で、相手の名前を見ても顔が思い出せなかったりするのだ。この手紙、たぶん出したんだろうなあと思うと、相手の女性が今でもそれを捨てずに持っているような執念深い人でないことを願うばかりである。
 しかしあの作業はかなり苦心して言葉を選ぶ必要があったため、ある種の文章修行になったのではないかとも思う。作家を目指す若い人たちに、文章を磨くには出会った異性を片っ端から口説き落とすつもりでラブレターを書きまくることをおすすめするがいやかそうか。

ホーメイ 6/7/99

 ホーメイがやりたいなあと思い日々車を運転しながらぎょいいいええいーと唸っていたらそれらしい音が出るようになった。なかなか本格的なぴーひょろーという音は出ないもののなんとなく変な音は聞こえる。もっと練習するとぴーひょろーと鳴るようになるのだろうか。悪魔の怒鳴り声みたいながぎょげーというような低いのはどうやれば出るのだろうかなあ。がぎょげーと鳴りたいなあ。
 そこで昔からよう言いまんがなシリーズ田中哲弥編。
 ホーメイを利用してある人物を騙すことになった。さてその標的はピアニストか、画家か、それとも書家か。
 答え・書家。昔からよう言いまんがな。書家釣ろうホーメイて。

久しぶりに遠乗り 6/6/99

 昼前起きたらめちゃくちゃに天気がよかったので、ふと思いついて自転車の遠乗りに出かける。ぼくが自転車で遊ぶ一番の方法は、とにかく田舎臭い道を見つけてどんどん入っていくというただそれだけのことなのだが、これがけっこうおもしろい。たまには農家の庭に出てしまったりもするが、やみくもに走って桜が見事な広場や渋い寺院などを見つけたときというのは非常に得をした気分になる。難点はもう一度行こうと思っても二度と行けないことであるが、ふたたび巡り会えたときなどパズルを解いた瞬間のような開放感がある。ああ方向音痴でよかった、と心の底から思う瞬間であるはずなかろう嘘じゃうそじゃそんなもん誰がうれしい。
 今日は川沿いの一本道を見つけて延々北へ走ったところ神戸農業公園という場所に出た。農業公園という泥臭い響きとは裏腹にここはワイン城というものがあったりしてなかなかに「おしゃれなレジャースポット」なのだそうだ。日曜ということもあって道路は車でぎっしり。そこから先は長い長い下り坂になっており、渋滞に苦しむ家族連れの横をいっきに走り抜けていくのは実に気持ちのよいものであった。はっはっはざまあみろと下りきったはいいが、そこから折り返して帰らねばならぬことをすっかり忘れておった。しかもそれまで気持ちよかった風が向きを変えたとたん向かい風となる。地獄のような登りを登り切り、風を罵りつつへとへとになって帰宅する。でもまあおもしろかった。
 
大学時代のアルバム 6/5/99

 実家が建て直しをするらしく引っ越しの準備やらなにやらでばたばたしている。荷物をまとめるように言われ、大量の本やがらくたを段ボールに詰めていたところ大学の卒業アルバムが出てきた。このようなものが存在したことすら忘れていたので驚いた。買わなかったとばかり思いこんでいたのだが、そういえば一万円以上もするしあんなもんいらんわなあと言っていたら母親がどういうわけかものすごく欲しがり、私が欲しいからなにがなんでも買えと言うので買ったのであった。ばかでかい重いアルバムである。中にはゼミのメンバーで撮った写真や個人の写真がずらずらと並んでいる。ああそうそうこんなんやったなと思うだけでさほどおもしろくはなかったが、ふと思いついておおそうやあの人もここの出やと言うてたなあ歳もおんなじやからおるかなあ本名はたしか、と思いつつ探してみたらあったあった。今とまったくおんなじ顔が写っていたので失礼ながら爆笑してしまった。この頃からあの地の底より響くような恐ろしげな声でSFを語り蛙を愛していらっしゃったのかなあとしみじみしてしまったことである。この写真を見つけただけでもこのようなアルバムを買ったかいがあったというものだ。そう思いませんか冬樹さん。

やたらと腹が減る 6/4/99

 どういうわけか食べても食べても腹が減る。このところ一日五食ほど食べているが、食後三十分も経つとなんとなく腹が減ってくるのである。それだけ食べれば太りそうなものだが体重はむしろ減っていてわけがわからない。食べたら食べただけ排泄するだろうから当然大便の量も増えるはずなのだが、これまた毎日少量しか出ない。なにか大がかりな陰謀に巻き込まれているのではあるまいか。心当たりはないこともない。病気でがりがりに痩せていたアホ犬よだれが元気になったとたん常識を疑うほどいじましくなってがつがつ食い、すさまじい勢いで太っているのである。これはおかしい。いくら餌を欲しがっても一日に与える量は決まっているので、あれほど太るはずがないのである。食べても食べても腹が減ってちっとも太らないぼくの状況と、さほど食っているわけでもないのにどんどん太るアホ犬とが、まったく無関係とは思えないではないか。どのような方法を用いて人の食ったものを途中で盗んでいるのか、問いただそうとしてもアホ犬はただギャンギャン鳴くだけで要領を得ない。たかが犬それもずば抜けてアホなこの駄犬にそんな大それたことはやはり無理かとも思ったのだがしかし目を見るとあわてて目をそらすのはあれは後ろめたいからに違いなく、あいつが陰謀の一端を担っていることはまずまちがいあるまいどうしてくれようかなんだと頭おかしい誰がじゃ。
 
ビデオで映画 6/3/99

 『ジャッカルの日』『ジャッカル』『コン・エアー』『ザ・エージェント』『陰謀のセオリー』とたてつづけに観た。『ジャッカル』と『ジャッカルの日』は、次にとりかかる長編の参考にと思って観たのだが同じ原作(だと思うのだが)を使っても『ジャッカル』の方は不細工な話になってしまっていて呆れる。終始なんでやねんななんでそないなんねんどこ行くねん誰やねんそれこいつどこから来たんやなんでジャッカル途中からアホやねんとつっこみまくり。そういう意味ではおもしろかった。
 他はだいたいおもしろかったのだが一気に観るとふと思い出すときそれぞれの話が入り混じりタクシーを運転していたメル・ギブソンが拉致されて拷問にかけられパトリック・スチュワートの鼻に噛みつきながらもジャッカルの名前を漏らしてしまいそのせいでニコラス・ケイジが裏切り者だとばれブルース・ウィリスに港で撃たれそこから逃げ出したリチャード・ギアがシドニー・ポワチエと別れると「君の瞳に恋してる」が流れてオープンカーで走るエドワード・フォックスと並んでジュリア・ロバーツが馬に乗って走りそれを見てトム・クルーズはシャワー・ルームで絶叫するのである。

雑用すべて終了 6/2/99

 細々した雑用がとりあえずすべて終了する。短編の著者校もちょうど今日終わり、なんだか一仕事やり終えた気分になったのでビールを飲んで寝る。

生活リズムがめちゃくちゃ 6/1/99

 沢田研二三昧ののち倒れ込むようにして眠ってしまい、たぶんそれが夜中の十二時頃だったと思うのだが今度は朝というか真夜中三時過ぎにばっちり目が醒めた。ビールのせいで多少体はだるかったのだが、ちょっとした雑用が残っているのを片づけてしまおうとシャワーを浴び、やたらと空腹だったのでラーメンを食べ、なぜかビールも飲み、一時間ほどキーボードを叩いているとそのままいつのまにか眠っていた。いつコンピューターの電源を落としたのかどのようにしてベッドまで行ったのかは覚えていない。仕事だけはばっちり片づいているかとというと全然そんなことはなくほとんど進んでいなかった。なんでやろ。次に目が醒めたのは朝九時頃。おおこのまま起きてしまえば今日は早く眠れるのではないかあこがれの早寝早起きにシフトできるのではないかと服も着替えて本格的に起き、やはり猛烈に空腹だったので今度は焼きそばを食べ、ここでビールを飲んだら人間おしまいやと思ってそれは我慢し十時過ぎ、果敢にも仕事を開始する。慣れない時間に起きているせいか全身がだるく、ちょっと休憩と思ってテレビをつけたところそのままソファで眠り込んでしまう。起きると二時過ぎ。テレビでは冗談のような化け物じみた顔のおばばを、みんなでよってたかってボロカスに言っていて、気持ちはわかるけどそんなどうでもええこと「オウム問題に詳しいジャーナリスト」が眉間に皺寄せて言わんでも、などと大声でつっこんでいると三時をまわってしまう。やはりめちゃくちゃ腹が減ってきたので冷凍していたごはんで焼きめしを作って食べ、どんより体がだるいのでぶらぶらと散歩がてら本屋まで歩いていく。帰ってきて夕食。ビールも飲む。寝てしまう。さっき目が醒めて今これを書いているのだが十一時である。仕事が全然片づかず、しかも猛烈に腹が減っていて眠いのだがどうしたものか。


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